1.コンビニスイーツって高いけど美味いよね
おっす! オラの名前は姫野 葉月!
めえにイセケェテンセェっちゅうモンで別の世界へと渡った一般民族地球人の女の子だぁ!!
⋯⋯っと、まぁ冗談はここら辺にしておいて。
私は、転生した異世界で細々と生活してる元女子高生です。
この世界に転生してからはや1年。前世では今頃、卒業式の準備が始まっているかもね。
正直なところ、前世での自分の人生に対して未練のようなものは無かったりする。
両親が恋しかったり、友達とスイーツ巡りしたくなったり、遊園地なんかにも行きたくなるのはあるけれど⋯⋯
まぁそうなったら帰ればいい。だってやろうと思えばやれるもん、前世に戻るの。
知人と直接合うのは難しいけれど、様子を見に行く事くらいは出来るからね。
チート能力⋯⋯と呼べるかは分からないけど、私には「世界を行き来する力」がある。
別に大層な事象を起こすワケじゃないよ? 手を無空間にぺいって出したら、ゲートがぶわってが開くだけで⋯⋯
まぁそんな事はどうでもいいでしょう。
コホン。
さて。今日も今日とて、私は馴染みのコンビニエンスストアに来ている。
今の季節は秋。旬というだけあって、マロン系のスイーツが数多く並んでいるね。
ふむふむ? “旬の栗を使用した”、“高級栗が丸ごと一粒入った”、“SNSで話題の”⋯⋯。
ううむ、やりよる。どの商品も興味をそそられるキャッチコピーだわさね。
うひょっ、モンブランもあるじゃなーい! “2種類のマロンクリームとさっくりタルト”ぉ? よし買ったあ!!
「っとおござしたー、またおこしくだしゃせー」
「むふふん。たいりょーたいりょー」
会計を済ませ、足早に店を出る。
なんやかんやで沢山買ったねえ。カフェラテx3も購入済みだし、自宅に戻るとしますか。
さてさて。ぺいっとして⋯⋯ぶわっとな。
ゲートの先は私の自宅。こう見えて、こっちの世界での私は持ち家を所持できるだけの財力があるのだ。
辺境の村ではあるけれど、そこで「お嬢様」なんて呼ばれる程度には、ね。
「おっ! おかえりハヅキー!!」
「来たわね。今回の収穫は何かしら?」
で、この2人はお嬢様であるワタクシを使い走りにする乞食達でしてよ。
⋯⋯なんてのは嘘だけど、異世界の食文化に興味があるにせよ礼を言わないコにはスイーツはあげません!
というか、貴女達いつからウチにいたの? そのグレーのパーカーとデニムのショーパン⋯⋯それと白のロングシャツと黒のボトムスって全部私のだよね??
勝手に人んちのタンスを物色しないでくれないかなあ!!?
「これってなんてスイーツ? 色がヘンじゃない?」
ガサガサとレジ袋を漁るのは(人様のパーカーを勝手に着た)狼耳の少女フィーナ。
彼女は「獣人」と呼ばれる種族で、影狼族の両親を持つ狼少女だ。
といっても、見た目は狼耳とモフモフの尻尾が特徴であること以外はぼぼ人間って感じなんだけどね。
外側が白色で内側が淡い紺色の長髪⋯⋯インナーカラーってやつかな。それを三つ編みのツインポニーにしている。
満月みたいな金色の瞳と、幼げのある顔、口元からたまに覗く鋭い犬歯──。チャームポイントが多くて羨ましいコだ。
「こっちはコーヒーかしら。こっちの世界だと合計でいくらくらいの金額なの?」
手早くテーブルに商品を並べるのは(人様のロングシャツを勝手に着た)冒険者のフローラさん。
冒険者っていうのは⋯⋯まぁ分かるよね。最近、向こうではファンタジー系の作品が流行っているっぽいし。
フローラさんはかなりの実力者で、この前も「災厄の黒竜」とかいう物騒な肩書きの魔物を倒したって話だ。
私個人としては、実力うんぬんよりも本人の美貌に世間は注目すべきだと思うけどねぇ。
赤と琥珀が混じった髪はまるで烈火の様で、それを束ねずに腰の下まで伸ばしているのだから存分に綺麗さが伝わる。
顔も凛としていてオトナな雰囲気だし、背丈も一般的な男性より少し高いくらいかな?
しかもそれでいてボンのキュのボン。私が男だったのなら、もうウッヒョーだよウッヒョー。
そのルビーみたいな瞳で見つめられながら「愛してる」とか言われちゃったら、男でも乙女になっちゃうね。
私なんかなー。黒髪ロングの黒い目で、まぁ顔は整ってるってちょっぴり自信があったりするけどさー。
普段着は上下スウェットのダサ女⋯⋯じゃなくて気怠げファッションだし。
フィーナ程のチャームポイントも無いし、フローラさん程のないすぼでぇでも無いしなあ。お嬢様、嫉妬しちゃうわ。
「まったくもう、私が汗水垂らしたお金で買ってきたんだからね。2人とも感謝するように」
「「ははーっ、ハヅキお嬢さまーっ」」
「お嬢様はおやめっ!!」
やれやれ。まぁ友達とスイーツ食べれるなら頑張ってバイトした甲斐があるってものだよ。
こっちではお金持ちだけど、向こうでは短期バイトで日銭を稼いでいるからなぁ。
なんてったって前世での私は死人だからね。一箇所に長く留まる訳にはいかない。
そもそも生活自体はこっちですればいい訳だから、向こうでお金を稼ぐ理由というのも少ないし。
なんなら、向こうで強盗とかして速攻でこっちに戻ってくれば完全犯罪なんだけどねー。
まぁそれは流石に私の善性が許さないから、マジメにお金を稼いではいるけど。
「ねぇハヅキ、早く食べよーよ!!」
「楽しみね。私、このグルグルしているやつが気になるわ」
「分かったって。それじゃあ、異世界スイーツお披露目会スタート!」
はい、せーのっ、
「「「いただきまーーす!!」」」
3人でテーブルを囲い、声を揃えてスイーツと向き合う。
まぁ私にとって他愛のない日常なんだけどさ。結構 気に入ってる世界だったりするから、時間があればたまに見にきてほしいな。
姫野 葉月と愉快な仲間たちがお送りする物語の始まり始まり〜
なんちゃって。
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