消えた通話記録
俺の友人・田村が体験した話だ。
大学時代、田村は一人暮らしをしていて、夜になるとよく深夜までスマホで友人と通話していた。
ある晩、通話中にふと異変に気づいた。
相手の声に、もう一人の声が混じっているのだ。
小さな女の声で、「寒い」「暗い」と繰り返している。
相手は気づいておらず、「何?電波悪いのか?」と笑っていたが、田村の耳には確かに聞こえた。
次の日、通話アプリの履歴を確認した田村は血の気が引いた。
友人との通話ログとは別に、同じ時間に「もう一件」通話履歴が残っていたのだ。
番号は表示されず、通話時間は“0:00:00”。
アプリを再起動すると、その履歴は跡形もなく消えていた。
怖くなった田村は、その話をサークル仲間にした。
すると一人が「それ、俺も経験ある」と言い出した。
違う日に、違う相手と通話しているとき、同じように小さな女の声が混じったのだという。
しかも、不思議なことにその“声”を聞いた数日後、必ず同じ現象が起こるらしい。
「通話中に、突然アプリがフリーズして、画面に“追加の参加者がいます”って表示されるんだ」
実際、田村も数日後に体験した。
深夜、友人とゲームをしながら通話していたとき、不意に画面が固まった。
そして表示されたのは――
《現在の通話参加者:あなた / 友人 / 不明》
すぐにアプリを落とそうとしたが、ボタンが反応しない。
その瞬間、イヤホンの奥で、耳元すぐに囁く声がした。
「見つけた」
田村は携帯を床に投げ、電源を切った。
その後、田村は二度と深夜の通話をしなくなった。
だが不思議なことに、俺のスマホの履歴にも一度だけ残っていたのだ。
田村と通話していないはずの時間に、同じ“通話時間0秒・番号不明”の履歴が。
気味が悪くなって履歴をスクショしようとしたが、その瞬間に消えた。
……あれは何だったのか、今も分からない。
ただ一つだけ言えるのは、もしまた通話中に“もう一人”が混じったら、即座に通話を切るべきだということだ。
なぜなら、その声を最後まで聞いてしまった人間がどうなるのか――誰も、知らないから。




