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空き家の灯り

俺が大学2年の頃の話だ。

深夜のバイト帰り、住宅街を抜けて帰るのがいつもの道だった。夜中2時を回るとほとんど真っ暗で、人影なんてまずない。

その日も自転車を押して歩いていると、細い路地の突き当たりに一軒の家が見えた。

そこだけ二階の窓に明かりがついていて、人影がゆらゆら動いていたんだ。

あまりに普通に見えたから、特に気にせず通り過ぎた。


「夜更かしする家もあるんだな」くらいに思って。

ところが数日後、バイト先の先輩に何気なく「帰り道に一軒だけ夜中も電気がついてる家があるんすよ」と話したら、先輩が急に黙り込んだ。

「……どの辺?」と聞かれ、場所を説明すると、顔をしかめてこう言った。

「あそこ、十年以上誰も住んでないはずだぞ」

背筋が冷たくなった。

「いや、でも普通に灯りが点いてましたよ、人影も……」

「電気止まってるはずだ。事件があってからずっと空き家で、取り壊すとかいう話も出てたんだ」

その夜は気味が悪くて、別の道を遠回りして帰った。


でも人間って、怖いものほど確かめたくなるんだよな。

数日後、どうしても気になって、またその路地に行ってみた。

家は真っ暗で、窓はすべてカーテンが閉まっていた。

「やっぱり先輩の言う通り、誰も住んでないんだ」と思った瞬間――二階の窓ガラスに、自分の影と重なるように、奥で“もう一つの影”が横切った。

慌てて目を逸らしたけど、確かに見たんだ。人の肩と頭のような黒い影が、カーテンの裏を歩いていった。

心臓がバクバクして、そのまま逃げるように帰った。


それからその道は避けて通るようにして、わざわざ遠回りするようになった。

でもある夜、どうしても終電を逃してしまい、仕方なく例の道を歩いた。

真っ暗な家の前に来た時、俺は絶対に見ないように下を向いて通り過ぎようとした。

……なのに、視線が勝手に吸い寄せられる。

二階の窓。

やっぱりそこには、カーテンの隙間からこちらを覗く“誰か”がいた。

顔は見えなかった。ただ、黒い影が確かに立っていた。

電気の通っていないはずの家の、真っ暗な二階の窓で。


後で調べてみると、その家では過去に一家心中未遂や不審死の噂があったらしい。真偽は分からない。

でも俺があの夜に見た灯りと人影は、確かに存在していた。

いまもその家は残っている。

昼間に見るとただの古びた空き家なのに、夜になるとどうしても目を逸らしたくなる。

もしもあなたが偶然その道を通ることがあったら


――決して、二階の窓を見ない方がいい。


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