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二つ目の影

毎晩、帰宅すると決まって廊下の電気をつける。古い集合住宅で暗いから、足元の影がやけに濃く映る。


ある夜、ふと違和感を覚えた。影が二つあったのだ。俺の影と――その少し後ろに、同じ形をした影が重なっていた。慌てて振り返ったが、当然そこには誰もいない。気のせいだと自分に言い聞かせて、深く考えないようにした。


だが、それから毎晩、影は現れるようになった。最初は俺と同じ動きをしていたが、少しずつ違いが出てきた。俺が右手でカバンを下ろすと、影は左手を動かす。俺が立ち止まると、影は半歩だけ前に出る。


そして気づいてしまった。その“もう一つの影”は、だんだん俺より前に出ようとしている。まるで、入れ替わるタイミングを伺っているかのように。


怖くなって、ある夜は振り返らずにそのまま部屋へ駆け込んだ。だが安心したのも束の間、部屋の照明を点けた瞬間、息が詰まった。


壁に映った影は――ひとつしかなかった。


けれど、俺は確かにもう一度「ただいま」と声を出していた。


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