11/38
向かいの窓
俺のアパートの向かいには、古い団地が建っている。夜になると、決まってひとつの窓に明かりが灯る。そこには若い女が座っていて、じっと外を眺めている
。
最初は「暇なんだな」と思っていた。でも数日後、ふと気づいた。彼女の姿勢も、服装も、表情さえも毎晩まったく同じなのだ。まるで動かない写真のように。
それでも、時々ふっと消えては、数分後にまた同じ姿で現れる。気味が悪くて見ないようにしていたが、ある夜、カーテンを閉めようとした瞬間、確かに俺の方を見て微笑んだ。
翌日、勇気を出して団地の管理人に聞いた。「あの向かいの◯号室に住んでる人って、どんな人ですか?」管理人は不思議そうに首をかしげた。「あそこはもう十年以上、空き部屋だよ。誰も住んでない」
ぞっとした俺は、その夜カーテンを二重に閉めた。でも、深夜になると窓の外からかすかに視線を感じる。怖くなって一気にカーテンを開けた。
そこには、向かいの建物じゃなく
――俺の部屋のベランダに、同じ姿で立っていた。




