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転生失敗?

「うをえっぷっ」


 意味不明な声をあげて林太郎……いや、既に消滅した人格は無きものとして、ダイヤモンド王国の公爵家次期当主であるリンは飛び起きた。全身を汗でびっしょりと濡らし、大きく呼吸を乱して胸を押さえて言う。


「しょ、ショタのナニを足で踏みつける夢って誰得だよ」


 夢見が悪いなんてものじゃない。TSや男の娘は異常性癖だと断言するリンは、6歳児である彼女なら4人は手を広げて眠ることのできるキングサイズベッドから降りると、サイドテーブルのベルを鳴らしてメイドを呼ぶ。


「何の御用でしょうか、お嬢様」

「夢見が悪くて汗で気持ち悪いの。お風呂は要らないから清めと着替えをお願い」

「かしこまりました」


 メイドが音もなく近づきするりとリンのネグリジェを脱がしていく。女児パンツを引き落ろし、濡れタオルで丁寧に寝汗を拭いていく。その気持ちの良い感触にニヨニヨと笑みを浮かべながら、ふと疑問に思う。


(ん~?ペツォッタイト公爵家の長女で次期当主が俺。お母さまは数日前に魔獣の討伐に騎士団を連れて出ていって、お父様は部屋に引きこもって趣味の詩を書く毎日。弟のライトは読書の虫になってるから、俺が昨日外に連れ出して剣の相手をさせたんだよな?……あぁ、泣き出したからズボンを脱がせて踏んだんだった。って、夢の内容まんまじゃねえか!!……あ、夢?リン?林太郎?)


 つらつらと記憶を追いかけながら、手と足を持ち上げメイドの着付けに身を任せていく。それは日常に繰り返された慣れた日常で、半分眠ったままの脳細胞でも問題なく対応できていた。


「ん?」

「何かありましたか?」

「おれ、リン」

「はい。リンお嬢様ですね」


 首を傾げながらのリンの言葉に、メイドも首を傾げながら同意する。


「ライトは?」

「お嬢様が昨日連れ出したので、お部屋に引きこもっておられます」

「……足で踏んだ」

「週に一度はしていますね。まだライト様に勃起は早いですよ。誠に残念ながら」


 ふむ、と考え記憶が間違いないことを納得する。そして同時に林太郎としての記憶も残っており、その二つが微妙な感じで混じりあった状況に気持ちの悪いものを感じつつも、非常に重要な事実にぶち当たる。


(ナニが無い)


 ナニが無くてはハーレムは作れない。妥協に妥協を重ねて同性愛も可能かもしれないが、やはりナニが欲しい。いや、それは置いておいても、男を指定しないと女にされるという罠を想定しておかなかった過去の自分に腹を立てる。


「!?生やす魔法!!」

「一部の王国魔導士たちの研究テーマですね。絶倫魔法と合わせて夢の乙女魔法と言われています」

「ん?何かおかしいな」

「そうですか?少女なら誰でも考えることですが」


 思いつきに同意されたことに違和感を覚えるが、まあ良いと棚に上げる。それはそうとしてダイヤモンド王国という大国の公爵家の次期当主という身分、そしてギフトとして貰った無限魔力のチート。それがあればナニを自分が持つことは可能だろうと思う。そして、姿見に映る自身の姿。まるで某ツンデレ魔導士をがっつり幼くしたような姿は、これはこれで悪くは無いとニヤリと笑う。


(この顔なら成長しても可愛い系になるだろ。お姉さま系を油断させるには悪くはねえんじゃねえか?)


 とりあえず初体験は年上だよな~などと考えつつ、リンはあくまで前向きに未来のハーレム生活を想像する。とにもかくにも、今生は楽しく生きて行くんだと心に決めながら。


「うし、とりあえずライトを励ましておくか」

「くれぐれも、大切なタマタマを潰さないようにお願いしますね」



 □■□



 地球地域の神様領域。

 そこにまだ転生先が決まらず悩んでいる人物が居た。


『こちらはどうじゃ?ホビット族なら成人してもあまり見た目が変わらぬぞ』

「うーん、そのホビットはあまり可愛くないしなあ」


 ただひたすらに自分の欲望を満たせそうな世界を探す女性。それに律儀に付き合う神は、それならばと6934番目の候補を差ししめす。


『地球によく似た環境のここは?整形が盛んで、低身長が美しいと言われておるぞ』

「改造はなあ、人形みたいな顔なら未来世界のアンドロイドで良いし」

『お主の希望ならエルフなのじゃがなあ。幼い系のエルフ世界はもう枠が埋まっておる』

「競争率高い世界はギフトも酷いんでしょ?良くて奴隷スタートとか流石に嫌よ」


 次々とその世界の最高の幼女を確認しながら選んでいく女性。ガチのロリレズという前世では表に出せなかった欲望を全開にして転生先を吟味する。


「235番目のドワーフ美少女で妥協するか。いや、3566番目の世界の戦闘用アンドロイドも捨てがたい……でもそこは男に転生しないと人権無いしなあ。いっそ987番目の世界でホムンクルスの研究をするって言う手も」

『おや?お主の言うところの美幼女ランキングのトップが変わったのう』

「うん?」


 悩む女性に、神がぽつりと言う。


「見せてよ」

『これじゃ。おぉ、転生者じゃのう。元男故にお主の趣向の対象外じゃな』

「ほぅん?」


 その映像には美幼女が居た。

 幼く小さく可愛くて、ピンク色のロングヘアーが輝いていた。それはまさに彼女の大好きな実写映画やアニメ映画のヒロインのようで、一目で気に入ってしまった。


『ほぅ、成長できぬ身体か。また不老不死でも望んでペナルティを食らったな?』

「エターナルロリ!?」

『貞操逆転世界で女子になってどうするんじゃ?あやつはハーレム希望だったはずじゃが』

「貞操逆転!?つまりは野郎どもはふにゃちん!?」

『まあ、良いわい。次の世界の女子は、と』

「いや、ちょっと待って。待ってください」


 次の世界を探し始めた神に、女性は必死の思いで食い下がる。


『ん?いや、中身男じゃぞ?男は要らんと言っておったじゃろ』

「いや、転生者よね?ゴミ屑みたいな前世なんて影も形も無いじゃない」

『そういうもんか?』

「女として生まれて女として育ったんなら女じゃないの。Y染色体なんて、あのロリボディのどこにも無いわよ」

『生やす魔法が研究されておるらしいぞ?まだ成功しておらんようじゃが』

「全力で邪魔するわ。レズにふたなりは邪道よ」


 うふふっと笑う女性に、神は他の世界の情報を消し去って問う。


『ならばこの世界で良いか?』

「この世界じゃないと駄目ね」


 美幼女の写真?画面?を舐め上げながら言う彼女に、神は頷いて最後の転生者の行き先を決定した。少なくともハーレムを希望する林太郎ならばは、近寄ってくる女性は嬉しいだろうと考えて。


『よかろう。新たな世界を楽しむがよい』


 そして第一級危険レズが、ダイヤモンド王国へと放流された。

 被害者は約1名のみが故に、大した危機でも無いのではあるが。

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