スキル選択
『新規転生者さんいらっしゃーい』
何も変わらぬ真っ白な部屋、そこへ軽い女性の声が響き渡る。
「え?もう移動してんの?……って、俺の身体は!?」
『そりゃ魂だけ移動してるんだから当たり前よ。向こうだって地球の神が、君らが混乱しないように用意した仮初の身体だし』
「そういうこと?あぁ、すみません。取り乱して」
『いいわよ~前の子は謝罪と賠償とか言って叫んでたし。そのまま捨てるよって言ったら大人しくなったけど』
前の奴は何やってんのとは思うが、別に怒っては居ないようで林太郎も安堵する。消えるところを拾い上げてもらった立場で、高圧的に出るような者が同じ世界に転生することに不安が無いわけではないが、もう後戻りは出来ないのだと切り替える。
「それで、ギフトを貰えるとのことでしたが……やはり早い者勝ちで?」
『ううん。希望するものから適当に渡してあげるから問題ないわよ』
「やっぱ、何でも自由って言うのは無しですよねえ?」
『うん。一人に与える力の大きさは決まってるからね。例えば、『アイテムボックス』を時間停止付きで希望した子は、あと1つ軽めのギフトしか選べなかったね』
選ぶにはレア度に応じてポイントのような物を消費し、ポイント内で複数手に入れられるのだと林太郎は判断する。そして、こういう場合には抜け道があるのだろうと考えて、素直にそれを口にする。
「例えば、ギフトに制限かけたりとか、そのものがペナルティみたいなギフトを貰うと、貰えるギフトの幅が広くなるとかあります?」
『できるわよ。あ、ちなみに言っておくと、見た目変更もギフトだから。ギフト無しだと概ね向こうと同じ顔になるわよ』
「黒髪黒目が被差別人種とかじゃないですよね?」
『それは無いわね。東の国からの流民?の子孫だって言われるくらいみたい』
そこまで聞いて、さて、と考える。ギフトに制限を入れるくらいならチート構成にしてペナルティギフトを気にしない方向が良いだろう、と。男がモテモテな世界ならハーレムパーティを組めば何の問題も無しだと結論を出す。
『あ、それとこっちの世界だけど……』
「いえ、ネタバレ好きじゃないんで、自分の目で確かめます。そちらの方が人生楽しめますよね?」
『うーん、まあ良いけど。で、希望のギフトは決まった?』
「はい。まずは世界でトップの美形ですね、ショタみたいな見た目でも良いです」
『それだけで凄いペナルティ要るわよ?』
「構いません。あとは無限の魔力ですね。魔法をどれだけ使っても平気な位の……あ、魔法は自分で覚えていくんで問題ありません」
『遠慮しないわねえ?それだけ?』
「最後に不老不死です。まあ、永遠に生きても面倒なんで、あっちの世界の人間が到達した最高齢になった時に、寿命でぽっくり死ぬくらいで」
『潔い位に欲望塗れな希望ね。帝王にでもなるつもり?』
呆れたように言う女神に、林太郎は存在しない首を振ってニヤリと笑う。
「ハーレム作って好き勝手生きるだけですよ。せっかくチートを貰えるのに、王様とか貴族とか面倒なだけだし」
『……まあ、良いわよ。それで大量に必要なペナルティはどうするの?希望が無ければこっちで勝手に決めるけど』
「お願いします。火山の中とか、いきなり詰むような転生をしても、貴女にとって意味は無いでしょうし。最底辺からの成り上がり位はやってみせますよ」
勇者とか魅了とか、強奪やテレポートなども魅力ではあった。だけど、死なない身体と尽きぬ魔力の方があらゆる場面に対応できるだろうと林太郎は考える。顔については良くて困ることは無いし、何より美醜の基準は変わっていないのだ。前の自分の顔にコンプレックスのある林太郎としては、美形については絶対に外せなかった。
『じゃあ、こっちで適当にして転生させるわよ?いい?』
「はい、ありがとうございます。次に死んだときには、また貴女に会えることを期待します」
そして林太郎は転生した。
残る女神は、しばらく考えたのちに、ぽんっと手を叩く。
『そういえば、ちょうどいい娘が居るわね。全部のギフトはプラマイゼロになるように調整しちゃいましょう。代わりに高位貴族の子にしてあげれば良いわよね。魔王国の性奴隷の子に転生させたりしない私って優しいわよね~』
しかして、彼は知らない。
その世界が、貞操逆転で乙女ゲームな世界であることを。
そして、女神の基準でいうハーレムが、林太郎のそれとは真逆であるその事実を。
そして5人の転生者がダイヤモンド王国で産声を上げた。