世界の選択
『おめでとう。君は異世界転生の権利を手に入れた』
永露林太郎。その彼が真っ白な世界で目覚めた時に、その言葉が投げられた。どういう状況か、何故ここに居るのかは記憶が混濁しはっきりしない。しかし、これが良くある神様転生という物であることだけは、やはり彼にも理解できた。
「ええと、ここは?」
『君が考えている通り、ここは神の領域だ。君たちは死に、そして選ばれた』
姿の見えない存在からの、死んだという言葉が林太郎の心に染みわたる。何故死んだかは分からない、しかし聞いても意味の無いことだと割り切って、重要な言葉『君たち』に意識を向ける。
「集団転移?転生?そうなると面倒だな」
『いや、まずは転生する世界を選んでもらう。余程運が良くても5人も同じ世界には移動しないから安心したまえ。そして与えられるギフトについては、その世界の神と相談してもらえばよい』
「元の地球に戻してくれって言ったら、ギフト無しとか?」
『日本へ戻るのならばその通り。紛争地域などに行くなら相応のギフトを与えよう』
「リスクとリターンって訳か。となると、貴方は地球の神って訳だ」
無言の肯定に林太郎は考える。全ての考えが筒抜けであることを考えれば外面を良くしていても仕方ない。しかし、だからと言って横柄にしていいかと言えば、そうではないと考える程度の常識は彼にもあった。
「世界はどうやって選べば良いのでしょうか?」
『どんな世界に行きたいか希望をいいたまえ。その条件に合う世界の神が君を受け入れれば、そちらに転移しよう』
「一方通行……ですよね?」
『当然じゃ。まあ、再び死に、運よく選ばれれば、もう一度選択が出来はするが』
「宝くじを当てるよりも確率低そうですね」
そこまで考えて、どうせ死んだのなら欲望に素直になろうと林太郎は決意する。
「……男がモテモテになる世界がいいですね」
『お主が、じゃなくてか?』
「好みじゃない女性は他の男性にパスしたいですから。自分が最後の男になる世界とかに送られても、楽しい未来は無いでしょうし」
『貞操逆転じゃったか、そういう世界ならいくつもあるが』
「美醜は逆転してないほうが良いですね。あと、ファンタジーでもある程度近世寄りの中世が良いです。魔法とかで大きな町なら上下水道が完備されている位の。モンスターの危機がある世界ならギフトも良いのが貰えますよね?」
『相手の神次第じゃが……あぁ、そう言えば、ちょうどいい世界があるの』
「本当ですか?」
言っては見るものだと林太郎は声をあげる。
『うむ。放置されていた世界の再生に乗りだした若手の神がおっての。そこが4~5人程の転生者が欲しいと言っておる。そこの男どもはちょっと草食系が過ぎておっての。お主のような性欲の強い男ならいい刺激にもなろう』
「バーバリアンみたいな女の世界じゃないですよね?」
『いや、元は美の女神が作った世界故に、お主らの国の価値観から見ても問題はない……ん?もう2人決まっておるな。お主と同類のようじゃ』
選択する世界が早い者勝ちと思って居なかった林太郎は、ここで初めて焦る。ギフトの割り当ても早いもの勝ちであったなら洒落にならないと、慌てて手を上げる。
「そ、その世界で良いです。俺をそこへ転生させて下さい!!」
『いや、なんなら仮押さえしても良いぞ。元はワシの世界の子じゃからの、後悔はさせとうない』
「いえ、貴方のそのお気持ちだけで十分です。私をその世界に送ってくださいっ!!」
焦る林太郎に、抑えようとする声の主。しかし、地のでかけた彼は土下座をして懇願する。
『まあ、そこまで言うなら仕方ない。新たな世界を楽しむがよい』