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完成したコスメの第一号は誰の手に?

カワラヨモギを探すため、アリシアは、まず、フィルのおじいさんに会いに行った。

トムおじいさんから聞けたのは、カワラヨモギは、この辺では珍しい草であること、また、本職の庭師が見れば雑草扱だと言うことだった。

しかし、薬にもなるので、薬師であれば、手元にあるかもしれない、そんな事を言われた。

それを聞き、フィルがポロリとこぼした。

「じーちゃん先生に聞いてみたら良いんじゃねえ?だって、医者は薬を使うだろ?アリは良くじーちゃん先生にみてもらうんだろ?」

何を言うのだ、最近のアリシアは、調子が良いのだ。

毎日、日参してもらってた老医師も、ここ数ヵ月は月に一回しか顔を見ていない。

「今は、月に一回の健康診断だけですわ。」

アリシアが胸をはって答えた。

「アリ、何言ってんだ。毎月、医者にかかるのは、元気じゃないからだぞ。オレなんて、1年に一回もかかるかどうかだぞ。」

フィルが、目をまんまるにしながら、アリシアに言った。

アリシアも驚いた。普通は、年に1回もお医者さんにかからないの!?と。

困ったアリシアは、上目遣いで、ジョナサンを見た。

ジョナサンは、何と言って良いか、胃がキリキリしてきた。

しかし、ウルウルと小動物のように上目遣いでジョナサンを見るアリシアを前に誤魔化す方法を思い付かない。

グギギギギと首をアリシアに向けたジョナサンは、どうすればアリシアが傷つかないように説明できるか、自信はなかったが口を開いた。

「あの、アリ、フィルは、ほら、めちゃくちゃ元気で健康だから、1年に一回、病気になるかならないだけだよ。」

「ジョンも、よく病気になりますの?」

アリシアが澄んだ瞳で、ジョナサンを見つめた。

「うっ、あっと、えっと、僕も、その時々かなぁ・・・」

ジョナサンの返事にアリシアは、シュンとした。

「結局、ジョンも、あまり病気になりませんのね。」

「でも、その、最近のアリは元気だから、先生も念のために見に来てるだけって聞いてるよ。」

ジョナサンは、つまりながら言葉を続けた。

「あの、だからね、その、皆、アリを心配しているだけだよ。」

そう言って、ジョナサンはシュンとしてしまったアリシアの頭を優しくなでた。

アリシアは、フォローにはなっていなかったが、ジョナサンの優しい気遣いをありがく思った。

アリシアは、頭をなでるジョナサンの手に触れ、ジョナサンをとめて、恥ずかしそうに言った。

「ジョン、もう、大丈夫ですわ。」

そんな、アリシアは、虚弱箱入り具合を露呈しつつも、カワラヨモギ探しを続いた。


老医師に、カワラヨモギについて聞いてみたら、膀胱炎とか、肝硬変とか、高血圧とか、胆石とかに効くと、言われた。

入浴剤として使うと、皮膚のかゆみなども抑えてくれるそうな。

カワラヨモギは、化粧水に入れるにむいているなと、改めて思ったが、先生が持っているのは、カワラヨモギを乾燥させた漢方のような薬であった。

アリシアは、一先ず、老医師から、乾燥したカワラヨモギをもらい受けたが、生のカワラヨモギも欲しかったため、聞くだけきいてみた。

「先生、どなたか、カワラヨモギを育てている薬師の方などいらっしゃらないでしょうか?」

ならばと、知り合いの薬師を紹介してもらえた。


老医師の紹介でやって来た老薬師は、生のカワラヨモギの花や茎、葉を大量に持ってきてくれた。

他にも、薬草が欲しい時は、連絡すれば譲ってもらえると言う事であった。

アリシアは、いや、グレタとリタがさっそく、カワラヨモギをグツグツお鍋で煎じてみたり、水蒸気蒸留法でオイルを抽出してみたり、防腐剤の試作を始めた。

カワラヨモギを煎じるならば、乾燥していても、生でもあまり変わらなかったが、煮詰めていくと、生のカワラヨモギの方が、濃度が高そうなドロリとした液体になった。

水蒸気蒸留法で作った、カワラヨモギのエッセンシャルオイルとカワラヨモギウォーターについては、生のカワラヨモギでなければ、完成しなかった。


そうして、色々と作ってみた感じ、カワラヨモギウォーターに、煮詰めたカワラヨモギをほんの少し混ぜたものを、防腐剤にしようと、アリシアは、決めた。

グレタとリタの尽力のおかげで、防腐剤は割りとあっさり出来上がったのだが、そこからがさらに大変であた。

防腐剤はできたが、困ったのは、お米のとぎ汁に混ぜるその配合である。

ヨモギの香りが強く、お米のとぎ汁に入れたら、防腐剤(カワラヨモギ)の香りしかしなくなったのだ。

防腐剤の量を少なくしても、あまり匂いに変化がなかったた。

アリシアも、どうするべきか悩んだのだが、カワラヨモギウォーターなしで、お米のとぎ汁に、直接、少しだけ煮詰めたカワラヨモギを混ぜてみた。

よもぎ蒸しの匂いにから、よもぎ餅くらいに薄まったので、良しとする事にした。

しかし、このまま使っては、濃すぎて、アレルギーをおこすかもしれないと思い、煮沸済みのお水7、化粧水の原液3で、サンプルとして化粧水を作ってみた。

出来上がったサンプルは、原液が薄まったせいか、かすかに、何かの匂いがしたが、元の匂いを知らない人には、何の匂いか分からないほどであった。

逆に、始めての人も使いやすいのでは?と、思ったアリシアは、このまま商品化する事にして治験に進む事にした。

どれくらい日持ちするか、また、効果はどれほどかを確認してもらうため、グレタとリタを含め、美活に感心があるメイドや侍女にビンにつめたサンプルを配った。

彼女達には、モニターとして、化粧水を使ってもらい、匂いや使い心地、使用後の効果について、感想文を提出してもらった。

皆、熱心に使用したせいか、配ってから2週間ほどで、化粧水はなくなったようだ。

幸いな事に、使用者の誰にもアレルギーは起こさなかった。

また、使用した感想を確認すると、グレタと、リタ以外には良好であった。

グレタと、リタ曰く、直接、お米のとぎ汁を浴びた方が効果があるきがすると言う事だった。

『それは、とぎ汁の濃度が濃いからですわ。でも、お風呂で洗い流すならいざしらず、化粧水として使うのに、危険な橋は渡れませんわね。』

安全第一である。アレルギーで、顔が腫れるなんて、アリシアとしては、決して許せない。


ちなみに、カワラヨモギウォーターと、カワラヨモギのエッセンシャルオイルは、アトピーや敏感肌と思われるガサガサお肌のメイドさん数人に、使ってもらった。

カラワヨモギウォーターも煮沸したお水に薄めてビンにつめ、化粧水にした。

そして、エッセンシャルオイルは入浴時に少しの塩を溶かしたお湯に数滴垂らすよう伝えた。

カワラヨモギ組のメイドさんからも、改善の兆しがあると言われ、大変感謝された。


お米のとぎ汁で作った化粧水は、チョウとハンにも公開しようと思うが、カワラヨモギの化粧水は、情報を開示しない。

もちろん、水蒸気蒸留法については、公開する予定だ。

そして、カワラヨモギを使ってエッセンシャルオイルを作るつもりなので、二人が、カワラヨモギのエッセンシャルオイルやカワラヨモギウォーターに気がつけば、利を得られると思う。

それは、二人の実力次第だと思う。


さて、売り出すとなれば、やはり容器は重要だ。

最初、容器のデザインとして、翼の生えたバクの絵を描いてみたアリシアであったが、京子さんから却下された。

仕方がないので、京子さんの記憶を物色させてもらい、小さくて可愛い生き物を見つけた。

「ああ、それはミミちゃんよ。」

京子さんの声が聞こえた。

京子さん曰く、妹さん宅で飼われていたチワワと言う犬なのだそうだ。

翼の生えたミミちゃんを描いたが、それも京子さんに却下された。

ならばと、翼の生えたお家の前でミミちゃんがしどけなく寝ている絵を描いてみたら、これは京子さんからOK がでた。


せっかく、デザイン画はできても、この世界にチワワはいない。いても、相当珍しい。

そんなワケで、最初に納品された容器のデザインは、明らかに、チワワではなかった。

アリシアは、カッと見開いた目で容器を見つめ、すぐに納品をなかったことにしようと、身体強化(全身全霊)で容器を壁に投げつけた。

粉々になた容器と凹んだ壁を見て、アリシアは、額を拭い、フーと息をはいた。

その瞬間、リタは「ヒィッ」と声をあげ、グレタはすかさず、アリシアにお説教を始めた。

「お嬢様、容器を壊しても、問題は解決いたしません。壁まで凹んでおりますのを、ご覧くださいませ」

アリシアは、凹んだ壁と、グレタをかわりばんこに見て、反省した。

「ごめんなさい、グレタ。非は、わたくしにございますわ。」

素直にグレタに謝った。

さすが公爵家である。翌日には、アリシアが凹ました壁は元に戻っていた。


次に作られた容器のデザインは、最初の容器よりも目がいくらか大きいタヌキであった。

容器を見たアリシアは、目をカッと見開き、再び壁に投げつけようとした。

しかし、瞬間、グレタの「ゴホン」と言う咳払いが聞こえたため、容器を壁にぶつけるのを、思い止まった。

ならばと、職人を圧迫面接をする事にした。


やって来た職人の代表は、気の小さい、小動物のような令嬢ときいていたため、適当に公爵令嬢をあしらって、適当に仕事を片付けようと思っていた。

しかし、現れた小さなアリシアは、顔はニコニコしていたが、気の小さな令嬢にはとても見えなかった。

「今日は、お忙しい中、お呼び立てして、申し訳ございませんでしたわ。」

アリシアが礼儀正しく挨拶したので、職人の代表は畏まって挨拶をした。

「お嬢様のご尊顔を拝し恐悦に存じます。」

アリシアは、フンと鼻をならした。何だか、とても子供扱いされている気がしたのだ。

しかし、ここで癇癪は起こせない。

アリシアは、絶対零度の笑顔を貼り付けて口をあけた。

「さっそくだけど、あなた、わたくしが描いたがデザイン画はご覧になられましたの?」

職人の代表はぶるりと身震いをした。

アリシアの笑顔とともに、部屋の温度が下がった気がしたのだ。

「はい。もちろんでございます。」

「そう。でも、わたくしの目がおかしいのでなければ、この容器に描かれた動物は、タヌキに見えますわ。」

「はい。タヌキでございます。」

さらに部屋の温度が下がり、リタが「クシュン」とクシャミをして、寒そうに腕をさすった。

「あなた、わたくしをバカにしておりますの?この絵がタヌキに見えまして?」

デザイン画を持つアリシアの笑顔の向こうの剣幕と、部屋の温度の寒さで、職人の代表は、ブルブルと震えて、今にも泣き出しそうだった。

「あの、でも、その、で、デザイン画を見た時、その、た、タヌキだと思いました。その、タヌキ以外の動物だとは思わず、あ、あの、大変、申し訳ございませんでした。」

「この子は、広くて丸いリンゴのような額が特徴ですの。額の白い線はチャームポイントですわ。お分かりになりまして?」

アリシアはデザイン画を見せながら、ミミの特徴を説明した。

そして、アリシアと目があった、職人の代表は、ブルブルと震え、今にもチビりそうなほど、ビビっていた。

「はい、承知いたしました。寸分違わず、そ、その動物を描きます。」

「では、次の試作品をお待ち今します。」

アリシアは、職人の代表の返事にようやく、満足感した。

アリシアが満足したと同時に部屋の温度も元に戻った。


アリシアが圧迫面接した後、納品された容器は、良くできていた。

ただのビンに入れてあった化粧水を詰め替えてみたら、それだけで高級に見えた。

アリシアが、化粧水をテーブルに置て眺めていると、ピカーと言う稲光がして、ギリシャ風の衣装を着た、絶世の美女が浮かんでいた。

「それは、妾がもらっておいてやろう。はよ、差し出せ」

アリシアは、手を付き出した美女を見上げて呟いた。

「アフロディーテ?」

美女は眉間に皺をよせ、アリシアを睨み付けた。

「アフロディーテとは、誰ぞ。妾は、美の女神ヴィーニアじゃ。とにかく、その化粧水とやらを、はよ、妾によこせ。さすれば、お前に妾の加護をやろう。」

ヴィーニアが言い終わるか、言い終わらないかの間に、アリシアがフラりとフラついた。

グレタが慌てて、アリシアを支えようとしたが、次の瞬間、アリシアは、しっかりと立ち、ヴィーニアを見上げて小さく呟いた。

「神様とは、随分と不躾ね。」

いつもより幾分かアリシアの声のトーンが低く、グレタは驚いてアリシアの顔を見た。

「ハハハ、神を恐れぬとは気に入った。」

ヴィーニアは、楽しそうに笑い、地面に降りてきた。

「グレタ、リタ、お客様がいらっしゃったわ。お茶の準備と、お父様に報告してきて。」

アリシアは、二人に指示を出した。グレタとリタは、慌ただしく部屋を後にした。

一人残されたアリシアは、ヴィーニアにカーテシーをした。

「私は、アリシア=フォン=ギュンターと申します。ヴィーニア様の当家へのご来訪、誠に恐悦至極にございます。」

そう言い終わったアリシアは、顔を上げて、ニヤリと笑った。

「って言うと思った?悪いけど、私はアリシアちゃんと違って、神様に払う敬意は持ち合わせてないの。アポもなくやって来るなんて、本当に良い迷惑だわ。」

そう、アリシアがフラついたタイミングで、京子さんが出てきたのだ。

ヴィーニアは、狐につままれたような顔でアリシア、いや京子さんを見た。

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