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補正するにも、限界はある(1)

今晩も、遅くなってしまいました。

しばらくは、不定期にアップになりそうです。

どこかで、また、午前0時にアップできそうなら、戻そうとおもいます。

読みに来てくださっていた皆様、申し訳ないですが、よろしくお願いいたします。

京子さんとリンクしてから、アリシアの持つ技能はどれも発達した。

元々、京子さんは手先が器用で、お菓子もお料理も上手だ。そして、刺繍も編み物も、何なら和裁で着物も(あつら)える人だった。

そんな、人並み以上に器用な京子さんのお陰で、どれだけ練習しても上達しなかった、刺繍や、編み物のアリシアの腕は、熟練者のような腕前になった。

エリザベートは、ただ

『マークリア様の加護のお陰かしら?』

と思っていたが、実際は、アリシアが失敗しそうになると、京子さんが出てきて、補正をしてくれるのだ。

人並み以上の腕を持つ京子さんが手伝うのだから、当然、これまでの物とは比べられないほどまで、完成度が上がる。

アリシアとしては、京子さんの存在をありがたいと思っていたが、このまま上達せず、一生、京子さんに、おんぶに抱っこだったらどうしようと、思わなくもなかった。


他にも、運動神経も発達した。

それを発見したのは、カールからもぎ取った体育の時間である。

アリシアは、運動音痴であったが、この授業を楽しみにしていた。

なぜなら、講師の騎士はアリシアの推しであった。

騎士の名前は、クレア=マイヤーと言う。

アリシアがクレアと遭遇したのは、アリシアが毎日、日本探しに明け暮れていた頃であった。


その日のアリシアは、ディーンに捕獲される前に庭に出てしまった。

しかも、ずんずん歩いたアリシアは、庭の端まで来てしまい、そのうえ、迷子になってしまった。

当然ながら、迷子になったアリシアは、一人で邸まで帰れない。

歩き疲れて、茂みの影で座り込み、アリシアは、そのまま眠りこけていた。

小さくなって、茂みの影で眠るアリシアは、ちょうど人の死角になり、なかなか見つけてもらえなかった。

そんな、誰にも見つけて貰えず、寝こけていたアリシアを見つけたのがクレアであった。


クレアに、おぶわれて邸に戻ったアリシアは、途中で目が覚めた。

グレタじゃない誰かにおぶわれている事に気づいたアリシアは、全身に力が入った。

「お嬢様、邸に着いたら、起こして差し上げますから、もう少し寝ていて大丈夫ですよ。」

アリシアをおぶった誰かは、グレタより背が高そうだったが、どうやら女性だった。

その女性は、力んでカチカチのアリシアをおぶったまま、グレタの待つ邸の前まで連れてきてくれた。

グレタのスカートの後ろから顔をのぞかせたアリシアは、女性を見上げた。

「あ、あにょ、あの、たすけていただき、ありがとうごじゃい、こざいます。」

アリシアは、カミカミになりながら、助けてくれた女性にお礼を伝えた。

女性は、片膝をつき、アリシアに礼をした。

「いいえ、私、クレア=マイヤーは、お嬢様のお役に立てたこと、とても光栄に思います。」

クレアの凛々しく美しい姿に、アリシアは、目を奪われた。


その夜、普段は、あまり自発的に話さないアリシアが、クレアについて、グレタに色々きくので、グレタはアリシアに提案してみた。

「お嬢様、クレア様は、もうすぐモンスターを狩りにいかれるんです。」

アリシアは、驚いた。

「それは、きしのかたが、おこなうものではないですの?」

「お嬢様、クレア様も騎士でございますから、モンスター狩りに同行されるのですよ。」

アリシアは、グレタの話を聞き、もともと良くない顔色がさらに悪くなった。

「クレアさまが、しんでしまうかもしれませんの?」

「お嬢様、ギュンター公爵家の騎士は、皇室の騎士団に勝るとも劣らないのですよ。だから、クレア様が亡くなることはありません。でも、怪我をされる事はあるかもしれません。だからお嬢様、お守りにタッセルを作りませんか?きっと、クレア様を助けてくれますよ。」

それから、アリシアは、クレアが遠征に行く度に、タッセルを作っている。

だが、残念ながらアリシアは、自分ではタッセルを渡せず、毎回、グレタに渡してもらっていた。


2年以上、なんちゃって推し活を続けているアリシアなので、推しから護身術や乗馬を教えてもらうと思うだけで、やる気がみなぎった。

刺繍の腕が上がったこともあり、アリシアは、張り切ってタオル3枚に、それぞれジョナサン、フィル、アリシアのイニシャルを刺し、1枚だけギュンター公爵家の家紋を刺した。

最初の護身術の訓練の日、運動着に着替えたアリシアは、刺繍を施したタオルを胸に抱きしめ、ジョナサンとフィルと一緒に庭に出た。

二人には、クレアが来るまでの時間を瞑想して過ごしてもらおうと思っていた。

隙間時間の有効活用である。

驚くべき事に、ジョナサンは、胡座を組み姿勢が正せるようになっていた。

前は少し、猫背で、腰がそりぎみであったのが、嘘のようである。

そして、一方のフィルは、相変わらず、姿勢に変化はない。

その上、瞑想を始めて数分で船をこぎはじめた。

ここで、アリシアは、ハリソンを取り出し、フィルの頭をはたいた。

パシーーンと言うハデな音とで、フィルが目を覚ました。

「うわ~~、アリ、何すんだよ。ビックリするだろ!!!」

「寝ていたから、起こしただけですわ。感謝してくださいまし。さぁ、フィル、もう一度ですわ。」

もう一度、瞑想を始めたフィルを、アリシアは、ハリセンを手に、監視をした。


京子さんは、じぶんの息子さん達ならば、何の迷いもなく前世で叩いてきた。

しかし、さすがに他所の息子さんをアリシアが叩くのは、かなり気が引けた。

そこで、京子さんが思い付いたのがハリセン。

叩くと音はでかいが、痛くないし、基本的には、怪我もしない。

瞑想時のフィルの監視に良いのでは?と、取り入れてみたら、すでに活躍してくれている。

瞑想以外の教育の場でも、大活躍する予感しかしない。

クレアが来るまでの時間をジョナサンはしっかり瞑想をしてすごした。

一方のフィルは、眠気と、ハリセンと戦いながら、瞑想の時間を過ごした。

アリシア達の元に、クレアが到着した時には、クレアがフィルの目には、救世主に見えた。


一回目の護身術の時間は、クレアの挨拶と説明から始まった。

「私は、クレア=マイヤーだ。今日から護身術を教えることになっているが、最初は、体力作りから始める。これから、庭を5周走ってもらう。お嬢様は歩いてください。それでは、準備ができた人から走り始めて。」

アリシアは、軽くストレッチと準備運動を始めた。

アリシアが準備運動を始めたのをみて、ジョナサンとフィルも、アリシアに続いてストレッチと準備運動を始めた。

そして、ストレッチと準備運動が終わってから、3人とも走り始めた。

そうして、アリシアは、自分の運動能力も相当改善されている事に気づいた。

改善されたところでアリシアの足は鈍足であるのだが・・・

しかし、鈍足と言えども、今のアリシアは、ジョナサンとフィルに、何周回も遅れることなく、走れていた。

最初は、京子さんが補正をかけてくれていたが、刺繍とは違い、足を動かすだけの単純動作のため、すぐに、京子さんの補正は不要となった。

アリシアは走りながら気づいた、刺繍も、縫い物も、編み物も、上達すれば、京子さんの補助がなくなるのでは?と。

そうと分かれば、京子さんからの免許皆伝を目指し頑張るしかない。

アリシアは、走りながら、握りしめた拳にかたく誓った。


講師としとやってきたクレアは、とても驚いていた。

クレアも、カールの壊滅的な運動神経の話を、騎士団の団員達から聞いていたのだ。

だから、アリシアも運動神経は優れていないと、クレアは勝手に思っていた。

実際、今日のアリシアも、京子さんの補正がなければ、ジョナサンとフィルに数周回遅れで走り、推し(クレア)に鈍足の極みを披露しただろう。

しかし、京子さんがアリシアに補正をかけてくれたため、アリシアは、男の子2人の半周後くらいを頑張って走っていた。

そんな予想外の頑張りを見せたアリシアにクレアは、おそらくこの結果は神様の加護のおかげだろうと納得し、加護とは凄いものだと感心した。

実際は、神様の加護ではなく、京子さんが姿勢や体の使い方を補正したのである。

とは言え、もともとの体力のなさまでは、補正がかからない。

体力のないアリシアは、倒れこむようにゴールをして、立ち上がれないまま、両手両膝を地面についてゼーゼーと、息を整えようとした。


クレアは、立ち上がれないアリシアに近寄り、アリシアの背中をゆっくりとさすってくれた。

クレアに背中をさすってもらい、だんだん、アリシアの息も整ってきた。

ようやく立ち上がったアリシアをクレアは笑顔で褒めた。

「お嬢様、良く頑張りましたね。今日は十分頑張りましたので、後は座って見ててください。」

「あ、ありがとうごじゃ、ございます。」

今日のアリシアも、クレアの前ではカミカミであった。

クレアはアリシアの頭をなでて、ジョナサンとフィルの元へ行ってしまった。

控えていたグレタが、アリシアのイニシャル入りのタオルを渡してくれた。

「お嬢様、良く頑張りましたね。こちらでお休みください。」

そう言うと、グレタはアリシアをテーブルセットに座らせた。

アリシアは、ジョナサンとフィルが、クレアに見てもらいながら木剣を振るう様を一足先に用意してもらったお茶を飲みながらボーっと眺めた。

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