アリシアが、スカイランタンを飛ばせば、・・・(3)
本日も遅くなりました。お待ちいただいた皆様、申し訳ございません。
明日はほとんど家にいる予定のなので、明日からは間に合うと思います。
所変わって、ギュンター邸の応接室では、マークリアが、アリシアが考案したお菓子や飲み物を物珍しそうにあじわっている。
傍らでは、グレタがいつも以上に神妙な面持ちで、マークリアにお茶を出していた。
コイツのせいで、あやうくアリシアが消えかけたのもしらずに・・・。
この様子を京子さんが見たら、グレタに説教をして、マークリアを叩き出し、塩をまくところだ。
1時間前、ジョナサンが台所に駆け込んできてから、邸は蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。
ひとまず、グレタが普通のお茶を出す間に、厨房ではアフタヌーンティーの準備をする。
神様にお茶を出すなら、珍しい物が喜ばれるのではとジョナサンの助言で、厨房では、最近、アリシアが考案したクラフトコーラ、クラフトジンジャーエールと、チャイを準備していた。
お菓子には、プリンアラモード、シナモンロール、ジンジャークッキー、そして、軽食として、ホットドッグと、ハンバーガー、ミンスパイ。
ジョナサンの言う通り、マークリアは、アリシアが考案したスパイスを使ったお茶やお菓子をとても気に入った。
「コレラも、あの童子が考えたのか?」
「さようでございます。」
グレタが、マークリアの質問に返事をした時、ドアがノックされた。
「旦那様が参りました。」
カールの従者、ハイツの声が聞こえた。
グレタは、ハイツとカールを迎え入れた。
カールは応接室に入るまで、マークリアの事は、半信半疑だった。
確かに、グランディス帝国には八百万の神々がおわす国と、アニミズム的思想を持っているが、カールは、生まれてこのかた、一度も神様をに会ったことはおろか、見たこともない。
それが、いきなり、マークリアを名乗る神が現れたと言われても、簡単には信じられなかった。
しかも、そのマークリアと言えば、天界十二神の1柱に数えられるメジャーな神様だ。
そんな存在がカールの自宅でお茶をしているなど、到底信じられい。
しかし、もし、コレが事実ならば、邸の主として、挨拶は必要であろう。
そう思い、やって来たカールは、実際にマークリアを見て、その神威に身がすくんだ。
学園を卒業し、すでに10年以上、外交官として働いてきたカールの勘が、『コイツには決して逆らってはいけない』と言う警告を鳴らし続けている。
カールは片ひざをつき、臣下の礼をとった。
「お初にお目にかかります。当邸、主のカール=フォン=ギュンターにございます。本日は、わが邸へのご光臨、恐悦至極に存じます」
カールをみたマークリアは、言った。
「あの童子の父親か。立て。そちは、我の臣下ではない。今日の立場は客と、邸の主じゃ。」
カールは立ち上がり、マークリアに礼をした。
「ご配慮、いたみいります。」
カールは、マークリアの正面に座った。
「我がモンタギュー家は、何代にもわたり、貴族の末席に名を連ねておりますが、本日まで一度も当邸へ神様がお見えになったことはございません。本日は、その・・・」
カールが全て言い終わる前に、マークリアは、1本のロウソクを取り出した。
「そちは、コレを飛ばせるか?」
「魔法で、と言うことでしょうか?」
「魔法でも、道具を使ってもかまわん。とにかく、天井まで飛ばしてみよ。」
カールは、魔法で天井まで上げたが、ロウソクはすぐに戻ってきた。
「私はあまり魔法が得意でなく、あれが精一杯でございます。」
「そちの娘は、魔法も使わず、もっと長時間、飛ばしておったぞ。」
マークリアに言われ、カールは仰天した。
魔法も使わずロウソクを飛ばした、とは、いったいどう言うことか、と。
「そこなメイド、やって見せよ。」
そう言うと、マークリアはスカイランタンをテーブルに並べた。
グレタは一番の大きなランタンを手に取り言った。
「申し訳ございませんが、どなたか、介添えを」
「では、私が」
ハンスはグレタに言われるまま、スカイランタンの上側を支えた。
ハンスが支えてくれたので、グレタはロウソクでランタンの中の空気を温め始めた。
しばらくすると、ランタンの上側が膨らみ始めた。
グレタは、ランタンにぶら下がっているロウソクに火をつけ、ハンスに言った。
「手を放してください。」
ハンスが手を放すと、ランタンは浮き上がり、天井まで上がった。
「これは、いったい・・・」
カールは驚き過ぎて、言葉を失った。
言葉もなくランタンからぶら下がるロウソクを見つめるカールをよそに、マークリアはグレタに言った。
「メイドよ、あの童子が描いた絵も持って参れ」
マークリアに言われ、グレタはマークリアに一礼し、アリシアのスケッチブックをとりに行った。
マークリアはグレタが出て行ったのを見て、言った。
「興味深かろう。悠久の時を過ごす我でも、まだ知らぬことがあったと、飛ぶロウソクを見て、驚愕したわ。」
そして、マークリアは続けて言った。
「そちの娘には、我の加護を授ける。祝福もつけてやった故、アレは、これまでよりも生きやすくなるであろう。」
「ありがたき幸せでございます。娘にかわり、御礼たてまつりまする。」
コンコン
「戻りました。」
ノックの後に、グレタの声が聞こえた。
ハンスがグレタを迎え入れた。
「こちらでございます。」
グレタはテーブルの上に、スケッチブックを置いた。
マークリアは、アリシアが熱気球と、飛行船を書いたページを開いて見せた。
「そちの娘は、遠からず、コレを作りたいそうだ。」
マークリアは、熱気球を指して言った。
「コレは、何をするものでしょうか?マークリア様はご存じなのでしょうか?」
カールは、困惑した表情を浮かべマークリアを見た。
マークリアは、可笑しそうに笑いながら言った。
「そちの娘は、コレで、人間が空を飛べる、と言うておったわい。」
カールは、驚きすぎて思わず叫んだ。
「人が空を飛ぶですと!?そんな事が可能なのか!?」
「だからじゃ。我も是非知りたい。そちの娘の言う通り、人も飛べるのか?のう。そして、人を飛ばして、そちの娘は何をするのか?のう。ハハハハハ、こんなに、ワクワクするのはいつぶりか。」
マークリアは、嬉しそうに一人話続けた。
カールはどうするべきか、判断がつかなった。
聡いと思っていた娘は、実は奇人であったかと、途方に暮れた。
しかし、この、おかしな発想で、神様の目に留まったのだ。
やめさせようとすれば、神様の怒りに触れよう。
ご機嫌なマークリアに対して、カールは目の前で起こっている出来事に、どうすれば良いか苦悶した。
カールの様子を見て、何を勘違いしたか、マークリアは、さらなる爆弾を投下した。
「これらの完成には我も力を貸す。それに、話を聞けば、手伝いたいと言い出すヤツもおるゆえ、人手は心配するな。そちは、娘が健やかに過ごせることだけ考えよ。」
マークリアは、胸をはって言った。
「うっ、そ、それは、ほかの神様もお見えになる言うことでしょうか?」
カールは、マークリアの発言に肝をつぶし、つっかえながら言った。
「フム。我ら神は、誰の指図も受けぬ。故に、ほかヤツがここへ来るとは断言できぬが、我がこれだけ興味を持ったのじゃ。おそらく、遠からず、この邸を訪ねるモノもおろう。」
そう言いながら、マークリアは、テーブルに残った食べ物を食べ始めた。
そして、紅茶で割ったコーラやジンジャーエールを飲み、言った。
「これはまた癖になる飲み物じゃ。」
「スパイスを使っておりますので、独特な味と香りがします。お嬢様は、口に入れたらシュワシュワと弾ける水で割るとより美味しいと申しておりました。」
グレタの話を聞き、マークリアは、顎に手をあて言った。
「それは、やってみたい。コレを持ち帰れるようにしてもらえるか?」
「承知いたしました。本日、お召し上がりいただいた献立をお持ちいただけるよう、厨房に伝えて参ります。」
そう言うと、グレタは、一礼して、部屋を出て行った。
こうして、マークリアは大量の飲み物や食べ物を携えて、きた時と同様に稲光とともに帰っていった。
夢から覚めぬアリシアは、幸か不幸か、本人が知らぬ間に、トリックスターの異名を持つマークリアの加護をもらってしまった。
この加護が、吉と出るか凶とでるか、それはまだ分からない。




