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アリシア、運動後のお茶を楽しみに力を振り絞る(第2回体力測定)

アリシアが作ったわけではないが、アリシアは、とうとうケチャップへたどり着いた。

ケチャップを作ったのはディーンで、アリシアはディーンの横で指示を出していただけなのだが。

とにかく、アリシアは、ケチャップの呪縛から逃れる事ができた。

しかし、どうやら、新しい被害者を出したようだった。

アリシアが、いや、ディーンが作ったケチャップの精度は、やっぱり改良の余地があると、アリシアは思っていた。

しかし、それなりにケチャップの味はして、ケチャップ初心者が中毒になるには十分だった。

実際、たった数日しか口にしていないアリシアの両親には、ケチャップ中毒の症状が出ていた。

それは、昨日の事である。邸のトマトが底をつき、朝食にケチャップが作れなかったことを聞いた公爵夫妻は、明らかにショックを受け、残念そうな表情のまま朝食を食べていたのだ。

ケチャップは、とても短かい期間の間に、毎朝のオムレツに添えたいソースとして、ギュンター公爵家の食卓で、しっかり市民権を得ていた。


フンと、アリシアは鼻を鳴らした。

ケチャップを作る時、一回に使うスパイスの量はたいしたことない。

しかし、毎日となると、アティクシュさんから買ったスパイスの量は少なかったかもしれない。と、ケチャップ中毒の両親がオムレツにケチャップをかけているのを眺めながら、アリシアは、冷静に思っていた。

ケチャップを心行くまで味わえる生活を送れるようになったアリシアは、ケチャップに溺れないし、踊らされないのである。

ちなみに、せっかくスパイスが色々と手にはいったのだからとアリシアは、スパイスを使って、せっせと新商品を試作させている。

炭酸はないが、クラフトコーラもディーンが作ってくれた。今は、水や紅茶で割っているが、魔法が解禁になったらその日に、必ず炭酸水を作ってやると、アリシアは心に決めていた。

そして、今現在、厨房の料理人全員でカレーの開発中である。


さて、スパイスを手に入れてから邸内の食事環境を大幅に飛躍させたアリシアは、本日、第2回体力測定をする。

本日のメニューは、立ち幅跳びと、走り幅跳び、反復横飛びだ。

第1回体力測定の後のことを考えたら、当然ながら、体力のないアリシアは、ご褒美なしでは、しんどい体力測定を乗り切れない。

そんなわけで、授業の後のお茶には、炭酸水ではないが、お水か紅茶で割った試作品のコーラもどきと、あれから、時々、アリシアのオヤツや両親のお酒のおつまみとなったフライドポテト、ポテトチップ、そして、ケチャップを沢山かけて食べるにぴったりなフランクフルトを準備してもらう予定だ。

アリシアは、お茶のメニューを考えると、しんどい体育の授業も頑張れる気がした。

運動着を着て、シャノンが、準備してくれたブーツをはいたアリシアは、ジョナサンとフィルを待っていた。

ちなみに、シャノンが用意してくれたブーツは、ドラゴン退治に出かける上級者が履く、高機能、高性能で本格的な代物であった。

間違えてもアリシアのような運動音痴なおチビに履かせるような代物ではない。何も知らないアリシアは、ブーツを履いてみて、『まぁ、何て歩きやすいの』なんて、トンチンカンな事を思っていた。

宝の持ち腐れである・・・


さて、運動神経を上方修正してくれる魔法のブーツを履いていたアリシアは、第1回目の体力測定の雪辱を果たすつもりの気概で、今回の体力測定に望んでいる。

ジョナサンとフィルが来るまでの間に、アリシアは、グレタとリタにお願いして、反復横っ飛びの線を準備してもらった。


やってきジョナサンとフィルは、アリシアの服装から、本日の授業は庭での運動だと気づいた。

「アリ、今日は庭で走るのか?」

「いいえ。今日は走らないですわ。そのかわり、跳びますわよ。」

二人は、アリシアをポカンとして見つめた。

「お前、何言ってんだ?人間は飛べないんだぞ」

フィルが当たり前の突っ込みをした。

「人間は、飛ぼうと思えば飛べますわ。ただ、飛ぶための道具が必要と言うだけです。」

アリシアの言葉に、ジョナサンが飛び付いた。

「アリ、本当に人間も飛べるの!?」

「人間も、飛ぼうと思えば飛べますわ。ただ、飛ぶための道具は簡単には作れませんの。それに、今日はその実験はしませんわ。」

「じゃあ、明日はできる?」

いつも落ち着いているジョナサンの《アリシアの人間も空を飛べる発言》への食い付きが凄すぎて、驚いたアリシアは数歩後ずさった。

「ジョ、ジョン、落ち着いて下さいまし。明日は難しいかもしれませんが、数日うちに実験をいたしましょう。約束いたしますわ。で、ですから、今日は運動をするのです。」

ジョナサンはひとまず、納得したようだった。

アリシアは、メトロノームを取り出し、反復横跳びの説明をジョナサンとフィルにした。

「20秒間の間にどれだけ3本の線を跨げるか数えるのよ。」

アリシアは、グレタとリタが引いてくれた線を跨ぎながら、手本を見せた。

「線を踏むのは良いけど、跨げていないのはダメよ。」

そして、やっぱり、フィルが脅威的な回数を叩き出し

、アリシアは、フィルの半分ほどの回数であった。


次だ、次と、アリシアは幅跳びの説明をした。

「この線から、どれだけ向こうに跳べたか、距離をはかるわ。線からはみ出ないように気を付けて。」

そして、アリシアは手本に一回跳んでみたら、見事に尻餅をついた。

ジョナサンがすかさずアリシアを助け起こした。

「アリ、大丈夫?怪我はない?」

「スカートは少し汚れましたが、大丈夫ですわ。」

ジョナサンに心配されるなか、アリシアはスカートについた泥を手ではいながら言った。

アリシアが二度目の幅跳びも尻餅をついた以外には、これと言う特筆すべきことはなかった。

そして、走り幅跳びでは、アリシアは尻餅をつくことはなかったが、しかし、助走をつけたにもかかわらず、なぜか、幅跳びよりも距離がのびないと言う、信じがたい結果となった。


お茶の準備をしてもらったテーブルについて、アリシアは、本日の結果にうちひしがれた。

ジョナサンは、アリシアを気遣うように言った。

「アリは、お貴族様なんだから、運動なんてできなくて大丈夫だよ。」

ジョナサンの言葉に、アリシアは顔をしかめた。

「大丈夫じゃありませんわ。わたくし、明日、スタンピードが発生したら、間違いなく死にますもの。」

ジョナサンの顔がひきつった。

「明日、スタンピードが起こったら、たぶん、俺も死ぬぞ。」

あっけらかんと、フィルが言った。

「わたくしは、死にたくありませんのよ。だから、できる事は何でもしておきたいのですわ。」

「とんだりはねたり走ったりが、何の関係があるだ?」

フィルが、不思議そうに言った。

「良いですこと。今のわたくしにできることを正確に理解しておくは、皆のために大切な事ですのよ。わたくしが、わたくしにできる事を見誤って、スタンピードで逃げずにモンスターと戦おうとしたら、どうなると思いますの?」

「アリは戦えないだろ」

フィルは、アリシアが握っているノートを見た。

「もちろん、今のわたくしは、自分にどれほど、運動能力がないかを知っていますわ。」

アリシアは、ノートを見つめて、悲しそうに言った。

「だから、無謀なことは、いたしませんわ。でも、わたくしが自分の実力を何も知らなかったら、モンスターの前に飛び出すかもしれませんでしょ?だってわたくしは、魔法が使えると思って、庭を燃やすところでしたもの。」

ジョナサンは、苦笑いを浮かべた。

「実力を正しく理解するのは、大切だね。」

「そうですわ。そうして、わたくしは、悔しさと、悲しさと、情けなさで、やけ食いするのですわ。」

ため息をつきながら、アリシアは、お皿に、フライドポテトとウインナーにケチャップをかけて、食べ始めた。

ケチャップを初めて見た、ジョナサンと、フィルは、おっかなビックリな様子で、少しだけお皿にのせ、ポテトに少しつけた食べた。

「うま!なにも付けてなくても、旨いんだけど、この赤いソースつけたら、さらに旨い」

フィルは、アリシアのように、ポテトやウインナーに大量のケチャップをつけながら食べ始めた。

「アリ、この赤いソースは何?」

ケチャップをかけてバクバク食べるフィルをよそに、

ジョナサンはケチャップの匂いを嗅いだり、少しだけ舐めたりしている。

「これは、トマトとスパイスとビネガーで作ったケチャップと言うソースですわ。なかなか美味しいですわよ。」

アリシアは、ジョナサンに説明した。

「トマトとスパイスとビネガーか。ちょっと独特な匂いだったから、全然分からなかった。」

アリシアの説明を聞き、納得したように、でもフィルとは違い、少しずつフライドポテトやウインナーにかけてジョナサンは食べ始めた。


アリシアは、ケチャップ?を食べながらこれからの事を考えていた。

ひとまず、ずっと後回しにしていた、護身術の件を父親に相談する事から始めようと思った。

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