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アリシアは、ケチャップに餓えている(2)

ジョナサンとフィルは、気が済むまでアリシアをもみくちゃにしてから、離れた。

そして、二人は、アリシアがエプロンをしているのをみた。

「アリ、今日は厨房で何か作るの?」

ジョナサンは聞いた。

「そうですわ。今日は、お二人と、食べだしたら止まらなくなるらしい食べ物を食べますわ。」

アリシアは、自信ありげな様子で宣言した。

アリシアがそう言うなら、きっとウマイんだろうと、二人もすでに楽しみになっていた。


アリシアは、ジョナサンとフィルを先頭に、厨房へ向かった。

今回は、プリンの時とは異なり、何のお願いも根回しもしていなかったため、最初、アリシアは、料理人達に嫌がられるかと思ていた。しかし、突然、現れたアリシア達に、料理人達は驚いたが、嫌そうな素振りはみせず、ニコやかに対応してくれた。

「今日は、皆様にお願いがあってきました。新しい軽食を作っていただきたいんです。」

アリシアは、ジョナサンとフィルの後ろから、顔をのぞかせて言った。

「ひとまず、ディーンを手伝いにつけますよ。」

突然のアリシアの突撃訪問であったにもかかわらず、料理長は快くディーンをアリシアにかしてくれた。

「お嬢様、今日はどんな面白い事をするんですか?」

ディーンも、これから始まる事にワクワクした様子でアリシアに聞いた。

「まず、おイモの皮を剥いて、薄くスライスして欲しいのです。おイモは、ジャガイモですわよ。」

「とりあえず、一つで良いですか?」

「味見できれば良いので、とりあえず一つでよいですわ」

すると、ディーンは、手早くおイモの皮を剥き、スライスしていった。

「お嬢様、次はどうすれば良いですか?」

「スライスしたおイモは10分ほど、水にさらしてください。」

アリシアの指示に従って、ディーンはスライスしたおイモを水にさらした。

「お嬢様、次はどうしたら良いですか?」

「次は、同じようにおイモの皮を剥いてください。そして、今度は、5ミリ角に刻んでください。おイモは、今度もジャガイモで数は2個にしてください。」

ディーンは、アリシアに指示された通り、おイモの皮を剥き、今度は5ミリ角に刻んだ。

「コレも、水にさらせばいいですか?」

「ええ。その通りですわ。今度は1時間はさらして下さいませ。」

アリシアは、頷いた。

ディーンは、おイモを水にさらしながら、アリシアに次の指示を仰いだ。

「お嬢様、次は、どうしたら良いですか?」

「次は玉ねぎをみじん切りにしてくださいますか?」

「玉ねぎで涙がでるかもしれないから、お嬢様達は少し離れてください。それから、数は一つでいいですか?」

「ええ、一つで良いですわ。」

アリシアは、ディーンの質問に答えた後に、ディーンから言われた通り、少しはなれた。

ディーンは、手早く玉ねぎをみじん切りにして、また、アリシアにきいた。

「お嬢様、次はどうしたら良いですか?」

アリシアは、離れた場所から少し大きな声で、ディーンに指示を出した。

「玉ねぎが白っぽく透けてくるまで、炒めて下さいませ。」

ディーンが、玉ねぎを炒め終わったのをみたアリシアは、まだ少し玉ねぎの刺激臭がのこるディーンの側によってきた。

「ディーン、そろそろ、おイモのスライスを水からあげて、水気を綺麗なフキンで拭いてください。」

ディーンは言われた通りに、向こうが透けそうな薄いおイモのスライスを水からあげ、フキンで水分をふきとった。

「お嬢様、コレをどうしたらいいですか?」

「高めの温度の油で、色がかわるまであげてくださいませ。」

フライドポテトを作るならと、アリシアは、ポテトチップも作ってもらったのだ。


ディーンは、揚げあがったポテトチップの油をしっかりきってから、皿にもった。

「お嬢様、これで、出来上がりですか?」

ディーンが見せてくれたポテトチップは、パリパリに揚がっていそうだった。

「これに、少しお塩をふれば出来上がりですわ。」

ディーンがポテトチップに塩をふっているのをみながら、アリシアは、口の中からヨダレが溢れてくるのを感じた。

ディーンが差し出したお皿から、ポテトチップを一枚とり、アリシアは、少しかじった。

パリッと言う歯ごたえの後、香ばしいお芋の風味が口の中に広がった。

「ディーン、凄いですわ。とても、美味しくできています。」

アリシアは、そう言うと、もう一枚ポテトチップをかじった。

「二人も召し上がってくたわさいませ。とても美味しいですわよ。ディーンも、作ったんですから、召し上がってくださいませ。」

ジョナサンも、フィルもアリシアに勧められるがまま、ポテトチップを口に入れ、雷に打たれたような衝撃を受けた。

「うんめ~~~~!」

「美味しい!」

そう言って、もう一枚、もう一枚と、二人とも次々にポテトチップを消費していった。

ジョナサンとフィルの様子に、イモを揚げただけの料理がそんなに旨いのか?と、疑問に感じながら、ディーンもポテトチップを一枚味見した。

「これは、やめられなくなりますね!?」

ディーンは、先ほどの疑問を忘れ去り、ポテトチップをもう一枚手に取った。

結局、1回目に作ったポテトチップは、ディーン、ジョナサン、フィルの3人で、あっという間に完食してしまった。

3人の勢いがすごすぎて、グレタとリタは食べられなかった。

「何だよ、イモ1個じゃ少なすぎる」

と空になった皿を見ながら、フィルはアリシアに文句を言った。

「フィル、今日は他にも味見をする物があるんですから、食べすぎてはいけませんのよ。」

グレタとリタには申し訳ないが、ジョナサンとフィルの様子に、アリシアは、ポテトチップをおイモ1個で作ってもらって良かったと、自分を盛大に褒めた。

「お嬢様、さっき炒めた玉ねぎはどうすればいいですか?」

心の中で、自画自賛をしていたアリシアは、ディーンに声をかけられ、ハッとした。

それから、慌てて、ディーンに次の指示を出した。

「今から言う野菜をみじん切りにして、先ほど炒めた玉ねぎと、卵1個と、叩いて刻んだ牛肉に混ぜて、お塩と胡椒をふってから捏ねてくださいませ。お野菜は、ニンジン、パプリカ、ピーマン、全て1個ずつですわ。お肉は250gにしてくださいませ。」

ディーンは、アリシアの指示通り、ニンジン、パプリカ、ピーマンをみじん切りにし、牛肉を叩いて刻んでミンチにした。

それから、全ての材料をひとつのボールに入れて、塩と胡椒をふって、捏ねていった。

「お嬢様、コレをどうしましょう?」

「ディーンの手のひらよりも小さめの大きさで、ステーキくらいの厚さにして、真ん中を凹ませてから、フライパンで焼いて下さいまし。」

ディーンは、言われた通り、小さめのハンバーグをたくさん焼いていった。

厨房には、ハンバーグが焼ける、肉の匂いが広がった。

「あ~、うまそ~。アリ、オレ、腹がへったよ。」

今にもヨダレをたらしそうな顔でフィルが言った。

ジョナサンは何も言わなかったが、フィルに同意するように頷いた。

ハンバーグの種が入ったボールが空になったところで、ディーンは、アリシアに次の指示を仰いだ。

「お嬢様、次はどうしたら良いですか?」

「玉ねぎ8分の1個とニンニク1片をみじん切りにして、トマトの皮を剥いてください。

それから、お肉を焼いたフライパンを拭かずに、そのまま、トマトを潰しながら玉ねぎとニンニクと一緒に煮詰めて下さい。最後にお塩と、胡椒で味を整えます。」

「お嬢様、玉ねぎとニンニクは目が痛くなりますので、離れてくださいね。」

「分かりましたわ。」

アリシアは、ジョナサンとフィルを連れて、また少しディーンから離れた。

ディーンは手早く玉ねぎとニンニクをみじん切りにし、トマトの皮を剥いて、ハンバーグを作った肉汁が残るフライパンに入れて煮詰めはじめた。

トマトソースの良い匂いに連れられ、アリシア達はディーンのまわりに集まった。

「ディーン、トマトのソースはもういいですわ。火をとめてください。次に、別のソースを作ります。まず、卵の黄身と白身をわけてください。」

ディーンが卵の黄身と白身をわけたのを見て、アリシアは、次の指示を出した。

「白身は使いませんの。だから、何か別の料理で使用してくださいまし。黄身と白身をわけたら、卵の黄身に小匙に少しのお塩を入れて、混ぜてくださいませ。少し、卵がもったりしてきたら、ビネガーを大さじ半分入れて、また混ぜてくださいませ。また、卵の色が少し変わったから、卵をかき混ぜながら、今度は油80ccを数回にわけて卵に注いでいきます。卵が白っぽくなったら出来上がりです。」

本当は、先にポテトを揚げたかったが、隣で、フィルとジョナサンのお腹が鳴ったため、アリシアは、ハンバーガーを先に準備してもらうことにした。

「ディーン、トマトソースを別のフライパンに少し入れて、温めてください。ソースが温かくなったら、先ほど焼いたお肉を入れて、お肉とソースをよくからめてください。」

「お嬢様、これで完成ですか?」

「いいえ。丸パンを半分に切って、レタスとこのお肉をはさんでください。お肉をパンに挟む前に、卵のソースも少しかけてください。」

ディーンは、完成したハンバーガーを一口サイズに切って、食べやすいようにカクテルピンをさして持ってきてくれた。

「お嬢様、残りのイモも揚げるんですか?」

ディーンは、ハンバーガーのお皿をアリシアの前に置きながらきいた。

「そうですわ。あのおイモも、水からあげて、水気をふいてください。その後は少し違います。コーンスターチと、薄力粉をまぶしてから、油で揚げてください。でも、今度は、油を加熱する前におイモを油に入れて下さいませ。」

ディーンに指示を出してから、アリシアは、朝から食べようと思っていたハンバーガーを食べた。

ハンバーガーと言うには、色々たりていないと、アリシアは思ったが、トマトソースはなかなか美味しく、マヨネーズと素晴らしいハーモニーを奏でてくれている。

「なかなか、良くできておりますわ。ジョン、フィル、ほどほどに召し上がってくださいませ。」

「ほどほどって、なんでだよ?」

フィルは、そう聞きながら、さっそく、ハンバーガーをとめてあるピンに手を伸ばした。

「最後のおイモも、とても美味しいと思いますのに、お腹が一杯で食べられないのは悲しいではないですか?ですから、《ほどほど》なんですのよ。」

「確かに。」

アリシアの言葉に納得するもフィルは、一口食べて、歓声を上げた。

「うんま~、もう、無理!!!ほどほどとか、ぜって~無理だから。旨すぎる」

フィルは、そう言うと二つ目に手を伸ばした。

ジョナサンも、フィルに続いてハンバーガーを食べ、うなり声をあげた。

「く~~~、これは、フィルの言う通りかも。ディーンさんが早く、最後のイモを持ってきてくれないと、食欲に勝てずに、理性が崩壊するよ。」

ハンバーガーを、二人が食べ尽くさないうちに、アリシアは、グレタとリタにも、声をかけた。

「グレタ、リタ、二人とも、味見に一つずつ召し上がりなさい。」

アリシアに声をかけられたグレタとリタは、ハンバーガーの食レポを始めた。

「まぁ、とてもクセになるお味でございますね。」

「本当に。後を引く美味しさと言うか、後日、思い出して食べたくなりそうなお味ですわ。」

グレタとリタが頷きあっているところに、ディーンがポテトを持ってきた。

「危うく、オレのがなくなるとこだったな。」

お皿に残るハンバーガーを見ながらディーンが言った。

「ジョン、フィル、フライドポテトができましたよ。」

アリシアは、二人に声をかけた。

「ディーン、コレにもお塩をかけてくださいまし。」

ディーンは、アリシアに言われて、フライドポテトに塩をふった。

アリシアは、まだ熱いフライドポテトを口に入れた。

ポテトチップとは違うサクサクした歯ごたえとおイモの味が口の中に広がった。

「とても美味しいですわ。」

アリシアは、そう言ってもう一つフライドポテトを口に入れた。

「さぁ、皆様、どうぞ召し上がってくださいませ。」

アリシアは、皆に声をかけた。

ジョナサンとフィルとグレタとリタ、ディーン、皆がフライドポテトを口に入れ、感動していた。

「なんだよ、コレも旨すぎだろ」

フィルが叫んで二つ目を口に入れた。

ジョナサンと女子二人は、何か言う事も忘れて食べる事に集中した。

「最初に食べたイモのスライスとはまた違いますが、コッチのイモも食べ出したら、止まらなくなりますね」

ディーンは、そう言うと、二つ目のフライドポテトを口に入れてから、ハンバーガーの味見に移った。

「これは、また旨いですね。」

ディーンは、ハンバーガーを味わいながら言った。

「これに、トマト、ベーコン、玉ねぎの輪切り、キュウリのピクルスを挟むこともあるようですわ。」

アリシアは、ディーンにハンバーガーの具について説明した。

「へ~、じゃあ、残りの肉で色々試してみます。」

ディーンは、残りのハンバーグを見ながら言った。

「そう言えば、お嬢様、レシピはあるんでしょうか?」

思い出したようにディーンが聞いた。

「今回は、思いつきだったから、用意してないの。」

アリシアの返事を聞き、厨房にいた料理人達から小さな悲鳴があがり、ザワっとした。

その様子を見たアリシアは、慌てて言った。

「でも、必要なら用意しますわ。来週になっても良いかしら?」

「もちろんです。お願いします。」

ディーンは、嬉しそうに言った。

「それから、もう一度言いますが、卵のソースは、今日しか使えなですわ。残ったら必ず捨ててくださいまし。これは絶対に守ってください。」

「分かりました。残ったらら、この卵のソースは、絶対に捨てます。約束です。」

ディーンは、アリシアとマヨネーズの廃棄を約束した。


プリンは、ギュンター公爵家のデザートとして、毎月1回は食卓に上がる。

何なら、両親がお茶と一緒にお茶菓子として、お客様に出していることもある。

さて、今回のジャンクフードも上手く布教できそうだ。

ジョナサンにもフィルにも、グレタやリタ、ディーンにも大好評だった。

とは言え、ジャンクフードの代表格が、我が家の食卓に上がる日がくるのかは、謎である。

で、皆には好評なハンバーガーであったが、アリシアはやっぱり納得してなかった。

ハンバーガーのパンは、やっぱりバンズでなければいけない。

しかし、生まれてから一度も、アリシアは、バンズに、お目にかかった事はない。

白い丸ンしか見たことないのだ。

アリシアは、まだまだ、この邸の食料事情は、改良の余地ありだ、と密かに思っていた。

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