アリシア、教育に目覚める
いつも、読みに来てくださる皆様、ありがとうございます。6月にはいり、暑かったり寒かったりしますが、体調崩さぬようご自愛ください。
小説を書き始めて、私が思っていたよりも読んでくださる方が多く、とても嬉しく思っております。
皆様に感謝をこめて、本日、お昼頃12時頃に閑話をアップします。本編とは直接関係ありませんが、皆様が楽しんで下さったら幸いです。
ジョナサンとの初顔わあせから、アリシアは、毎日す、フィルとジョナサン、二人に勉強を教えている。
まず、アリシアは、二人の前で、文字と数字を書いてみせることにした。
そして、書いた文字と、数字を、二人に読ませた。
二人が、字を書けずとも、文字の形を見て、何と読むか認識できるようになったので、アリシアは二人がお手本にするための文字と数字を紙に書き出し、書き取り練習用のノートと一緒に渡した。
ここで、アリシアにとって、想定外の事態が発生した。
二人の習熟度が全然ちがうのだ。
ジョナサンはもともと賢いうえ、歳もアリシアとフィルより3つ上だ。
普通にしていても、フィルよりも集中力も高ければ、知能も高い。
そのうえ、努力を惜しまない性質のため、ジョナサンは、アリシアが書く字を自分でメモして帰り、家で自主的に練習を行っていた。
だから、アリシアから渡された手本を見て、本格的に書き取りの練習をしたら、それだけで翌日までに文字も数字もすらすら書けるようになってしまったのだ。
一方のフィルは、5歳にしては、賢い。かと言って、ジョナサンほどの知恵はないため、メモして帰り家でも自主的に練習するなんてことはなかった・・・
文字と数字の練習ノートを渡した翌日、アリシアは、フィルの数字と文字の書き取りテストの結果と、宿題を見比べて、眉間に深い深いシワを寄せていた。
「ねえ、フィル。わたくし、一文字30回練習するように言わなかったかしら?」
アリシアにきかれたフィルは答えた。
「言ってたぞ。」
「そうよね。ならフィル、なぜ10回ずつしか練習していませんの?」
「30回は、多い。手がいたくなってきたから、やめた。」
さも、当然と言わんばかりのフィルの態度に、アリシアの怒りのボルテージが上昇していき、フィルのノートをテーブルに叩きつけた。
「うわ、なんだよ、ビックリするだろ」
ノートがテーブルに叩きつけられた『バシン』と言う音に驚き、フィルが文句を言った。
「わたくしが、30回と言ったら、黙って30回ずつ、書きなさい。この試験の結果をご覧なさい、そんな調子だから、半分もできていないのですわ」
アリシアは、怒鳴りながらフィルに答案用紙を投げつけた。
フィルは、投げつけられた答案用紙を拾い上げ、怒り狂うアリシアを不思議そうに見た。そして、ためいきをつき、
「わかったよ。次からは、ちゃんと言われた通りするよ」
と言った。
《これだから、ヒステリー起こすヤツは、マジダルい。は~、ヤレヤレ》と言わんばかりの、全く反省していないフィルに、アリシアは、とうとう、手に握っりしめていた、赤鉛筆をへし折ってしまった。
アリシアが赤鉛筆をへし折ったことに気付き、ジョナサンは、顔をひきつらせながら、アリシアから赤鉛筆を回収した。
そして、ジョナサンは、アリシアの眉間のシワを優しくのばしながら言った。
「アリ、ココにシワがよってるよ。可愛い顔が台無しだ。」
ジョナサンの『アリ』呼びもいたについてきた。
アリシアとの付き合いは一番短いが、アリシアの機嫌をうまくとり、怒り狂ったアリシアが与える被害を最小限に抑えるジョナサンは、本人にとっては良いことか悪いことかは分からないが、すでにグレタ、リタに続きアリシアのお世話係として、使用人達にも認められていた。
「ごめんなさい。わたくし、取り乱してしまいましたわ。」
どうやら、アリシアが気付かぬうちに体から魔力が漏れでて、赤鉛筆をへし折れるくらいの身体強化をしていたようだ。
アリシアは、何度も深呼吸を繰り返し、爆発しかけの怒りを抑えこんだ。
落ち着きを取り戻したアリシアは、気を取り直してジョナサンにもテストを返却した。
「ジョナサン、凄いですわ。満点でしてよ。」
アリシアから渡された答案を、ジョナサンは嬉しそうに受け取った。
フィルは、ジョナサンの答案を覗き込み感嘆の声をあげた。
「えっ、ジョン兄、満点なの!?スゲー」
ジョナサンは、二人に誉められ、恥ずかしそうに言った。
「実は、練習用のノートをもらう前から、個人的に字の練習をしてたんだ。」
「ジョン兄、抜け駆けとか、ズリーぞ。」
フィルは、不満げに文句を言ったが、アリシアは、フジョナサンに難癖をつけるフィルに、ためいきをつき、言った。
「フィル、勉強に抜け駆けなんてありませんわよ。己の学びを深めるため、創意工夫を重ね、自分にあう最善の方法をさがしていくのですのよ。ジョンは、誰にも教えてもらわないのに、それを実践したのですわ。ジョンは、きっと、勉強が得意な質なのね。」
「え~、じゃあ、オレ、いつまでたっても勉強できないままじゃね~か。」
落ち込むフィルに、アリシアは言った。
「そんなことありませんわ。確かに、あなたは、ジョンのように、熱心ではありませんが、短期間に惜しいところまできていますのよ。ジョン、先ほど返した答案を見せてくださる。」
アリシアは、ジョナサンから受け取った答案用紙を、フィルの答案用紙の横に並べた。
「見てごらんなさい。あなたが書いた文字は、正しくはありませんが、正解の字に近いのですのよ」
ジョナサンは、フィルの書いた文字を見て言った
「確かに。もう少し練習したら、間違わなくなると思う。」
「え~、オレ、ちまちま字の練習するの、いやなんだよなぁ。」
フィルは、うんざりして言った。
本当は、フィルが正確な字を書けるようになるまで、字の練習してほしかった。何なら、アリシアがフィルの横で激をとばしてでも、無理やり書かせたいと思っていたけど、もはやモチベーションが下がっているフィルを椅子に縛り付けようとするのは、悪手だ。
しばらく、考え込んだ末、アリシアが口を開いた。
「仕方がありませんわね。ここからは、習うより慣れよ、ですわ。」
「『慣れよ』って、何すんだ?」
不敵な笑みを浮かべるアリシアを、ジョナサンは、不安げに、フィルは不思議げに見つめた。
結局、アリシアは、ジョナサン、フィル、二人に、その日、森に住む老賢者の絵本を朗読させた。
ジョナサンは、初見であるにも関わらず、スラスラ読め、フィルはつっかえながら読みきった。
授業の最後に、アリシアは二人に、アリシアが作った宿題プリントを渡した。
この世界に、コピー機はない。アリシアは、二人のために2枚のプリントを手書きで作った。
内容は、今日読んだ絵本についてだ。主人公は誰?とか、時代はいつか?とか、主人公は何をしたか?とか、なぜ主人公はそうしたのか?とか、所謂、国語のテスト的なヤツだ。
プリントを受け取る様子も二人は対照的で、アリシアは、次の作戦に着手することにした。
ちなみに、アリシアから宿題を渡されたジョナサンは、ワクワクした様子で受け取り、フィルはテンションだだ下がりな様子で受け取った。
「二人とも、これは明後日までに仕上げてくださいませ。」
アリシアがそう言うと、ジョナサンは拍子抜けして、フィルはあからさまに喜んだ。
「言っておきますけど、フィル、明日は明日で宿題を出します。だから、今日中にだいたい仕上げておかないと、明日、大変になりますわよ。それを肝に銘じておきなさい。」
アリシアの言葉に、フィルはショックを受けた。
ジョナサンは、アリシアに、明日の授業の内容をきいた。
「それで、アリ、明日は、何をするの?」
「楽しいことですわ。楽しみにしていて。」
アリシアは自信ありげに答えた。
「絶対、楽しくないよ」
フィルは、ブツブツと文句を言いながら、肩を落として帰っていった。
一方のジョナサンは楽しそうに、アリシアの部屋を後にした。
帰っていく二人を見送った後、アリシアは、グレタとリタと手を繋ぎ、厨房に向かった。
本当は、二人の後ろに隠れたかったが、アリシアの中に残っていた一欠片の矜持が、それを踏み止まらせた。
厨房につくと、料理長のサムが、アリシア達を迎えてくれた。
「お嬢様、どうされましたか?オヤツが必要ですか?」
料理長の言葉に、アリシアは、笑いながら答えた。
「ちがいますわ。オヤツは、もういただきました。実は、ら明日、厨房の一角を借りたいの。」
料理長は、不思議に思いながら、アリシアに許可を出した。
「良いですが、何をなさるんですか?」
「ふふ、ジョンと、フィルとお菓子の研究をしようと思って。」
「お菓子ですか?」
「そうなの。うまくできれば、皆にもおっそわけするわ。それから、準備して欲しいものはコレですわ。後、誰か、お手伝いしてくれる方はいないかしら?」
アリシアは、回りを見渡した。
「手伝いとは?」
「明日は、グレタとリタにも手伝ってもらうつもりです。ジョンはあの通り、指示に従う良い子ですが、フィルは、少し落ち着きがないから、その、グレタとリタだけでは、フィルを止められるか心配で。」
アリシアの説明をきき、料理長は、一人の少年に声をかけた。
「おい、ディーン、明日、お嬢様達の助手をしろ」
少年は、振り返りアリシアに微笑んだ。
「分かりました。お久しぶりです、お嬢様。重いものを運ぶのや、危ない作業は、オレにいってくださいね。」
人好きのする笑顔で、少年は言った。
『良く知らない料理人だったらと、不安でしたが、、ディーンなら、安心ですわ。』
アリシアは、ホッとして、ディーンに挨拶した。
「ありがとう。明日はよろしくおねがいしますわ、ディーン。」
ディーンとアリシアは、アリシアが邸の中で日本探しにいそしんでいた頃に知り合った。
ディーンは、邸の散策で、歩き疲れ、お腹を空かせたアリシアをオヤツを駆使して、保護したのだ。
ディーンは、ウサギやクマの形のクッキーをアリシアに見せながら、そっとアリシアに近寄り、クッキーを渡して、すぐに距離をとった。
そして、アリシアを隠れてみまもり、クッキーを食べ終わった頃に、再び、ディーンがアリシアに近寄りクッキーを渡すと言う、まるで人慣れトレーニング中の保護猫に接するような戦法をとり、アリシアの警戒心をといていった。
アリシアの発作を起こさせず、アリシアに警戒心を解かせたため、ディーンの逸話は、使用人達の間で伝説になった。
ちなみに、餌付けのかいあって、アリシアの方も、オヤツをくれるお兄さんと言うイメージをディーンに持つようになった。
今では、グレタとリタを除いた次に、ディーンに親しみを感じるようになっていると言う事は、公爵夫妻にしられてはいけない。




