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ゼーダ帝国侵攻

 国営油は順調に稼働している。


 菜種集めは新しい雇用を生み、廃材はオリーブの木の肥料としたことでこれまでより3倍以上の収穫ができるようになった。


 オリーブオイルは菜種油の出現で価格が5分の1まで下落し当初クロハラ公爵から宰相に直々文句があったが、さすがお姉ちゃんだ。


「あなたは損をしましたか?前より儲かっているではありませんか。小さいときからお姉ちゃんお姉ちゃんと私の後ろばかり付いてきていたのに、簡単な計算もできないのですか!あなたも偉くなったものですね。あまり欲に溺れると身を滅ぼしますよ」


 クロハラ公爵は顔を赤らめて逃げるように去って行った。


「お姉ちゃん強い」

 (小声で言った)


 実際損をしていない。価格は5分の1になったが、収穫が3倍で抽出量が3倍だから前よりも1.8倍もお金になるのだ。人件費が多少増えるだろうが前よりも儲かっていることにかわりない。


「ローズマリア様、あなたは素晴らしい。知識も考えかたも。ダンと一緒に私のところで学んでみませんか。私の全知識を貴方に渡したいですわ」


「嬉しいのですが学校があるので単位が取れなくなります」


「それなら大丈夫ですよ。校長は私の教え子ですから話しておきます。あの子は授業をよく抜け出す手のかかる子でしたのに今では校長ですからね。それにあの学院の知識は貴方には狭すぎる。」


「ありがとうございます。ではどうしたらいいですか」

「そうですね。ダンと同じように朝1時間だけ授業を受けてください。あとはこちらに来ていただければいいですよ。卒業単位は取れますから」


 翌日から私はダンと行動を共にすることになった。

 でも寝起きはアンヌの勉強屋敷だ。


「ダンのとこに行かないでニャ。寂しいニャ。朝食を一人で食べるのは嫌ニャ。もう賭け事はしないから行かないでニャーーーーー」


 当初交通の便からダンの離れに引っ越す予定だったけど、アンヌがすがって泣くからダンが「2年間だから姉さんいいよ」と折れた。ダンのズボンの裾はアンヌの鼻でピカピカになっていた。


 うなぎ屋アリマズーロは全国展開し、ソルタナ王国51州に開店した。たった半年のことだ。ちなみに51州目はチイサナ州だ。

 新規オープンした唐揚げ屋は低価格もあって庶民が買いに来て大繁盛だ。

 牛丼屋は麦に合う味の研究中だからまだオープンできない。


 どうしても米というものが欲しい。


 料理本も第3弾まで出している。価格は銀貨1枚まで下げている。大量に売れるから安くできる。それにもう儲けることより国民の食を良くするのが目的だ。


 カーチャがまた来て自慢をした。

 サインを見てみて、これよ。


 “カーチャ様へ 愛を込めて。 ローズちゃん”


「すごいでしょ。私だけの本ですのよ」

 私知らないですよ。そんなこと書いた憶えはいなですよ。それに“カーチャ様へ 愛を込めて”の部分は私の字ではないですよ。ご自分で書かれたのですね。ややこしくなるので黙っておきますわ。



 今日も2時限目からは国の成り立ちと国民の幸せについて学ぶ。


「この国は元々小さな国でした。私たちはひっそりと暮らす田舎王国でした。ところが隣国が宣戦布告もなしに攻撃してきました。そこで……」


「授業中すみません。緊急事態です。ゼーダ帝国が攻撃してきました」

「どこにですか」

「はい、国境の町ジュルイナです」

「またあそこに来たの?」

「はい3年ぶりですが、今回はこれまでと少し違うようなのです」

「わかりました。ミロン将軍をここに呼んでください」

「はい。もう来てらっしゃいます」


「キンバリ様失礼します。ダン様、ローズマリア様授業中失礼します」


「ところで将軍、戦況はどうなっていますか」

「はい、キンバリ様の準備が万全であったため被害は最小限で済んでいます。それにあそこは山間にあるため自然の要塞があるようなものです」


「目的は食糧でしょうね」

「どうも我国同様小麦が不作でしたようで」

「我国はローズマリア様の助言で春小麦が不作だったけどサツマイモを沢山植えたから困らなくて済んだわ。ダンがローズマリア様と付き合っていなかったら我国も大変なことになっていたでしょう。サツマイモは茎を増やせばいくらでもできるし耕作地を選ばないのがいいですわ。茎も食べられるしね」


「今から視察に行きましょう。あなたたちも来てください。視察を授業の続きとします。校長にはこちらから連絡しておきます」


 王都からジュルイナまで馬車を乗り継ぎ2日を要した。馬車の中でも寝れることができるものだ。眠りが浅かったせいかずっと夢を見ていた。


「ジャ ジャ ジャーーーーーーーーーン」

「はいはい、絶壁さん、こんばんは」

「どうしたんですか。やさぐれてますね」

「どうも隣国が攻めてきたらしいのよ」


「戦争ですか?」


「そうみたいね。ただ敵国の兵士がすぐに投降するらしいのよ。それで捕虜が増えすぎて食糧が足らなくなったのよ。ただ捕虜となった敵兵はとても従順で監視兵の言うことを良く聞くというか従順すぎるのよ。

 捕虜は増えるし国境付近には敵兵がどんどん増えるけど攻撃は散発ですぐに捕虜になるの。それで今から行く町は捕虜が溢れて町の財政が破綻しそうだから追加の食糧を届けるために途中の町で食糧を集めながらジュルイナという国境の町に行く途中だけど2日間馬車に揺られて寝不足なのよ」


「どこかで見た映画に似てますね」


「どういうこと」


「架空の話なのですが、ある国が隣国から宣戦布告されました。敵兵は抵抗することなくすぐに捕虜になります。捕虜収容所はいつのまにか敵兵で溢れますが捕虜が従順なため少しずつ監視が甘くなっていきます。どんどん増えていくのですが敵兵が協力的なので自国に食糧不足が起きても食糧を集めて捕虜に与え続けます。本国では食糧を減らそうとしたのですが、なぜか捕虜の味方をしてそれだけは止めてくれと言うんですよ。

 少しずつ敵国の罠に完全にはまってしまいます。そのうち捕虜は監視人の数十倍に膨れますが、彼らには変な親近感が生まれて仲良くなります。さらにどんどん捕虜は増えていきますが監視人は増加人数に麻痺してしまい足らない食糧を確保すべく東奔西走します。架空の話ですから途中を省略しますが、ある日敵兵が国境を越えていたので防戦することができず、首都に侵攻されてしまいました」


「あら、変ね。越えてきたのではないの?」


「いえ、越えていたのです」


「どういうこと?」


「捕虜となった者は国境のすぐ近くにいた敵兵の総力でした」


「散発だから全員を捕虜にしたわけではないでしょ」


「そうですが、捕虜は捕虜収容所から敵国本部隊まで貫通するトンネルを掘っていました。そこから武器を運び兵士は捕虜のふりをして過ごしていました。馬鹿なことに敵兵全員に食事を与えて養っていたのです。捕虜の増加に麻痺してしまったんですね」


「なにか今の状況にそっくりね」


「そうでしょ。あの映画を見たあとで元妻に会ってしまったんですよ。悪いやつだと見抜けなかったんですな。凶悪な奴らを見た後だったので悪いやつぐらいでは麻痺してしまっていい人に見えてしまったんです。怖いですね」



「もう朝だよ。ローズマリア食事の時間だよ。起きて!」

「あ、ごめんなさい。お寝坊したみたいね」

「まだ着いていないからいいよ。あと2時間で到着するよ」


「私急いでキンバリ様に話さないといけないことがあるの」

「じゃ今からすぐに食事を一緒に取ろう」


「ローズマリア様よく寝られましたか?」

「少し寝不足ですが頭はスッキリしています」

「私に急いで話があると聞きましたが食事を取りながら話しましょう」


 私は絶壁さんから聞いた話をアレンジしてから話した。


「私も少しおかしいと考えていましたが現場の指揮官が一番理解しているだろうから静観していました。私も麻痺していたのですね」

「私も昨日までは変だなあと思いつつそこまでは考えていませんでした」

「いえいえこれに気づかれるとはすごいことですよ」

「実は私では……」

「ご謙遜されなくていいですよ」


「いやー儂は将軍職にありながら全く気づきませんでした。不覚です」


「そうだよ。ローズマリア、君には驚くことばかりだ」


「では、積んでいる食糧は敵にタダで与えることになりますから、途中で各砦に配りましょう。ミロン将軍途中の砦から兵士を集めてください。すでに敵総力は捕虜収容所にいると仮定して動きましょう。敵兵力の5倍の兵士を集めてください。これから捕虜収容所を包囲します」


「は、畏まりました。久々の頭脳戦にワクワクしますぞい」

「いえ、敵の方が私より優れていましたよ」


「そんなことありませんぞ。こうしてローズマリア様をお近くに置いているのですからキンバリ様の方が優れていますわい」



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