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スメラ貴族学院

(5) スメラ貴族学院


 私はソルタナ王国スメラ貴族学院の二年に転入した。


「今日から新学期ですね。早速ですが転入生を紹介します。ローズマリアさん自己紹介してください」


 アンヌが手を振っている。


 な~んだ、ダンはこのクラスじゃないわ。


 私がこの国の最大飲食店である『うなぎ屋アリマズーロ』の社長兼チイサナ州知事であることとダンの婚約者であることは秘密だ。私の命が危ない。婚約者であることがバレると他の貴族から暗殺もあるらしい。


 一年生にダンはいなかった。


 二年生だったのよ。アンヌが二年生だったからダンは一年生と思っていた。


「双子だから弟は同級生だニャ。だから結婚式は二人が卒業する再来年だニャ」

 ソルタナ王国は15歳で成人になる。成人にならないと結婚できない。チイサナ王国でも成人は15歳であったが結婚は5歳からできた。政略結婚のために国王が変更したのだ。


「だったら言ってくれたらいいじゃない」

「勝手にそう思ったのが悪いニャ」

「学校に通う間うなぎ屋が心配だわ」

「ミロン・サロン将軍に任せておけば大丈夫だニャ。あいつは何でもできるからニャ」


 私は王都に屋敷を買うつもりだったが、アンヌが『私の勉強部屋に来るニャ』というのでお世話になっている。王城の離れにアンヌの勉強部屋がある。ただの勉強部屋がカンザス伯爵邸より大きい。

 ここから裏門を通って学校に通うことになった。


「チイサナ州から転校してきましたローズマリア・カンザスと申します。よろしくお願いします」


 こそこそ声がきこえてるよ~。


「あの潰れた国からきたんだ」

「あの国はダン君を殺そうとしたらしいよ」

「元国王は牢獄に入ってるんだって」

「小さい国の貴族は片身が狭いわね」

「噂によると貴族なのに借家に住んでいるらしいよ」

「取り柄は顔だけらしいわ」

「カーチャ様に目をつけられるかもね」


「ローズマリアさんはアンヌさんの隣に座ってください」


 私達はハイタッチする。


「まあー、転校初日からアンヌ様になれなれしいわね。きっとカーチャ様が怒るわよ」


「ねえアンヌ、私評判よくないみたいね」

「しょうがないニャ。自分より下の階級の者には容赦ないのが貴族ニャ」

「そういえばそうね。カーチャ様って誰なの?」

「親父の弟の子だニャ。あいつは嫌いニャ。噂をしたから来たニャ」


「あ~ら。アンヌ久しぶりね。いつみても貧相な胸だこと。頭も空っぽだしね。あなたの父親は長男ということだけで国王になったラッキー王だものね。国王には私の父クロハラ・ソルタナがふさわしいわ」


「お前の親父か?野心家で浪費家ではないか」


「向上心があると言っていただけませんこと」


「毎回うるさいニャ。なんの用ニャ?あの役立たずの銭食いならいつでも返すニャ」


「あの男はいらないわ。威張るし女癖が悪いだけならまだしも私の着替えを覗くのよ。あなたが賭に負けてくれてよかったわ。祖父の代からのお荷物を始末できてせいせいするわ」


「カーチャ結局何が言いたいニャ」

「あなたに用事はないわ。そこの貧民に用があるの。あなたのことよ」


「え!私ですか?」


「貧民はあなたしかいないじゃない!」

「はあー、ところで何のようでしょうか?」

「あなたがダン君を探していたと通報があったわ。彼は貧民が話せるような相手ではないのよ。釣り合うのは私ぐらいね。とにかく会長と話すときは副会長の私を通してくださる。それだけよ。貧民さん。ではごきげんよう」


「言いたいことだけ言って出て行ったわ」


「だから嫌いなんニャ」


「ローズマリア帰るニャ」

「まだ学校に来て間がないわよ」

「何言ってるニャ。今日はこれで終わりニャ。夏休み明けはホームルームだけニャ。聞いてなかったかニャ」


「誰に聞くの?」

「あたいニャ」

「だったら聞いてないわ」

「今、言ったニャ」


「カーチャに会ったから気分悪いニャ。蒲焼き食べに行くニャ」

「そうね。王都に三号店と五号店を作ったけど客入りが心配だから今から行こうか」

「すぐ行くニャ。ダンは生徒会があるから少し遅れるニャ」


 アンヌは三号店は繁盛しているというので五号店に行くことになった。とりあえず覆面パトロールだ。


「何人だ」

「二人です」

「そうか。ではカウンターだな」

「あのー座敷がいいのですが」

「座敷は団体さんのものだ」

「団体?何人からですか。4人からだ」

「誰が決めたのですか」

「社長だ」

「私そんなこと言ってないですよ。アンヌそんなこと言った?」

「知らないニャ」

「店長を呼んでいただけますか」

「小娘のくせに!いっちょまえの口をきくな。それにここは貴族専用のお店だ。そもそも学生が来るところではない」


「私は貴族専用にした覚えはないし学生を制限したこともないですが?あなた誰?」

「バカヤロー誰でもいいだろう!俺は店長に任命された副店長だ。学生が大人に向かって。口の利き方がなってない」


「知らないわ。ねえアンヌここの店長を任命したのあなたよね」

「そうだニャ。だけどこいつを副店長に任命してないニャ。こいつは掃除係のはずだニャ」

「店長さんを呼んでください」

「お前達学生が会えるような人ではない。帰れ!」


「なんだなんだ!うるさいぞ」

「あれ、あ~アンヌさま。いつ来られたんですか。言っていただければこんなやつに応対させませんでした」


「お前なにしてたニャ。顔に口紅が付いてるぞ」


 アンヌは掃除係のヨイショが止めるのを振り切って店長室に入った。

 あーあ。おねえさんが2人もいる。しかも裸。

 

「ドビッチお前クビにゃ。カーチャの賭けで負けたからおまえを引き取ったけどお前はつくづくクズだニャ」


 二人を即刻クビにした。


「くそ。覚えてやがれ。道を歩けると思うなよ」


 その日は私が臨時店長をすることになった。


「アンヌあんたが副店長だからね。お客さんがいっぱい来たわよ。それと賭け事はやめないと身を滅ぼすわよ」


「いらっしゃいませニャ」


「あ、カーチャ……さん」


「おほほほほ、貧民はここでアルバイトをしてたのね。いいわ、一番高い三段重うな重を注文してあげるわ。でも人がいっぱいね。ローズマリアさん私を優先して案内しなさい」


「それはできません。ここにお名前を書いて椅子に掛けてお待ちください」


「なにを言ってるの。私は公爵家筆頭のカーチャよ」


「だれでも関係ありません。順番をお待ちください」


「まあ、失礼ね。あ、会長、こっちですわ」


「あ、ダン……」


「カーチャさん順番は守らないとダメだよ」


「そうですね。私並んでいたのですよ。それなのに彼女が私を特別扱いしようとするのです。アルバイトのくせに失礼な子ですの。チイサナ国出身ですから常識を知らないので教えていたところですのよ。ほほほ……」


 ダンがカーチャの後ろでゴメンをしている。


 お客さんがいっぱいでお昼を食べる時間もない。やっと少し落ち着いてきたからうな丼を急いで食べる。疲れがどっと出て、うつらうつら眠くなる。


「ジャ ジャ ジャーーーーーーーーーン、ジャ……」

「うるさいわよ。今やっとお昼を食べたんだから静かにしてくれない」

「すんません」

「昼でも出てくるのね」

「夢の中でしか出られませんからチャンスは生かさないとデス」

「それはそうとあなた忙しいときの昼食はどうしてたの?」

「そうですね。お茶漬けでしょうか。うな重をお茶漬けにすると美味しいですよ。”ひつまぶし”といって出汁をかけますが、緑茶でもいけますよ」

「それいいわね」

「お客さんに出してもいいですよ」

「ちょっと詳しく教えてよ」


 鰹節と昆布というのが理解できなかったので後日いろいろ試すこととして紅茶はあるから当面紅茶の製造店に発酵をしない茶を注文すればいいわ。

 わさびは、わさびに似たツーンとくる植物があるので代用することにしよう。


「あなた料理に詳しいわね」

「はあ、調理師でしたので家族の食事も全部私が作ってました」

「調理師というのは宮廷調理免許みたいなものですか?」

「そこまでのものではありませんが、似たようなものかもしれません。一応三つ星ホテルと高級料亭での経験もあります」


「それだけ詳しいのなら料理本を出してみたら!」

「私は貴方としか話せませんから無理ですよ」

「教えてくれたら私が書くから今晩また出てくるのよ。でもジャジャジャーンはいらないからね」

「最初のフレーズだけでも。あれをやらないと落ち着かないのです」

「わかったわ。最初だけよ。それとこれからあなたを本名で呼ぶね」

「山沼祐二という名があるのですが、もう死んだからいままで通り絶壁でいいですよ。それに結構気に入ってますよ」


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