徒花は青くて白い。
ぜひ最後まで読んでください!
──愛してしまったんだ。
頬を何かが伝った。
──許してはくれないか?
それが自分の涙だと気がつくのに五秒もかかった。
──君だけが、好きなんだよ…。
誰かが嗤った。
──どうして分かってくれないの?
それが君が僕に向けた最期の抵抗だとすぐに気がついた。
──今ならまだ間に合うよ。
手には力を、瞳には希望を込めた。
──お願いだよ、どうか。
君は苦しそうに喘いだ。
──この世界が廻ってしまう前に。
それでも嗤うことはやめないみたいだ。
──この世界が死んでしまう前に。
どれだけ願っても君は応じてくれない。
──ねぇ、どうして?
僕から溢れた涙が一つ、君の顔に落ちた。
──こんなにも愛しているのに。
君は僕をこんなふうにしておきながら酷い人だよ。
──僕らは出会ってはいけなかったのかな?
あの日、君は僕とずっと一緒だと言ったのに。
──そんなことないよね。
あの日、君は僕を好きだと言ったのに。
──僕らは運命なんだから。
それなのにどうして君は僕を捨てるの?
──お願いだよ、僕を独りにしないでよ。
僕の涙は止まらなくなって、君の顔は濡れていく。
──でも、でも、もう大丈夫だよね…?
君は僕の言葉を無視して、もう昔みたいに話してくれない。
──ほら、これでもう誰も邪魔できないよ。
会話してくれないけど、問題はない。
──ようやく来たよ、僕らだけの世界に。
君は瞬きを忘れたみたいで、瞳を大きく開いたまま。
──目が乾いちゃうよ、ほら。
僕は君の首から手を離して、そぉっと瞼を下ろさせる。
──これで大丈夫だね。
結局最期まで『愛してる』の言葉は貰えなかった。
──今日から、死ぬまでずっと一緒だよ。
けれど構わない。
──僕が死ぬまで、ずうっと、一緒だ。
これから僕は君を独り占めできるんだから。
──言葉が通じなくても、心は通じるよね。
物言わぬ君だけど、美しさは生前と変わらない。
──愛してしまったんだもん。
僕は頬を膨らませた。
──仕方ないよね?
僕の銀の髪に太陽が反射して、朝が来たことを知った。
──君が綺麗すぎるのが悪いんだよ?
朝日は君の姿も照らす。
──朝日に照らされる君も愛らしい…。
その肌はあまりにも白く、あまりにも青い。
──これからもっと、好きになりそうだよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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恋愛とか普段書かないのでダークにしかならない…。
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