表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

5話 クラスの静止

 視線。

 突き刺さる、クラス中からの視線に、僕はおののいて立ち尽くすことしか出来ない。

 見ている。見られている。あきらかに僕を見つめるその視線は、昨日の無関心とはあきらかに様子が違った。


 しかもクラスは異様に静まり返っていた。

 ただただ、視線だけが僕に降り注ぐ。

 どうしたというのだ。


 助けを求めるように教室をあちらこちらと見ていると、サユリたちと目があう。

 もちろんサユリたちも僕を見ていたが、その目には僕と同じ動揺が感じられた。


 ふらふらとそちらへ向かう。

 その間も僕に注がれる視線は、僕を捉えて離さない。


「なんか僕、見られてない?」

 サユリたちに小さくたずねる。ケースケが言う。

「俺らが来た頃にはもうこの状態だったんだ。なんかクラス中が殺気だってるっていうかさ。なにがどうしたっていうんだ?」

 その言葉にサユリは不可解だと言いたげに僕の目を見て、それから首を振った。


「ねー、リコっち! ラブレターもらったって?」

 その時僕に声がかかる。それはクラスで一番華やかで、そして間違いなく一番の美貌を持つ女子、ユーコのものだった。

 彼女は取り巻きもキレイどころの揃ったグループの机から、こちらへと向かってくる。


「噂になってるよ。よかったじゃん。付き合うの?」

「い、いやまだ決めてない」

「早く返事してあげなね。付き合うにしろ、振るにしろさ」

「あ・・・それが・・・」

 そこまで言って僕は言葉を飲み込んだ。詳しい事情を話していいものか判断がつきかねたのだ。

「うん・・・なるべく早くするよ」

 だから僕はそう言葉を濁すことしかできなかった。

 彼女は「そ!」と言うと、ニコッと笑って踵を返した。

 その時僕は聞いた。踵を返したユーコがチッと舌打ちをしたのを。

 そしてグループの机に戻ると、何事もなかったかのように、「でさー」と日常の会話を始める。

 その瞬間止まっていた時間が動きだしたかのように、クラスに喧噪が戻る。


 ざわざわと日常の会話がクラスのあちこちで展開される中、僕らだけが訳が分からないといった様子で顔を見合わせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ