4話 作戦会議
まあ、そんな都合のいい話はそうそうあるものではない。
サユリたちの冷たい視線を浴びて、僕は我に返ると緩んだ顔を引き締めた。
だがラブレター女子に関してはこの推理はそうそう外れてもいまい。
ラブレター渡してどんなリアクションするかガン見だなんて、あまりにも短絡的すぎる発想だった。
しかしどうしたものか。
そうなるとラブレター女子の正体を暴く方法が僕には思いつかなかった。
どうしよう・・・と考えていると、
「ねー、リコ。今日変じゃない? なんかあったの?」
サユリが尋ねてくる。
僕は一瞬ためらったが、そうだなあ言ってしまうか、と彼らにラブレターの件を話すことにした。
一人で考えこんでいても、いい知恵はでない。こんな時は頼れる人に相談! これである。
◇ ◇ ◇ ◇
場所と時を移して学食で。
「ラブレターねえ・・・」
サユリがつぶやく。
「お前、からかわれたんじゃねえか?」
ケースケが言う。サユリも頷いて同意を示す。
「そんなことないって! こんな文章良くも悪くも本気な奴にしか書けないって」
テーブルにはくだんのラブレターが広げてある。
「しかしなんというか・・・ちょっと狂気の入ったラブレターね。こんなのが我がクラスにいると思うと・・・」
サユリが自分の体を抱いて、ぶるぶるっと身ぶるいする。
「けっこう怖いよな」
ケースケも言う。
「ほんと誰なんだろ? こんな事書きそうな女子クラスにいた?」
サユリの発言に僕らは黙り込んでしばし考え込んでしまう。
しばし考え込んだ後、
「あ、そうだ! リコの発想はあながち間違ってはいないかも。やっぱりラブレターを送った送り主は、リコの反応が気になって仕方がないと思うよ。だからさ、明日も同じ作戦をとろう。で、リコが来る前の教室の様子を私たち観察してみるよ。
いつもと何か変化がないか見とくから」
サユリが言う。
なるほど。僕には見えないものも、2人なら見えてくるかもしれない。特に僕がいない時間と僕が到着した瞬間、そして僕が教室にいる時間、これらの変化がモニタリングできるのは大きい。
「おお! それだよ。マジさんきゅーな。やっぱ持つべきは友だなあ。めっちゃ心強い」
「あはは。いいのよ、気にしないで頼ってもらって」
「そうそう、親友のためだもんな」
「それに単純にラブレターの送り主気になるしね」
「だな。わくわくしてくるよな」
「おいおい・・・こっちは本気で悩んでるんだから真剣にやってくれよ?」
「わかってるよ。まかせとけって」
そんなふうにわいわいと僕らの作戦会議はすすみ、そして・・・
次の日。
僕は教室の扉の前にいる。
昨日から何か変化は起きただろうか。
扉をスライドさせる。