3話 落胆のち喜悦
「リコー! ちょっとあんた何してるわけ?」
落胆中の僕にちょっと離れた机から声がかかる。僕の友人のサユリだ。
サユリ、ケースケ。
この二人が僕の親友で、僕らはいつも一緒にいる。
2人は、入ってくるなり教室を睨みまわしていた僕を、不思議な顔で見ている。
僕はとぼとぼと彼らの方へと歩いていく。
「なんかすごい顔でガン飛ばしてたけど・・・どしたの?」
サユリが尋ねる。
「だよな。なんか怖かったぞ」
ケースケも言葉を継ぐ。
「いや・・・ちょっと・・・」
僕はもごもごと言葉を濁すことしかできない。
驚いた。自分はモテるタイプだなんて思ったことはないが、ここまで誰からも興味を持たれていないとは。
わりとショックだった。
しかし、そうなるとあのラブレターの送り主はいったい誰なのだろう?
この教室内に確実に一人は僕に想いを寄せる女子がいるはずなのだ。
だがその女子は正体を容易につかませない。
もしかすると、僕のファーストコンタクトでラブレター女子発見作戦が見抜かれていたのかもしれない。
これはなかなか手ごわい。
が、ちょっと待て。
作戦も何も、僕は人間心理というものを読み違えているのかもしれない。
自分の好意を寄せる異性が教室に入ってくる。その一挙手一投足に釘付けになって目が離せない。
僕はそう考えた。だが人の心はそう単純なものだろうか?
むしろ逆に顔を見れない!
そんな子もいるかもしれない。
ましてや今日はラブレターを投函した当日。
彼はどんな顔をしているのだろう。とても顔を見られない。
そう思うかもしれない。
なるほど、なるほど。
そういう事か。
ん。待てよ。
この理屈はラブレター女子以外にも適用できるのではあるまいか。
リコ君早く来ないかなぁ。来ないかなぁ。来た! 今日もかっこいい! 顔直視できない!
そんな女子が他にもいるかもしれない。
「ぬふふふ」
僕の口から思わず笑い声がもれる。
「わ! なんか笑ってる! キモッ!」
サユリがそう言って、ドン引きしていた。
ケースケも。