15話 初めての友達
「ねー、リコっち! ラブレターもらったって?」
私はなるべく軽い感じを演出して、彼に話しかける。
彼が緊張するのがわかる。いつものことだ。
教室の雰囲気もあるだろうが、それだけではない。私はいつも遠巻きにされてきた。
子供の頃の話。
私はひとりぼっちだった。
決定的になにがわるかったのか、それはわからない。
みんな興味は示してくれるのだが、話しかけてはこない。
無言の視線だけが私に突き刺さる。
私は不満だった。
話しかけたければ、話しかけてくればいいのに。
今思うと不満が顔に出ていたのかもしれない。よけいみんなは話しかけづらくなる。ネガティブスパイラルがぐるぐるとまわっていた。
そんな日々に疲れていた。
そして、その子をみつけた。
公園のブランコでランドセルをしょったまま、ブランコをブラブラと足でゆらしていたあの子。
私はずかずかと近づいていくと、二個あるもう一方のブランコに腰かける。
「ねえ。毎日つまんないよね。私はなんとなくわかる。あなたも私と同じでしょ? 毎日つまんないなって思いながら生きてるでしょ?」
彼女はそれこそつまらなそうに顔を上げ、私を見た。
そして言う。
「あなた何言ってるの? 私あなたの事知ってるよ。みんないつも噂してるもの」
そう言った彼女はフフッと笑うと、
「贅沢だね。
あなたは手を伸ばすだけで、欲しいものが手に入るっていうのに、それを自分でしないだけ。私は違うよ。誰も相手になんてしてくれない」
彼女の言葉に私は一瞬虚をつかれた。しばし呆然とする。
私は手を伸ばしていないだけ? 私が悪いっていうの? 私だって精一杯やっているのに。
頭に血がのぼるのを感じる。
「・・・じゃあ手を伸ばしてみましょうか?」
と言う。
そして手を伸ばした。彼女へと。物理的に。
グーで!
なんでそんなことをしてしまったのかわからない。そうとう虫の居所が悪かったのだろう。そして今でも考えられない事だが、彼女は殴り返してきた。
そこからは大喧嘩。髪を引っ張り合い、お互い殴る、蹴る。
大人がそれをみつけて慌てて飛んでくると、二人を引き離す。
親を呼ばれ、一応謝罪をさせられる。だが二人とも視線は合わせない。
母は、うちの子がこんな事をするなんて信じられないんです、と大いに動揺していた。
彼女の母も同じ様子だった。
そして、次の日。私はまた公園へ行く。
同じブランコに彼女が座っている。
私は言う。
「あなたなかなかやるわね。友達になりましょう!」
彼女は、ヘッ! と笑って、そして私たちはなぜか友達になった。