14話 誤解
私の朝、登校はわりと早い。
教室のドアをスライドさせる。
「来たー! ユーコ来た来た」
私は目をしばたたかせる。友人が私の方を見て男子と笑っている。
いっしょにいた男子が近づいてくる。
「なぁー、ユーコってリコの事好きなんだって? 意外な趣味をしてるよな。マジ笑うわ! でも俺は応援するよ。ユーコ振る奴とかいねーだろ」
彼の言葉にハッとして周囲を見回す。登校していたみんなが私を取り巻いてニヤニヤ笑っていた。
その輪の外の、ミイと目が合う。
ミイの目は驚きに見開かれている。
「ちょっとそんなんじゃ・・・」
私が否定しようとするのをかき消すように、友人が、
「ごまかそうったってダメなんだからね。ツキシマさんが、リコ君にラブレター出した話聞いて、めちゃくちゃ動揺してたじゃん。決まりじゃん」
教室がドッと笑いで、わく。
「だから・・・」
なおも否定しようとするも、
「私、安心したよ。ユーコこういう話ぜんぜん反応しないんだもの。めちゃくちゃ美人だから、そーゆーのってすごい怖かった。なんか機械みたいって」
「機械って・・・じゃないくて! 私リコ君の事なんてなんとも思ってないってば」
「いーからいーから。人を好きになることは悪い事じゃないんだよ」
クスクス笑いながらクラスメイトたちは笑っている。
あ!
私は気づく。
これって私の事をバカにして、楽しんでるわけじゃないんだ。心から私の恋愛を応援しようとしてる。
それは少しこそばゆく嬉しかったけど、でもじゃあミイはどうなる?
たぶん彼らにとって、ミイの事はどうでもいいんだ。
大事なのは私であって、ミイじゃない。
その事実に私の中で何かが切れる。
「だから違うって言ってるじゃん! ツキシマさんいるじゃん! ちょっとはあの子の事も考てよ!!」
大音量で私は叫んだ。
クラス中がぎょっとして、沈黙する。そして気まずそうに顔を見合わせあった。
みんながはじめて存在に気づいたかのように、ミイにも注目が集まる。ミイは居心地わるそうに、私たちから視線をそらしている。
その時、
「お!? なんだこれ??」
のんきな声がする。
ケースケとサユリが教室に入ってくるところだった。
ケースケたちまだ来てなかったか。リコ君も・・・よし、いない。なんとかなりそうだ。
私は椅子に座ると腕組みして足を組んだ。
とにかくリコ君が来るのを待とう。
でもその後どうしたらいい?
わからないが、当たって砕けろだ。
ミイのためには砕けるわけにはいかないが。
教室は異様な沈黙に満たされていた。