11話 私は反対だ!
ああ、こいつか。
登校してさっそくリコ君とやらを品定めにかかった私はリコを見て、なるほどこれはと頷く。
イケメンではない。
まあまあ平均的な容姿ではあるのだが、どこか幼く人の良さそうな顔立ちは、好きな子は好きなのだろうなと納得のいくものだった。
実際何人かの女子がたまに気にしている顔でチラリと見ている。
男子もリコ(その他二人)の会話に耳を傾けている様子で、リコがなにか冗談を言うとニヤッとそれにつられて笑う様子が見られた。
リコ本人はそんなことには気づかず、その他二人との会話に夢中だが。
クラスのマスコット的存在ってやつだろうか?
・・・ふーん。こんな奴いたんだ。
我ながらクラス事情の疎さに呆れてしまう。
「悪くないじゃん」
そう呟いて親友の方を見やる。
相変わらず机に突っ伏してクラスの空気と化している。
「でも実は聞き耳立ててるわけね。あ、今顔上げてリコ君の事見た」
親友のいじらしさに微笑ましいものを感じて自然と口角が上がるのを感じた。
だが・・・
品定めが何日目かになった時だ。
「あ、僕が持つよ」
リコが、教師から教員室に持って来るように頼まれた大量のプリントの前で、困った顔をしていた女子に言う。
「いいのー? リコ君ありがとう」
「いいって~」
そう言って女子と一緒に教室を出て行く。
しばらくして一人で戻ってきたリコに、その他二人の男子の方(ケースケというらしい。さすがに覚えた)が
「リコー! なんだよポイント稼いじゃって。あの子の事好きなの?」
「違うって。普通あのシチュエーションだったら手貸すでしょ」
「またまたぁ。言っちゃえよ! 親友として応援するぜ」
「マジで違うから。タイプの子じゃないし」
あ! と思う。話を聞いていたその他二人女子の方、サユリも同感だったらしく、
「ちょっとリコ! その発言、サイアクだからね。思っちゃうのはしかたないけど、口に出すとかデリカシーなさすぎ」
と厳しい顔で咎める。
「だってさあ、ケースケが・・・」
「言い訳すんな!」
なおも、だってとブツブツ言ってるリコを見ながら、たしかにサイアクだなと思う。思うが・・・
普通だなとも思う。
この年代の男子なんて幼いし、女子の顔がどーのこーのと言うまっさかりだろう。そう考えるとリコはそこまでひどい発言をしたとも思えない。
もっとひどく、直接的な表現を使って女子の顔を揶揄する男子もいる中で、この程度の失言は普通だろう。
ミイの方を見る。相変わらずのスタイルだがこの一部始終を聞いているだろう。
だけどきっと、「あの子の事好きじゃなかったんだ、よかった」と安心こそすれ、この発言に問題を感じることなどないかもしれない。
恋の前では時に小さなミスなんてかき消えてしまうものだから。
でも私はこの恋は反対だ。
普通の男子生徒のリコ。
普通。
私は大親友に普通レベルの恋人を選んでほしくないんだ!
だから反対することにする。
私はそう思うのだった。