10話 ユーコとツキシマミイ
この話から視点がリコ→ユーコに変更となっております。
ツキシマミイは私の大親友だ。だが、クラス内で私とミイが絡む事はない。
「ユーコと私じゃ釣り合わないから・・・」
いつもそんな風に言う親友に、
「そんなことないって! ミイかわいいし、もっとおしゃれに気をつければ人気でると思うんだけどなあ」
「ううん。だめだよ・・・」
「もう! そんなことじゃ好きな人ができても振り向いてもらえないよ!」
そう言っても、ミイは力なく笑って首を振るのであった。
そんなミイからそれを打ち明けられたのは一か月ほど前の話だった。
「ねえユーコ。私、好きな人ができた」
「えー! 誰? 誰?」
「リコ君!」
私は一瞬考えた後、
「誰??」
疑問の声を上げる。リコ君? そんな奴知らないなあと思った。
「リコ君だよ、リコ君。同じクラスの」
ミイが抗議口調で訴えてくるが、私はやっぱりそいつの顔を思い浮かべることができなかった。
「そんなこと言われてもなあ。どんな奴だっけ」
はぁ、とため息をつくとミイが、
「ユーコ、そういう所あるよね。リコ君クラスの中でもけっこう人気あるんだよ」
そう言う。
たしかに私は、ゴーイングマイウェイな性格だと、友人たちから指摘される事がよくあった。自分でもある程度は自覚しているのだが、それで誰に迷惑をかけてるわけでもないし、いいのではないかと思う。
そう言うとミイなどは、
「いや、迷惑かけてるから。ユーコは自分の立場とかもっと考えた方がいいよ。特にさ、この前も男子が勇気だして声かけてるのに、あ、ごめーん、今忙しいんだーとか素で言うでしょ。かわいそうじゃん」
そう言ってくる。
いや、知らないしというのが本音だ。
私は自分がけっこう美人だという自覚はある。ありはするが、それで他の女子がしなくてもいい気の使い方をしなくてはならない。
そんな風潮は断固拒否する。
友達に優れた容姿の女子がいるが、美人というだけで女子からは妬まれ、男子からは言い寄られる。告白を断った日には、逆恨みをされて悪い噂を流されることもしばしばだ。
それでメンタルを崩し気味になっているのを見ていると、私は絶対こんなのは嫌だと思うのだ。
とはいえゴーイングマイウェイも過ぎて、今回のように親友の好きな人のことも認識できていないというのはちょっと問題ありかな。
私は少し反省した。
「リコ君、か。ちょっと見てみるよ」
そう言うと嬉しそうにミイは、
「うん!」
と頷いた。