1話 ラブレターを受け取って・・・
ある日僕が学校へ登校すると、下駄箱に一枚の封筒が入っていた。
ピンク色の、ハートのシールで封がしてあるそんな封筒。
ぼくはそれを手に取ると、手触りを確かめたり、透かして中を見てみようとしたり。
やっぱ、あれだろうなあ。
ラブレター。
人生で初めての経験に、僕は喜んでいそいそと封を開け・・・
なんてことはしなかった。
困惑。
まずその感情がやってきた。
僕はクラスの目立つポジションでもなければ、ぼっちポジションでもない。
モテるタイプではないが、女友達を含む、友人たちもいる。
顔も普通。成績も普通。
彼女だっていままでいたことはないが、そのうちできるのだろうな、と楽観視できるくらいには考えられた。
このように僕は普通の人間だった。
故に思う。
なんで僕??
それがまず不思議だった。
このラブレターを出した女子は僕の何が気に入ったのだろう?
自分を卑下してるわけじゃない。普通はいい事だ。
実は僕の事を好きな女子がいて・・・そんな事を考えない事もなかった。
でも実際こんなものを受け取ると、
マジか・・・
そんな気持ちになる。
何にせよ中を確認しなくてはならない。幸い朝のホームルームまでにはまだ時間があった。
ラブレターを鞄に入れると、一階の男子トイレへ。4つある個室の一番奥を選んでカギをかける。
そしてまたラブレターを取り出すと、それをもう一回表、裏と眺めハートのシールを破らないように開封する。
左下にキャラクターがあしらわれたかわいらしい便箋が入っている。
それを僕は読み始める。
『突然のお手紙ごめんなさい。
私はリコ君と同じクラスの女子です。いつもリコ君たちが楽しそうにしているのを、ああいいなあ、私も中にはいりたいな。そんなふうに見つめています。
勘違いしないでね。私友達いないわけじゃないよ。
でもリコ君たちがとても眩しく見えるのです。
なんでかなあ、と考えたらわかりました。
私恋してるみたいなのです。
そうです。リコ君の事がとっても好きみたいなのです。
この気持ちをどうしようと思って伝えるべきか迷いました。
迷って、迷って、迷いました。
私決めました。
リコ君の事好きです。でも私は名乗らないことにしました。
だって怖いんです。
リコ君に君の事はなんとも思ってない、そう言われるのが怖いんです。
でも、好きという気持ちは日に日に増して行って、苦しくなって行く。
だからこんな手紙を書いて、あなたの事好きな女の子がいるんだって知ってもらうだけにしておくことにしました。
わがままですか? そうですよね。
でもこれがいまの私にできる精一杯。
臆病者の私を許してね
これからも楽しい学園生活をお送りください。
ちょっと遠くからそれを見ています。』