表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

5分シリーズ

あなたと過ごす時間

作者: 理春

島咲家、裏庭にて。


「ふぅ・・・・。」


「あら・・?更夜こうや?」


「・・・おう、どうした・・・こんなところで・・・」


「!!貴方!!どうして煙草なんて吸ってるの!?」


「あ・・・?」


「信じられない!貴方お医者さんでしょ!?それに未成年よね!?考えられないわ!今すぐ消して!」


「・・・何をそんなにムキになってんだ・・・。」


「仮にも患者を診る立場の貴方が体に害のある煙草だなんて!しかも法律違反よ!?」


「わかったわかった・・・ほら消したろ。」


「・・・はぁ・・・どういうこと?まさか貴方の周りで仕事している人は皆黙認してるの?」


「・・・まぁ、そうだな。ここに法律も何もあったもんじゃない・・・。」


「・・・いくら日々大変な職務に就いているからといって、煙草なんて容認出来ないわ。ほら・・・持ってる煙草をよこして。」


「・・・・断る。多少のストレス軽減のために喫煙している。体に害を及ぼす程ヘビースモーカーなわけじゃない。」


「貴方は17歳でしょう!?そんな成長期に煙草なんてもってのほかだわ!!」


「・・・母親に言われるならまだしも・・・。小百合に言われる筋合いはないな。」


「なんて意地っ張りなの・・・。だったら椿様と悟様に報告させてもらうわ!」


「好きにしろ。報告せずとも二人とも知ってるさ。忠告は受けたし、煙草吸う時間よりはるかに俺は労働時間の方が長いね・・・。」


「・・・そういう問題じゃないっていうのはわかってるでしょ?」


「理由は説明した、小百合に制限されるいわれはない。当主のくせに、というなら、一患者ごときがどの口を叩いてる。俺に命令する気か?」


「はぁ・・・。・・・更夜・・・私は貴方を心配して言ってしまったの。失礼は承知の上よ。どうしても辞める気はないの?」


「・・・ないな。代わりになるストレス軽減法でもなければ。俺の現在の平均睡眠時間は1日5時間程だ。成長期の少年に必要とされる時間より遥かに短い。だが自分の健康管理は徹底しているつもりだ、血液検査も毎年異常はないし、日本人男性の平均身長より若干高く、体重も標準だ。ヘモグロビン値が低いわけでもなく、血圧が高いわけでもない。・・・それでも何か問題が?」


「・・・ご両親にもそう言ったのね、きっと。ご立派だわ、その年で当主を勤めて、医者の仕事も毎日こなしているんだもの、ストレスが溜まるのも当たり前かもしれない。でも発散法は煙草でなくていいと思う。」


「これがお手軽なんだよ。俺にとっては・・・。」


「じゃあ今日から生まれ変わりましょ?私も一緒に考えるわ、貴方が心身ともに健康でいるための発散法を。」


「ふん・・・。」


「私に出来ることがあるとすればね、考えたのだけど・・・マッサージなんてどうかしら。後はアロマセラピーとか、そこまでお金もかからず、心身ともに癒されると思うのだけど・・・。」


「人に寄りけりだな。残念ながら俺はアロマの香りが苦手だ。」


「あら、そうなの・・・。じゃあ・・・スポーツや筋トレなんてどうかしら。更夜は運動神経も抜群だと伝え聞いたわ。体を動かすことはストレス発散になるし、そもそも運動自体が健康にいいことでしょう?」


「筋トレなら毎日してる・・・。医者は体力勝負だからな。ちなみにサウナや入浴法にもこだわってる。」


「まぁ・・・そうなのね・・・。だったらそうねぇ・・・更夜好きな食べ物や、趣味とかないの?好きなものを食べられると人間幸福度が増すものだし、趣味に使う時間はストレス軽減になりうるわ。」


「・・・食べ物に関しては管理栄養士が徹底して俺の食事を作ってる。好物って程のものはそこまでない。趣味に使う時間は今のところ皆無。」


「・・・更夜も何か案はないの?」


「あるにはある。」


「なあに?」


「小百合が・・・俺の煙草をこう・・・着物の懐に入れてだな、自分の部屋に戻ればいい。俺はそれを取り返すために追いかける。」


「何それ・・・追いかけっこをしたいってこと?」


「・・・小百合を部屋で捕まえて、煙草を取り返すために俺は着物をはぐ。・・・お分かり?」


「それじゃあ貴方に煙草が戻っておしまいじゃない・・・何も解決してないわ。」


「はぁ・・・俺が要求してるのは欲求を満たす行為であって、もう煙草の話はしてない。」


「・・・な・・・!そ!そういうことは恋人同士か夫婦がすることよ!?」


「そうだな。だがストレス軽減法としては有効と言える。コミュニケーションの一貫と捉える者もいるが、運動にもなりうるし、薬物や煙草のような依存性がありながらも、体に害はない。ちなみに・・・女性にはホルモンの関係で美肌効果もあるらしいぞ?」


「・・・害はなくとも妊娠のリスクはあるわ!」


「孕ませようなんて考えちゃいない。避妊具くらい持ってる。まぁこれは1人で出来る解消法ではないし、合意の上でないとそれこそ犯罪だ。俺は一族の当主、前科人になる気はないし、小百合が了承しないのであれば、その煙草は返してもらうしかないな。」


「・・・・も~~!・・・貴方って人は・・・。もう知らないわ!取りたければどうぞ取りなさいよ!」


「・・・ここでか・・・?外だぞ・・・?」


「ち、違うわよ!もう!・・・ほら、返すわ!」


「わかってくれたならそれでいい。お前も患者なんだから、散歩くらいはいいが体が冷えないようにしろ。」


「・・・ねぇ・・・返すけど・・・もうあまり吸わないでほしいの。」


「・・・はぁ・・・それは小百合のお願いか?」


「ええ・・・そうよ。ダメ?その・・・貴方が提案したことに・・・期待に添えるように努力するから・・・。」


「どういう急激な心変わりだ?」


「・・・心変わりも何も・・・。私は貴方だからいいと思っただけよ。」


「ふん・・・。はぁ・・・わかったよ・・・ったく。」


「・・・ふふ、良かったわ。貴方はちゃんと話を聞いてくれて、そして折れてくれる人だもの。」


「お前なぁ・・・。」


「部屋に戻るわ。お仕事がもう終わってるなら、一緒に部屋に戻りましょう?」


「何だ、その気になったのか。」


「違うわよ!お部屋で一緒に何気なく時間を過ごすの、そういうデートから始めてもいいでしょう?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ