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7 おのれ…ヒヨコめ…(怒)

セオドア王子様が幸せそうに「今度はアメリア嬢の好きな花を持参しますね」なんて王宮へと帰って行ってから、アメリアの部屋では緊急家族会議が開かれていた。


「…そんな訳で、私はセオドア様に婚約の承諾をしたわけでは無く、このふてぶてしそうな顔をしたヒヨコに声を掛けられて思わず返事をしちゃっただけなのよ!」


力説しながら私のベッドの上に降りてきたヒヨコを指差す。

この赤いヒヨコは生まれたて? だというのに器用に飛んで私のベッドの膝のあたりにデンッと座っているのだ。


「うーん… でもねえ… 既に王子様は快諾されたと思っていらっしゃるでしょうし、既に王家の皆様にも婚約内定のお話は通っているみたいだし… 今さらお断りするのは難しいわねぇ…」


お母様が困り顔で首を傾げる。


「それに臣下の立場で今さらお断りすれば不敬罪で領地没収、没落なんていうことにもなりかねないしなぁ…」


お父様まで… もう、私にお断りする道は残されていないというの?

このヒヨコのせいで! …情けなさに涙がにじみ、つい本音が口から溢れ出る。


「ううう… 私が王家に嫁いで魔力0の無能王妃と馬鹿にされてもお二人は構わないとおっしゃるのですね⁈ 無能王妃の両親として一生陰口をたたかれ続けるのよ?私はそれが嫌なのに!!」


私がこんな外見で生まれてしまったばかりに、両親は謂れもない悪意で傷ついてきた。

その上、魔力すら持たない私はどれ程この家のお荷物なのだろう。

父も母もいつも優しく、私の周りはそんな悪意の入る隙間などなかった。幼いままでいられたなら良かったのに…。


14歳になる少し前から、王宮でのお茶会に招待されることも増え、マナーや社交術の勉強のためだと大勢の貴族令嬢の中に行く機会が増えた。

私の爵位が高いからと、表向きは皆さん親切にしてくださるけれど、陰で「無能の令嬢が恥ずかしげもなく王宮に顔を出している」とヒソヒソと噂していることも聞こえてきた。

…口惜しさと恥ずかしさでお茶会での出席を躊躇っていた頃、遺伝についてのお勉強があった。子供は両親や祖父母からそれぞれの外見的、内面的特徴を受け継ぐ。

…では受け継いでいない私のような例は他にもあるのではないか…? そう考えたのだ。家庭教師の先生にも相談してみたが、ご存じないというので、次は書物に答えを求めた。

両親に魔力があって、子供にそれが遺伝しないことがあるのかと手に入る中で、沢山の本を読んでみたものの、一般に公開されている本の中にはそのような記述は無かった。

 …確かに平民はほとんど魔力を持たないのだから、そんな知識は必要ないだろう。

もしかしたら王家の者しか入ることができない王宮図書館になら魔力についての詳しい文献があるのではないだろうか? どうしても知りたい! と思った私はお父様に王宮図書館に入ることが出来ないかとお願いしたのだ。

グレイソン公爵家は現在の王家の親戚筋にあたり、現国王様の第2王妃様を輩出したブラインズ公爵家と並ぶこの国の権力者だ。

他国との外交もすべてお父様が取り仕切っている。

通常であれば国家の秘匿事項も含まれる書物を収めた図書館に入れるわけもなく、私の願いなどは一蹴されてもおかしくはない。

事実、第2王妃様ですら王宮図書館には入室を認められていない。…それほどに貴重な資料が保管されているのだ。

しかし私には魔力が無く、知りえた情報を悪用することはできないうえ、セオドア王子が熱心に国王様に訴えてくださったおかげで特例として使用が許可されたのだ。


『同い年のアメリア公爵令嬢と一緒に学び、互いに切磋琢磨することは私にとっても有益な物になりそうです。未来の王家繁栄のためにもぜひ許可をお願いします』


そう国王様に掛け合ってくれたというのだからセオドア王子様には感謝している。

…でも、向こうは剣も魔法も優秀な王子様なのです。

いくら年齢は同じでも、魔力も無ければ魅力も無い私と競っても切磋琢磨にはならなそうですが…? まあ、おかげさまで王宮図書館が使えるようになったのでありがたいですが。

そんなわけで、週に1度だけの約束で私は王宮図書館に通い、セオドア王子様と勉強会をしていました。

図書館には王家の方々しか入室できないように特殊な魔術が施されているため、家庭教師の先生も入ることはできません。

そのため王子様は先生との勉強を終えた後でしか図書館に来ることが出来ないのです。密かに調べ物をする私には幸運でした。

王子様が王宮図書館にいらっしゃるまでの僅かな時間の中で、私は魔力の遺伝について今も調べを進めているところだったのにっ‼


 そんな中での婚約…‼ 問題の解決もみないままに私は嫁がなければならないのでしょうか…?

 口惜しさにベッドに突っ伏して大泣きしていると、お母様が抱きしめてくれました。


「アメリア… そんなに泣かないでちょうだい。今はまだ婚約だけなのだから、もしかしたらセオドア様の気が変わられて破談になるかもしれないわよ?」


 …え…? 破談…?


「そうだね。他国の王女との婚儀が国家外交で必要になったり、他の女性に心変わりすることも… まぁ… 無いとは言えない… かな?」

…そう言われると、私に魅力が無いから成人するまで王子様の気持ちを繋ぎとめるのは難しいと言われているようで、ちょっと釈然としませんが… その可能性もあるのか。


「そうそう、お嬢ちゃん程度の魅力ならあの王子様もすぐに心変わりするから泣くな」


 …存在を忘れていました。そういえばいましたね、この赤いヒヨコ…。


「うるさーい‼ 元はといえばあんたが話に割り込んできたせいでややこしくなったんじゃないの‼ この馬鹿ヒヨコ!!」


「見えているくせに俺様を無視するからだろうが、この馬鹿娘が‼」


 喧々諤々とヒヨコと喧嘩する娘の姿にお母様は呆れたように笑いました。


「元気が出たようで安心したわ。…それで、そちらの赤いヒヨコさんはどなた? エインセルさんのお友達の精霊様かしら…?」


 こいつが精霊…? 茹ったヒヨコじゃなくて…? 驚く私にお父様が言った。


「あの… さっきから二人が話しているヒヨコって… どこにいるんだい?」


 えええ⁈ もしかして、お父様にはヒヨコの姿が見えていないの…?


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