58 王宮図書館でかくれんぼ
※今回は完全な茶番回です。読まなくても本編には影響ありませんので、二人のイチャイチャに興味の無い方は飛ばしてください。
「あの…セオドア…私、お勉強をしたいのですが…」
「うん、ちゃんとこの国の未来の為にも学ぶことは大事だよね」
「ですから…あの…下ろしていただけませんか?」
「それはダメ。ちゃんと集中して学習を続けて…?」
…ここは王宮にある図書館です。王族専用のため、他の方が入って来るのは稀。
…だからこそ集中して国の歴史や今後の国の在り方などを学べるから一緒に勉強しよう…とセオドア様に誘われてここに来たはずなのですが…。
私は何故か、セオドア様に後ろから抱えあげられて、彼の膝の上でお勉強をさせられている状態なのです。
…これって婚約者としては普通の行為なのでしょうか?それともセオドア様がおかしいのかしら…
あまりにも経験値の足りない私には正解が解りません。
誰かに助けを求めたくても、誰もいない図書館で私は途方にくれていました。
「私、ドレスを着ていますし、重いです。…そろそろセオドアの足がしびれてしまうと思うので下ろして頂けますか?」そう言って下りようとしても、腰にガッチリと手を回して掴まれているので離れることは出来ません。
「大丈夫。アメリアは羽のように軽いから…。それにすごく素敵な匂いがして私も学習が捗るんだよ」
嘘ですわね⁈羽のように軽い訳がありませんし、大体セオドア様は私を抱き上げてから本を1頁も読んでいないではないですか⁈それに香りをかぐのも止めてください!
「ほら?私のことは良いから早くお勉強して。アメリアが未来の王妃になるためにも学習は必要なんだからね」と私の髪に顔を埋めるのです。…ううう恥ずかしい…。
…もう、文句を言っても仕方ないようです…集中、集中…。
「ああ…アメリアの香りって本当に安らぐな…首筋にキスしてもいい?」
…こんな状況で集中できるわけありません‼
恥ずかしさに身もだえしながらも頑張っていると「ああ、面倒なやつが来たみたいだ。残念だけれどアメリア下りて?」とセオドア様が私を離してくださいました。
「どうなされたのですか?」ホッとしながら聞くと、「うん、ちょっと見つかると面倒だからこちらへ来て」と禁書庫のある奥へと連れて行かれました。
沢山の本が並ぶ本棚の一角に隙間があり、そこに入る様に促されます。
「…ちょっと狭いけれど、ここに隠れよう。見つかるのは危険な相手だから絶対に声を出さないでね」
そう言うと向かい合わせにお互いを抱きしめた状態で隙間に二人で並んで立つことになりました。
訳が分かりませんが、きっとセオドア様が言うことに間違いはないはずです。
私は息を潜めて周りの様子を覗いました。
しばらくすると、セオドア様が仰ったように、図書館に誰かが侵入してきた気配がします。明らかに誰かを探している様子…もしかして刺客でしょうか?
ドキドキしていると、首筋に暖かい物が押し付けられました。ピリッとした感覚が走り、私は慌てて声を堪えます。
「セオドア様…何を…」
そう言いかけると「フフ…アメリアがあんまり可愛いから首にキスしたくなっちゃった」と妖艶にほほ笑みます。
「こんなに危険な時に何を…」言いかけた私の唇にキスを落とし「声、出したら見つかっちゃうでしょ?お仕置きだね…?」と深く口づけられました。
今までのような優しいついばむ口づけではなく、私の全てを貪ろうとする激しいキスに思わず体が逃げようと動きました。
「…逃げられないよ…こんな狭い所で動いたら危ないでしょ」
そう言いながら、私を強く抱きしめます。激しい口づけに頭の芯が痺れたようにボーっとします。
「もっといっぱい口づけしようか…」そう言うセオドア様に頷きかけた時、「こんな所に隠れていたのか‼」と声がしました。
「…ジュード…?どうしたの?」
我に返り、私は唖然として彼を見つめました。
「王宮の政務が終わって、アメリアが図書館に来ているって聞いたから一緒に帰ろうと思って探しに来たんだよ…まさかこんな所に隠れているとは思わなかったけどな」
ジュードの言葉に首を傾げます。
「…図書館内に刺客がいて危ないから隠れたんですよね?刺客はもういないのですか?」
私の言葉を聞くとジュードが「そういう事か…」とセオドア様を見つめました。
「もう、刺客はいないし、安全だから出て来い。そこにいる方が危ないだろ?」
…そこにいる方が危ないっていうのはどういう事なのかしら…?セオドア様が守ってくれていたのに…?
「こんなに危険なやつがいたんじゃ、おちおち一人で王宮に行かせられないな。明日からは俺も一緒についてくるかな」
「おや?王宮は国で一番安全な所ですよ?ましてや彼女には私が付いているんだから危険なんかあるはずもない。ジュード、君は自分の勉強をしっかりやった方が良いんじゃないですか?」
「いやいや、危険な猛獣に可愛いうさぎが食べられたら困りますからね。彼女は無防備すぎるからしっかりと見張らないと」
「フフフ…そんなに過保護だと彼女が迷惑がりますよ?それに婚約者の立場の私が手を出しても何の問題も無いはずですが?」
「やっぱり手を出すつもりだったんだろうが‼まだ婚約者なだけで、婚姻していない以上は認められませんから‼」
「…ジュード…キミ、執念深いって言われませんか?」
「お互い様です。セオドア王子様は執着が激しいって言われませんか?」
二人は仲良く話しているけれど、私にはほとんど意味が解らなかった。
離れて育ってもやはり兄弟だから打ち解けるのも早いんだろうな…私はひとりっこだから少し憧れます。
二人の喧嘩はまだまだ終わらなそうだけれど、仲直りしたらきっともっと仲良くなるんだろうな…そう思い二人の喧嘩を微笑ましく感じるアメリアだった。




