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51 ジュードの過去

目が覚めると、アメリアは王宮の私室に寝かされていました。

一瞬自分が何処にいるのか分からず周りを見渡すと、セオドアや、ジュード、四大精霊達の他に精霊王様や両親までもが部屋に勢ぞろいしています。

みんな無事だったのね…思わず胸をなで下ろしました。


「では、君はアメリアが幼い頃に一度だけ会った、ただの通りすがりの人なんだよね?」


セオドア様がなんだか棘のある声を出しています。


「ああ、でもその時にアメリアが『もう一度会えるおまじないだ』って言ってこのイヤリングを片方くれた幼友達の仲だけどね?」


相対するジュードの声も棘を含んで聞こえました。…二人は一体何を言い争っているのでしょうか…?


「みんな無事だったのね…本当に良かったわ…」


 アメリアの声に全員が慌ててベッドの周りに集まってきました。


「アメリア目が覚めたんだな、本当に良かった‼お前、俺に抱き付いたらいきなり気を失ったんだぜ。体は大丈夫か?」


 ジュードが心配そうに私の顔を覗き込みます。


「抱き付いた…のではなくて、倒れこんだだけに見えましたけれどね?」


 …セオドア様?どちらでも良いことに突っ込むのは止めてください…。


 それにしてもライオスの依り代としてジュードが利用されていたとは夢にも思いませんでした。王宮ですれ違っても全く気付かない程、ライオスは気配を隠すのが上手かったのでしょうか。

 …ジュードは打撲と軽い傷だけで、依り代にされていた後遺症も恐らくは無いだろうと医師から聞かされ安堵します。

 ジュードはあれから起こってしまった自分の過去をゆっくりと話してくれました。


 彼はアメリアと会った数日後、ライオスと言う名の老人に声を掛けられました。

 その老人はかつて王宮で勤めていたメイドを探していて、様々な人物にその行方を尋ね回っていたようです。

 金払いも愛想も良かったので、町の人々が彼に打ち解け、様々な情報を打ち明けるのもすぐでした。彼はそこでブラインズ公爵とも出会ったのかもしれません。

 最初は彼の目的が分からず、警戒していたジュードも「かつて王宮で勤めていたメイドの忘れ物を届けるように仕事を依頼されたから行方を捜している」というライオスの話を信じてしまいました。


「俺の母親も昔メイドとして王宮で働いていたことがあるんだよ」


 ライオスの表の顔に騙された彼は、ウッカリ口を滑らせました。母から決して外では話してはいけないと口止めされていたのに…。

 それを聞いたライオスはジュードの母親の話を詳しく知りたがりました。

 そして、母の名前や勤めていた時期を知ったとたんに態度が豹変し、彼はそのままライオスの下町での隠れ家へと攫われてしまったのです。


「やはりお前があの憎き国王の隠し子であったか…フフフ…私の生贄と器が同時に手に入るとはな。今日はツイている…」


 ジュードの命を盾に母親を呼び出すと、ライオスは【不老不死の秘術】を使いました。

 ジュードの体を器として、自分の精神体である【魂】を彼に移し替えたのです。…その時からジュードはライオスとして仮の人生を生きることになりました。

 【不老不死の秘術】の生贄として、ジュードの母親の命が使われたため、母親はそのまま亡くなったそうです。

 亡骸も元々ライオスの器であった老人の体も全てライオスによって塵にされました。…後片も無く…。

 ただ、【不老不死の秘術】によりジュードの心身の全てを自分の手中に収めたつもりのライオスでしたが、一つだけ誤算がありました。

 アメリアが、ジュードに与えた精霊のイヤリングの加護のせいでジュードの精神体までは消すことが出来なかったからです。

 イヤリングを外そうにも、穢れた魂のライオスには精霊の塊であるそれに触れることさえできず、 仕方なく彼は封印の仮面を被りイヤリングに宿る精霊の存在が誰にも気づかれないようにしていたのです。…いずれ訪れる復讐の時をじっと待ち続けながら…。


 精神体のジュードは、ライオスが行った悪事も全て見て、知っていました。

 それは全て自分の体が行っている非道の行為だったから…。

 すでに抗うことのできないジュードにとって、過去に会った少女アメリアは希望だった。…もしかしたら自分に気が付いてくれるかもしれない…そんな儚い希望…。

 彼女が自分の前に第1王子の婚約者として現れた時にも、ジュードはすぐにアメリアだと気が付いた。

 以前会った時とは髪も目の色も変わっていたけれど、変わらない笑顔に直ぐに分かったのだ。

 美しく成長していく彼女がセオドアにほほ笑む姿を見るのは辛かったけれど、そこにいてくれるだけでジュードは幸せだった。

 自分の希望が幸せであり続けてくれるだけで。

 だからいつか、この呪いが消える日が来た時には笑顔で再会しよう…そう心に誓った。

 それだけが、闇に閉ざされたジュードの心の支えになっていたのだから…。


「つまり、ジュードは国王様の隠し子っていうこと?…もしかしたらあなたも王子様なの⁈」


 今の話を聞く限り、国王様がかつて愛し、一線を越えたメイドはその時身ごもっていたことになる。真相は判らないが、王位継承争いに子供を巻き込まないために王宮を去ったのかもしれない。


「ってことは…ジュード君も王位継承権を持つってことかい…?」


 お父様の言葉にセオドア様も「恐らくは」と頷きました。


「ライオスは王家を憎んでいた。そのライオスが、国王の隠し子を見つけて、自分の器として使い、苦しめようとした可能性は十分にありますからね」


 ライオスは余程オールヴァンズの王族を憎んでいたのでしょう。ジュードの命が助かって本当に良かったです。…お母様は残念なことになりましたが…。


「これでこの国に蔓延っていた【穢れ】は全てを無に還すことが出来た。アメリア、貴方のおかげだ…感謝する」


 精霊王様の言葉にふと、私は聞きたかったことを思い出しました。


「精霊王様…オールヴァンズを救っていただきありがとうございました。最後に一つだけお聞きしたいことがございます」




感想を頂きありがとうございます。…すごく鋭い考察!今回出てきたジュードがその人…かもしれません!頑張りますので、引き続きよろしくお願いします。


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