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38 禁書

何故か、なし崩し的に王宮にお泊りすることになってしまいました。

…ああ、なぜでしょうか、セオドア様がものすごく嬉しそうに見えます。


「朝からアメリアに会えるなんて、まるで婚姻を結んだみたいだ…いっそのこと婚約者なのだし、王宮に住めば王妃教育も捗るんじゃないかな~♪」


なっ‼まだ婚約だけの身で王宮に住んで良い訳がありません‼何を考えているのでしょうかこの美形の王子様は⁈

横目で睨んでも全然気にしていない様で「あーあ、いいアイデアだと思ったのに」とニコニコしています。何方か、この王子様の暴挙を止めてください‼


 私専用に設えられた部屋に案内しようとしていたセオドア様に国王様が「婚約者殿にあんまりしつこくするなよ?余の様に逃げられるぞ?」と仰って下さったからか、無事に両親と同じ客間に案内して貰えました。…一安心です。

 フェイも「王宮の夕食って何が出るんだろうな?楽しみだなー」とはしゃいでいますし、これはこれで良かったのでしょうか。


 私たちは王族の方々と一緒にダイニングルームで夕食を頂くことになりました。

 マナーを忘れないようにドキドキしながら頂いていたので、ディナーの味はほとんど覚えていませんが、国王様が気になることを仰いました。


「ライオスがオールヴァンスの王族の子孫を恨んでいると言っていたが、それは英雄のおとぎ話が関係しているのだろうか…?」


 私たちが調べた文献には英雄がこの国を作ったことや子孫に魔力があったことしか書いてありませんでした。…通常であれば、英雄は国一番の勇猛な戦士であり、称えられるべき人物のはず。

 英雄が恨まれるおとぎ話などと言うものが存在するのでしょうか?

 国王様にそれとなく聞いてみると、


「…あれは王族にしか読むことが出来ない禁書なのだ。…でも、あれが真実だとしたら、お前たちには知る権利があるな。よろしい、夕食後王宮図書館に来なさい」


 私とセオドア様、リアム様に向かってそう仰いました。

 内容もそうですが、王宮の図書館におとぎ話が存在しているのでしょうか?非常に気になります。

 フェイとルーフィーにも目配せして、一緒に大所帯で向かうことになりました。


「全員揃ったようだな…」


 夕食後、お茶を頂いた私たちは早速王宮図書館へ足を運びました。

 図書館の扉の前では既に国王様が私たちの到着を待っていました。


『ギーギギ…』夜の闇に手元の灯りがユラユラと揺れて見えます。いつもは気にならない扉の開く音までが不気味に聞こえるのが怖いです。


「アメリア、怖いなら手を繋いであげるよ?」暗闇にほのかに浮かび上がるセオドア様がほほ笑まれます。そこに被せるように、リアム様が「えー!アメリア、僕は怖いから、僕と手を繋いでよ―!」と可愛らしくせがまれました。


 勿論怖がるリアム様の手を取り、私は先へと進みます。…後ろから不穏な視線と「チッ‼」という舌打ちが聞こえた気もしますが、きっと気のせいでしょう。

 フェイとルーフィーの『セオドア…女は押しすぎると引くものよ!時には黙って押し倒せ』というよく判らないアドバイスが聞こえてきましたが、それもきっと気のせいです。


 先に歩を進められた国王様が、図書館の最奥にある本棚の前で歩みを止められました。

 周りにはどこにも進むところなどありません。

 国王様が何事かを詠唱され、本棚に手を差し伸べると、いきなり本棚が横に動き、小さなくぼみと魔法陣が見えました。もしかしたら王家の隠し扉でしょうか?

 そのくぼみに国王様が右手を差し出すと、途端に魔法陣が反応したように光り出します。

 その光は何度か瞬きするように点滅すると、ゆっくりと消え、後にはまた静寂と暗闇が戻ってきました。

 国王様はくぼみの中に収められていた2冊の本を手に「ここは賊が入ったときに反応するように魔法陣の守りが厚く王族以外には危険だ。灯りも無いから、あちらへ戻ろう」


 そう仰ると、私たちがいつも勉学に使用している場所へと促されました。

 図書館の灯りが灯ると柔らかな灯りにホッと胸を撫でおろします。知らぬうちに緊張していたのでしょうか?

 国王様が手にして戻られた本は【オールヴァンズ王国の歴史書】と【英雄の恋物語】の2冊でした。…英雄の恋物語…?まさかそんな本が出て来るとは予想もしていなかったので、意外でした。


 早速セオドア様が【オールヴァンズ王国の歴史書】を開かれます。

 そこには、私たちが知る歴史ではなく、フェイの言ったとおりのことが書かれていました。


【500年前に英雄がこの地を他国の脅威から守り、オールヴァンズの国を築いた。

 英雄は魔力を使い、精霊の御霊をこの地に縛り付けた。それは大いなる力であり、この地を豊かな大地へと導いた。

 …そして、400年後その時の国王が、戦争により疲弊した大地を肥沃な地へ変えるために新たな精霊の御霊をこの地に縛り付けた。

 それは精霊王の怒りをかい、御霊の力は呪いへと変貌を遂げた。

 精霊王の報復を恐れた国王は己の持つ魔力と縛り付けた精霊の御霊を使い、この地に他国からは干渉できない魔術をかけた。それが、この国の鎖国の始まりである…】


 読み終えたセオドア様も複雑な面持ちです。先祖である英雄が、この国を豊かにするために精霊の魂をこの地に縛り付けたというのですから。

 誰も何も言うことが出来ず、重苦しい沈黙が流れました。


 私はもう1冊の【英雄の恋物語】と書かれた本に手を伸ばしました。

 まるで絵本のような装丁の可愛らしい本です。なぜ、これが隠されていたのでしょうか?

 読み進めていた時、その理由が解りました。


本日2本目の投稿です。…毎日2本投稿していますが、多すぎますかね?

感想をお待ちしております。

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