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35 王の間 

私たちは【王の間】へと参りました。


まさか国王様にまでお目通りするとは思ってもみなかった私ですが、先ほどセオドア様から頂いたドレスのおかげで何とか体裁は整えられていると思います。本当に助かりました。


こっそりセオドア様に「本当に素敵なドレスをありがとうございました」と伝えると、

「今度は別のドレスも着てもらいたいな。アメリアに似合うと思って用意してあるから…ね?」と何だか、不穏な笑顔で見つめられました。

うん…これ以上は怖いので聞くのを止めましょう。


【王の間】には、既に国王様と王妃様が玉座でお待ちでした。

私たちはカーテシーをし、改めて、ご挨拶をさせていただきました。

「この度は、リアム王子の魔力暴走を止める働きを見せてくれたようだな。おかげで、王宮外への被害も最小限に食い止められたと報告を受けている。大儀であったな」

国王様から労いのお言葉を頂き、私たちは顔を伏せたまま、より深く一礼しました。


「一同、面を上げよ」そう言われ、国王様を見上げると、国王様は微笑みながら仰いました。


「此度の働きは、国の脅威を取り去ったという意味でも大きな功績である。礼を言うぞ、アメリア」


 …もったいないお言葉です。

 私はもう一度頭を深く下げ、「ありがとうございます」と言いました。


「此度、リアムが魔力暴走を起こした陰にはライオス・アーロ・テイラー宰相による精神操作があったと聞いている。その術はもしかしたら【人心掌握の秘術】では無いかと余は思うのだが、心当たりは無いか…?」


 国王様から突然突き付けられた言葉に私たちは驚きを隠せません。…国王様も【人心掌握の秘術】のことをご存じだったとは‼ 

 私たちの顔を見て、国王様は何度も頷きました。


「その表情は、あの秘術のことを知っている顔だな。…余に話してみなさい」


 私たちは、今までにあったこと…セオドア様の魔力暴走に始まり、今回のリアム第2王子様の魔力暴走、ダリア王妃様殺害事件の真相等を全てお話ししました。

 国王様も、オリバレス第2王妃様も静かに耳を傾けていらっしゃいました。

 私たちの話が終わると、国王様は長い長いため息を吐き出されました。


「今度は余が話す番だな」そう仰ると、私たちが知らなかった驚愕の事実をお話になられたのです。


「まず、ライオス・アーロ・テイラー宰相についてだが、そのような人物はこの国に存在しない」


 …驚きました。王宮というのは胡乱な人物が入り込まないように、徹底した人物の洗い出しが行われます。犯罪歴や家柄なども厳しく調べられ、それをクリアした人物だけが王宮の深部に入ることが許されます。…それをどうやって潜り抜けたのでしょうか?


「そもそも、ライオス・アーロ・テイラーを事務次官として推薦したのが、ブラインズ公爵なのだ。」

 ブラインズ公爵は自分が運営する領土の秘書として彼を抜擢し、重用してきた。

 かなり優秀な人材だったようで、領土の税収も倍にし、領民の信頼も厚い男だったと聞いている。

 ブラインズ公爵が、ライオス・アーロ・テイラーを連れてこの城にやって来る少し前に不審な事故があり、若き事務次官が亡くなってしまった。

 そのため、王宮では仕事が滞っており、ブラインズ公爵の推薦ということもあって、特に詳しい人物調査も無いままに王宮深部での仕事が認められてしまったというのだ。


 あまりにも杜撰だが、ここでバレても大したお咎めも無いし、上手くいけば自分の思い通りに操れるスパイを王宮に送り込めるのだから損はないと踏んだのだろう。

 そして、その目論見は予想以上に上手くいってしまった。

 ライオスという男は非常に切れる男で、王宮の様々なトラブルも見事な手腕で解決するだけの知性と冷静さを兼ね備えていた。

 そのため、実績を積み重ね、ついには宰相という立場まで手に入れてしまったのだ。


「さすがにブラインズ公爵もそこまでは期待していなかっただろうがね」


 国王様が自虐的に笑う。それは信頼していた人に裏切られた、悲し気な笑いだった。


 そして、あの悲劇の事件が起きた。

 ダリア第1王妃が殺害されたあの事件が。

 恐らく、【人心掌握の秘術】と【不老不死の秘術】のことをどこかで知ったライオスがブラインズ公爵にそのことを伝えたのだろう。

 そして、金品を盗んだ罪をメイド長に着せ、ダリア王妃と共に殺害。…二人の命を生贄に【人心掌握の秘術】と【不老不死の秘術】を手に入れることが出来る。


 その上、ブラインズ公爵は娘のオリバレス妃を王妃に据えることも出来るのだ。

 しかし、最愛の人、ダリア王妃を失った国王の悲しみは深く、一時は食事も取れないほどに窶れてしまったと聞く。

 ここで、アメリアは思い出した。『半年後に国王様は気が変わられて、オリバレス第2王妃と婚姻を結んだ』これは、その時にライオス宰相から国王様が心を操られたから起こったのではないか。

 悲しみに暮れる国王の傍に人がいないわけはない。愛する人の後を追おうと自らの命を絶つ危険があれば、尚のこと周りの目は国王に向いていたはずだ。


 もしかしたら、落ち着くまでの間、ライオスは国王が一人になるのを待っていたのかもしれない。

 そして一人になったその時、【人心掌握の秘術】が使われた…。


 そう考えに耽っていたとき、オリバレス王妃が突如口を挿んできた。


「まだ、国王様がお話し中ですが、私も今ここで皆さんにお話しておきたいことがございます。…過去の、私が知るライオス・アーロ・テイラーの話でございますわ」


 オリバレス王妃までライオス宰相と面識があったというのでしょうか?


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