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34 いつまでも帰れない…

まだ本調子ではないご様子のリアム第2王子様は『まだ、アメリアとルーフィーとお話したい‼』とごねられましたが、『我が儘を言うと、もうアメリアは来てくれないぞ』とセオドア様に説得され、渋々お部屋に戻られました。


 私は一人っ子なので、弟が出来たようで嬉しく思い「リアム様って本当に純粋で可愛らしいですね」とセオドア様に微笑みます。

 セオドア様は「アメリアにはそう見えるんだ…」とため息を吐かれ、「絶対に私と一緒の時にしかリアムの部屋に行ってはいけないよ?もうお互いに子供ではないのだから…約束してくれるね?」と仰いました。

 その笑顔が怖いですセオドア様…。

 私は素直に「はい、分かりました」と頷きました。もうこれ以上彼を刺激するのは自分の為にもやめようと思います…。


 私がいつまでもセオドア様のお部屋のベッドを占領していることを両親も気にしている様子です。

 勿論私も殿方の…ましてやセオドア様の普段お使いになっているベッドにいつまでもいるのは非常にソワソワしますし、恥ずかしいです。

 幸い、背中と腰以外は痛みも無く、体調も問題ないので隣室で王宮のメイドに支度を手伝ってもらい着替えをすることにしました。

 私が元々着ていたドレスは、リアム王子の魔力暴走の時に破れたり、汚れたりしていて使い物になりません。

 どうしようかと思っていると、メイドの一人が大きな箱を持って現れました。


「こちらは、セオドア様が、アメリア様の為にご用意されたドレスになります」


 そう言うと、箱の蓋を開けてくれました。


「まぁ…なんて綺麗…」母が思わず絶賛したのも無理はありません。

 それは本当に美しいドレスでした。

 淡いグリーンを基調としたドレスに蝶が白いレースで刺繍されています。

 胸元にも蝶が舞い、縫い付けられたビーズやスパンコールで蝶を羽ばたかせるように装ったデザインが美しく、素晴らしい意匠でした。


「これを…セオドア様が…?」私は思わずドレスに見とれ、ため息が零れました。


「はい、未来の王妃様の為にとセオドア様がご用意されておりました物の一着でございます」

 …メイドの最後の一言に何か引っかかるものを感じます。


「用意した物の一着…他にもあるのですか?」恐々と聞いた私に、メイドは嬉しそうに頷きました。


「はい。アメリア様の為にセオドア様は既に数十着のドレスとお休みになられるためのお部屋をご用意されております」


 …用意周到過ぎませんか? 私はお飾りの婚約者 …いえ、そう思っていましたが、この過度な用意を見るに、もしかしたらセオドア様は私を本気で王妃にするつもりかもしれません。

 そうでなくては、ドレスに部屋まで準備が良すぎるのはおかしいでしょう?

 私はお母様にこの名推理をお話ししました。

 てっきり驚いてくださると思っていたのですが、「まぁ⁈アメリア…あなた今気が付いたの…?」と言われ、初めて自分が鈍かったことを気づかされました…。


 それにしても、ドレスにお部屋まであるとは…そこで更に私は気が付きました。

 王宮にお部屋がご用意されているなら、なんで私が気を失ったときにそこに運ばれなかったのかということに‼

 …まさか、セオドア様…ご自分のベッドに私を寝かせたくて部屋へ連れ込んだ訳ではありませんよね? …セオドア様は紳士ですよね…?


 これ以上この問題を突き詰めるのは恐ろしいので、私は考えるのを止めました。

 きっと、結婚するまでお部屋のことは秘密にして私を驚かせようとしたのでしょう。

 きっと…ええ‼ そうに違いありません‼


 私は自分を無理やり納得させると、頂いた蝶のドレスに着替えを致しました。

 それは見た目よりも軽く、サイズもピッタリでした。…ピッタリなのが少し怖いですけれども。

 お母様も「セオドア様の貴女への想いが少し…重いわね…」と遠い目でダジャレを言っていました。…私もそう思います。


 着替えを済ませ、セオドア様の私室に戻るとセオドア様が嬉しそうに駆け寄ってきました。

「アメリア、とても似合っているよ‼私の思った通りだ」

 とても嬉しそうに褒めてくださいますが…何でしょうか? さっきの重い想いを知ってしまった私は素直に喜べません。 

 それに、こんなに素敵なドレスがあと数十着… 私には着こなせる自信がありません。


「あら、似合っているわよ。アメリア」とルーフィーが褒めてくれれば「うん、いつもよりマシだな」とフェイも相槌を打ちます。…マシというのは褒めてくれているのでしょうか?


「さぁ、長居してしまったし、そろそろお暇しよう‼」


 お父様が急に張り切っていますが、もしかしたらご自分だけ精霊が見えないと仲間外れにいじけていたから早く帰りたいのでしょうか。

 確かに自分だけ見えない存在がいるというのは寂しいかもしれませんね。


「お父様の言うとおりですわね。長居してしまい申し訳ありませんでした」


 私が言うとお父様は「アメリア…なんて良い子なんだ…」と涙ぐまれています。

 あの、王宮で涙ぐむのは威厳を無くしますわよ?お家まで我慢して頂きたいものですわ。

 セオドア様は名残惜しそうに私を見つめると、


「仕方ないな… また明日おいで? フフ…二人っきりで勉強しようね …待っているから…ね?」と妖しく微笑まれました。


 もう‼私がセオドア様の想いに気が付いたことを気づいていらしたんですね⁈

 そんなに見つめられたらドキドキしてしまうではありませんか‼しかも二人っきりと強調するところが確信犯です‼ズルいのに… 嫌いになれないのが… 悔しいです。


 二人で見つめあっていると、後ろから「ゴッホン、ゴホッゴホッ、エッヘン」とわざとらしい咳が聞こえました。

 お父様ったら…。言われなくてももう帰りますわよ。

 帰宅を伝え、馬車を用意してもらおうとした時、執事が駆け込んできました。

 …嫌な予感がします。


「グレイソン公爵ご夫妻、及びアメリア公爵令嬢様に火急のご用件がございます」

 ああ…やっぱり…そんな気がしていました。


「ただ今より、国王様が、皆様方と謁見したいと【王の間】でお待ちでございます。直ちにお越しください」


 今度は国王様に呼び出されました。…私は一体いつになったら帰れるのでしょうか…。


段々とセオドアの粘着が書けて楽しくなっております。もう少し続きますので、お読みいただけたら幸いです。

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