33 二人の関係
アメリアは先ほど誕生したばかりの精霊に見惚れていた。
淡くエメラルドに光る羽も、髪も全てが美しい。人間の少女に羽が生えたような姿だが、全身からほのかな光を放っている。
「なんて綺麗なの…」
思わず呟くと、シルフィードがニッコリとほほ笑んでこちらを見た。
「フフフ…ありがとう。私達、風の精霊は風を操り、様々なところへ幸せを運んでいく。貴方たち人間にとっても近しい姿だから美しく感じるのかもしれないわね」
そう言うと『貴方たちの名前を教えて頂戴』と自己紹介を促される。
全員の名前を聞くと、シルフィードはまず、火の精霊であるフェイを見た。
「お久しぶりね?フェニックス?相変わらずお元気そうで何よりだわ!貴方がこちらの世界に来たって聞いて、私がどれほど心配していたか分かっているの?」
「おお‼シルフィードも元気そうで何よりだ。まぁ、オールヴァンズ王国に生まれたのは偶然だけれど、ここで再会出来たんだからいいじゃねぇか」
「何を言っているのよ!私がどれだけ貴方を探したと思っているの?もう…会えないかと思った…」
「シルフィード… すまん…心配かけたな…」
「ううん。私もいきなり怒鳴ってごめんなさい…貴方に会えてホッとしたら思わず…」
「お前の気持ちはわかっているさ、大丈夫だ」
「フェニックス…」
んんん⁈聞いている周りの目が点になる。このやり取りはもしかして…。
「ああ、俺らは元夫婦だからな…てへ☆」
えええーっ⁈この美しい風の精霊と、不細工…いや火の精霊が夫婦⁈
皆はどよめくが、シルフィードは夫に久方ぶりに会えた喜びを隠そうともせず嬉しそうにフェイに寄り添った。
「うふふ、まさかオールヴァンズ王国で会えるとは思わなかったけれど、フェニックスってば昔から…」
「あ、俺様の今の名前はフェイだ。今度からフェイって呼んでくれ」
何か言いかけたシルフィードの言葉を遮ると、フェイが空気も読まずに言った。
こういうところ、彼はブレない。
「…フェイって何よ? 誰が、勝手に彼に名づけをしたのよ⁈」
ものすごい顔で一同を睨みつけるシルフィード…正直怖い…。
おずおずとアメリアが、名づけの意味を知らずに付けてしまったことや、今までの状況を説明すると、シルフィードはあっさり『そう、それなら仕方ないわね』とニッコリ笑った。…こんなに気持ちがコロコロ変わるのも風の精霊の特徴なのだろうか?
「それでね、フェイがこちらでお世話になる以上、私も傍にいるじゃない?」
んん?いつからそういう話になったのだろうか?
「フェイが公爵家にお世話になっているのだったら、私も当然そちらにお邪魔するわ。仕方ないから、私の名前も付けて良いわよ?素敵な名前にしてよね?」
…彼女の中では決定事項なのかもしれないが、名づけをするということはアメリアが風の精霊と契約して彼女を使役するということだ。良いのだろうか?
聞くと彼女は『勿論よ。フェイと一緒にいたいから、貴女の力になってあげるわ』とほほ笑んだ。
「それじゃぁ…ルーフィーとかは…どうかしら」ちょっと安直だったかしら…?
ドキドキして、彼女の神判を待つ。その時、風の精霊の周りから風が吹き、一瞬目もくらむ様な閃光を放った。風から森の匂いを感じると、ルーフィーはニッコリ笑った。
「うん、契約完了ね。私は風の精霊ルーフィー‼今日からよろしくね、ご主人様」
…何故かグレイソン家で王家の魔力を糧にする精霊を二人もお世話することになってしまったみたいだが、彼女たちはこのままで魔力を補給することは出来るのだろうか?
心配になり聞くと、フェイが『まぁ、余程力を行使することが無ければ大丈夫だろう』と答える。
確かに今まで、多量の魔力が必要になったのはリアム王子様の魔力暴走の時だけ…。
そこまで考えた時、ふいにセオドア様から魔力を注入するためだから…とキスされたことを思い出して赤面する。
思わずセオドア様を見ると『あ、思い出しちゃった?』といたずらっぽくウインクしてきた。
「フェイ…魔力の注入のためにはお互いに触れるって言っていたけれど…」
キスをしなければならないなんて、聞いていなかったです。もしルーフィーの力を行使するために魔力を注入するとなれば、リアム様ともキスするってことですか⁈
無理無理無理―‼ そんな破廉恥なこと出来ません‼
「ああ、あれな…うん。手を握る… とかでも良いんだけどな…」
フェイが気まずそうにチラリとセオドア様を見ます。早く言って欲しかった…。
でも、セオドア様はニッコリほほ笑むと私に言いました。
「…あの時は非常事態で急いでいたからね。でもアメリアの了承は得てから触れたし、問題ないよね?」
問題しかありませんわ!! ああ…これ判っていてやったんですね? だって、目が笑っています‼
しかも、あの切羽詰まった状況だというのに、随分と長くキスしていましたよね?
確信犯だわ…。
アメリアはガックリと肩を落とした。
「まぁ、チャンスがあったらまたするけれど…」小さく呟いても聞こえていますよ?
セオドア様って、見た目は爽やかですが、かなり危険な匂いがしますわ!危険な男ってこういう人のことを言うのでしょうか。
諦めながら、お父様に精霊2人をグレイソン家でお世話することを伝えます。
「えええ…見えないのに?…いい加減私も見えるようにしてくれよ。仲間外れ寂しい…」と渋々承諾してくださいました。




