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26 さあ、王宮へいざ出陣ですわ‼

王宮から『リアム第2王子様が魔力暴走中』との知らせを受けた、セオドア様は顔色を変えて、使者に問いかけました。


「死者やけが人は出ていないのか⁈ …国王はご無事なのか?」


「はっ‼国王様はご無事です。すでに危険の及ばない王族避難所に避難が完了しております。また王宮医術団がけが人の救護にあたっており、死者はいないとの報告であります。

ただ、リアム様の魔力暴走が凄まじく、けが人は多数出ているため、一刻も早く暴走を止めようと王宮警備隊が魔力安定術を行使しておりますが、暴走は更に勢いを増すばかりで、…このままでは市街地にも害が及ぶ危険性があります」


一息に言った王宮の使者も、服は破れ、所々に血がにじんでいる惨澹とした有様だった。必死に知らせに来てくれたのであろう使者にアメリアが水を差し出すと、驚いた顔でグラスを受け取り、彼は一息に飲み干した。相当疲れていたのだろう。


「ありがとうございます。…火急の場とはいえ、公爵令嬢様のお手を煩わせ、このような不躾な使者にまでおもてなしを頂き感謝いたします」


彼からは疲れと、不安が色濃く見えた。恐らく、王宮ではまだ被害が拡大し続けているのだろう。巻き込まれた者たちはどれ程の恐怖だろうか…。


「直ちに王宮へ行く!馬車ではなく馬の用意を‼」


セオドア様が、厳しい表情で命令を下されたその時「ちょっと待ちな‼」と頭上から声がした。


「フェイ‼ どうしたというの⁈」


まさか、この一大事にお腹が空いたとか言いませんわよね?アメリアの不安を余所に、フェイは器用にアメリアの頭から飛び降り、セオドアの肩に飛び移った。


「こんな時こそ、アメリアと俺様の出番だろうが‼ 王宮へ連れて行けよ‼」


「「何を言っているんだ(のよ)!」」思わずセオドア様と声がハモリます。


私なんかが、今王宮に行っても出来ること等ありません。却って足手まといになってしまいます。ましてやこんな小さなフェイに何が出来るというのでしょう。


「アメリアを危険な状況に伴うことは出来ない。勿論フェイもだ。 …大人しくここで皆の無事を祈っていてくれ」


セオドア様の言葉にフェイは「何も判ってねぇなあ、セオドアは」と呟きました。


「俺様が生まれた時のことを忘れたのか? そもそも俺様はセオドアが魔力暴走したせいで、生まれたんだぜ?…今回だって、アメリアが【ホワイトコア】で第2王子の魔力を吸い上げてやれば収まるんだよ。そんなことも判らないとはまだまだ…だな」


私はセオドア様と顔を見合わせました。


確かに私の【ホワイトコア】にある世界樹が魔力を吸い上げてくれれば、リアム王子様の暴走は収まるかもしれません。セオドア様の時の様に上手くいけば…の話ではありますが。…ただ、私の目に世界樹の姿が見えるわけでは無いので、いまいち不安は残ります。


「だから俺様が行くんだろうが。俺様が【穢れの魔力】の本流を見つけて、アメリアに教えてやるから、お前がそいつに直接触れれば世界樹が勝手に発動するからよ」


「いや、そんな危険なことをアメリアにさせるわけにはいかない…」


 セオドア様は苦しそうに息を吐かれました。私の身に危険が及ばないように考え、苦しんでいるようです。勿論、弟であるリアム王子様の身に危険が迫っていることも判っているはずです。


「行きましょう…セオドア様」


 私は、セオドア様に近づき、そっと手を握りました。その手は熱く汗ばんでいました。


「このまま、手をこまねいていては、王宮のみならず、市街地にも災害が及ぶかもしれません。貴族が存在する意義は、こういったときに民を守れる力を持つことではございませんか?」


「アメリア…でも、君の命を危険にさらすなんて」


「私は大丈夫です。フェイと共にリアム王子様の魔力暴走を止めてみせますわ。…それに、危険な時にはセオドア様が…助けて下さるのでしょう…?」


 ニッコリと笑うとセオドア様が、「勘弁して…ヤバい…」と上を向かれました。首元が赤いようですが、それでも私の手を握ったまま離しません。

 きっと、これから王宮で起こるリアム王子様の魔力暴走がどれほどの規模なのかを思うと不安なのでしょうね。

 大丈夫です。私が絶対にリアム王子様もこの国に住む人々も助けてみせます。

 …具体的にどうしたら良いのかは判りませんけれど。


 やる気に満ちている私を見て、お母様がおずおずと話しかけてきました。


「先ほどのお話だけれど、アメリアは…私たちを軽蔑するかしら?」


 ああ、この騒ぎで忘れていましたが、【穢れた魔力】と巻き込まれたお二人の過去の話のことですわね?


「お父様も、お母様もその時に最善と思える行動をなされた。それだけだと思います」


 私は答えました。


「愛するものを守りたい、家族を守りたい…それを否定することなんて誰にもできませんわ。非難されるべきは私欲の為にそれを利用しようとした方々だけ。私にとってお父様もお母様も敬愛するべき両親ですもの」


 そう、【人心掌握の秘術】と【不老不死の秘術】を手に入れるために、人の命を簡単に刈り取る人物。…ライオス宰相のことだけは絶対に許しませんわ‼


「帰ってきたら、また沢山お話ししましょう。もう隠し事なんてしないで下さいね」


 アメリアの言葉に母も父も頷いた。


「絶対、無事に帰って来るんだよ。そして、家族でゆっくり話し合おう」


 お父様の言葉にアメリアも頷き返しました。


「それでは王宮へ行ってきます‼」


 毎日の習慣のように、アメリアは笑顔で手を振りました。そう、いつもと同じように王宮で励み、無事に帰宅しようと願って。


「子供だと思っていたけれど、いつの間にか大人になっていくんだね…」


「そうね、お嫁に行くのもすぐかもしれないわよ?」


「えええ…セオドア様、それはもう少しがまんしてくれないかなぁ…」


 馬車を見送りながら、寄り添う二人の影は馬車の姿が見えなくなってもそこに佇んでいた。

 娘の無事を祈りながら…


いつもお読みいただきありがとうございます。

ご評価いただけますと、作者のモチベが上がります。よろしくお願いします。

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