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17 あれから2年経ちました

あの悪夢のようなお披露目の舞踏会から2年の月日が流れました。

私も16歳になり、成人の仲間入りをしました。少しは大人になれたでしょうか?


あの後、舞踏会での貴族たちから受けた厭らしい行為はセオドア様から父に伝わり、父が「私の娘になんてことを…。この国にいられなくしてやるからな…」と鬼の形相で呟いていたことが忘れられません。

その後、彼らは領地での税金不正問題や違法賭博などが次々と発覚し、身分をはく奪され、報いを受けたと聞きました。それ以外にも沢山の罪を犯していたようです。

これで、今まで泣き寝入りしてきた大勢のご令嬢が彼らの毒牙にかかることは無くなったと聞き安堵したのを覚えています。本当に良かった。

 私もあれ以来、なぜか貴族令嬢からの嫌がらせがピタリと収まり、王宮でも勉強に社交術のレッスンにと穏やかな日々を過ごせるようになりました。

皆様、お茶会でも親切にしてくださいます。王子様の婚約者効果でしょうか?

穏やかな毎日は嬉しいのですが、近ごろセオドア様の笑顔を見ると何だかお腹の上のあたりがギュッと痛くなるのです。お顔を見ると嬉しいのに、離れると寂しい気持ちも感じるなんて、私、ちょっと情緒不安定かもしれません。

さあ、今日も王宮でお勉強を頑張りたいと思います。


「おい! 支度できたのか? 早くしないとお菓子が冷めるだろう!」


焦れたようにフェイが怒鳴ります。王宮に何をしに行くつもりなのでしょうか。

実は、舞踏会の後で、フェイを見つけた私は怒るよりも安心して泣いてしまったのです。勿論、落ち着いたあとはフェイに厳しくお説教しましたけれど。

泣いている私に、困り果てたセオドア様が


「精霊様、私の最愛のアメリアが貴方を探して一人で途方に暮れていたのだ。今度は私も彼女を助けたい。そのために私にも姿を見せてはくれないか?」


そう言ったことで、状況が変わりました。


「これを王子に飲ませろ。定着すれば俺様の姿が見えるようになるかもしれん」


フェイから小さな赤い粒を渡されました。キラキラ光ってとても綺麗ですが、どんな効果があるのかも判りません。

でもセオドア王子様は躊躇もなくそれを飲み

「精霊様が、私にアメリアと同じ景色を見せてくれるために下さったのだから。私は信じるよ」と仰ったのです。

…私は正直不安でしたが、フェイの言ったことは本当でした。


数日後、いつものように王宮に向かった私を見て、セオドア王子様が

「その頭に乗っている小鳥は…? いやもしかして精霊様のお姿かな…?」と言ったときの感動は忘れられません。


「フェイの… 精霊の姿が見えているのですね?」


涙ぐみ感激する私に、微妙な表情でセオドア王子様は仰いました。


「うん… アメリアの頭の上に乗っている赤い小鳥? …らしきものなら…」


ああ、やはり誰が見てもフェイには精霊様の清らかな美しさなんて無いのだわ。

そう思いましたが、口にはしませんでした。

セオドア王子様も心得たもので、フェイにきちんと自己紹介なさると


「次回からは王宮の料理人が腕を振るったお菓子をフェイ殿の分も用意させますね」


そう言って大喜びさせたのだから、一目でフェイの性格…もとい食い意地を見抜く力はさすが王子様! と感心しました。


「ところで、私が飲んだあの赤い粒のような物はなんだったのかな?」


王子様の私室で、すっかり寛ぎながらお茶を楽しんでいる様子のフェイにセオドア王子様が尋ねました。確かに! 私も気になっていました。

あの薬をお父様やイオナにも飲ませてあげれば二人ともフェイの姿を見ることが出来るようになるかもしれません。定着すればと言っていたところをみると、万人に使えるものではなさそうですが。


「あれは…俺様の体液を固めた物だ。老廃物みたいなものだな」


 サラッとフェイが爆弾発言をしました。


「…体液というと、血液とか汗とか…尿とか…」


ああ、セオドア王子様、これ以上の追及はご自分のためにもお止めください。


「そう。ただし、俺様の火の属性に近いやつにしか使えない。まあ、王子さんはアメリアの近くにいるせいで、暴力的な穢れも薄まっているから効いたんだろうな。多分他の奴には効果無いと思うぞ」


セオドア様が口元を手で押えながら部屋を出ていかれました。何だかお顔の色も青ざめていたご様子…。お気の毒に…。


「フェイ‼ 貴方なんてモノをセオドア様に飲ませるのよ‼」


セオドア様がお気の毒で、つい強い口調でフェイを攻めてしまいます。

でも、フェイはお菓子を食べ続けながらこう言いました。


「見えるようになったんだからいいだろう?俺様の美しい姿が‼」


フェイの言うことも尤もです。美しいかどうかはさておき、元々姿を見えるようにしてくれと頼んだのは私たちの方なのです。しかも、そんな得体のしれないモノを確認もせずにセオドア王子様に飲ませたのは私なのですから…。


「フェイを責めないでくれないかアメリア」


いつの間に戻ってこられたのか、セオドア様が仰いました。


「元々は私がお願いしたこと。それにフェイ殿の姿を見ることが出来るおかげでアメリアとも同じ景色を見ることが出来る」


…セオドア王子様なんてお優しい。…でも、まだお顔が青ざめていらっしゃいます。


「私はアメリアと同じ景色を見て、同じように悩んだり苦しみを分け合う存在になりたいんだ。…君がそう言ってくれたんだろう?」


セオドア王子様はそう言うと私の肩に手を置き、そっとお顔を寄せられました。

…ふらついている⁈私に掴まるほど体調が悪いのかもしれません。

もしかして、先ほどの体液ショックが原因でしょうか?


「具合が悪いのでしたら、本日のお勉強会はお開きに致しましょう‼ 無理なさらないでお休みください」


そう言った私を、何故かセオドア様はため息をつかれながら見つめます。


「…なんで… 伝わらないのかなぁ…?」


「このお嬢さんは天然だからな。まぁ、気長に頑張れよ」


フェイはゲラゲラ笑いながらセオドア王子様に答えます。どういう意味なのでしょうか? 私だけが理解できないようで釈然としない気持ちになります。

…結局、その日のお勉強会は後日に延期されることになりました。


本日、夜にもう1本UPします。


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