1 私が死ぬって本当ですか⁈
初めての小説投稿のため、読みにくい点などありましたら、教えていただけると嬉しいです
「ハァ ハァ ハァここは…?」
荒い自分の呼吸で目が覚めるとアメリアはもうろうとする意識の中、部屋を見回した。
「もう…夜?私いつの間にか眠ってしまったの…?」
今日の昼間、王宮図書館に行ったことは覚えている。
そこで偶然セオドア王子に会った。何度か父に連れられ王宮に来ているため、幼馴染のような存在だ。まあ、身分が違うためアメリアはいつも礼儀作法を守って接していたが、公式の場でないかぎりセオドアは友人として気楽に話しかけてきていた。
身分のつり合いも良いし婚約者に…という話も周囲からは持ち上がっていたが、それはアメリア側の事情により現在のところ成立する見通しはたっていない。
セオドア王子はいつも激しい感情を表に出すことは無く完璧な王子と呼ばれていた。齢14歳にして帝王学を学んだ王族らしい振る舞いで、同い年にも関わらず、淑女とは言い難いわが身とはあまりに違うことに、いつもコンプレックスを刺激されていたものだ。
だが、今日の彼はいつもと違った。図書館の扉に体当たりする勢いで飛び込んでくると床に倒れこみガタガタと震え出したのだ。
彼の尋常ではない様子にアメリアは思わず彼に駆け寄るとその体を抱きしめた。
セオドア王子は抵抗しようとしたが相手がアメリアだと気づくと大人しくその身を預けてきた。セオドアは涙を流しながらアメリアに縋り付いていた。
しかし、その後の記憶はおぼろげだ。突然自身の体が燃えるような熱さと激しい頭痛にみまわれ、苦しさのあまり気を失ってしまった。意識を手放す直前、王子がひどく取り乱し、アメリアの名を呼んでいたことだけは覚えている。
そこからどうやって公爵家に戻ってきたのかさえ思い出せない。王子様のお手を煩わせてしまったのだろうか…。
色々考えたいことはあるが、熱で頭が回らない。…もしも流行り病だったら王子様は大丈夫だろうか。
不安と苦しさで涙があふれてくる。
…コンコン…扉が開くと、メイドのイオナとお母様に続き、初老の男性が入ってきた。
「アメリア、具合はどう? お医者様に来ていただいたのだけれど」
「ハァ… ハァ… お母様来ないで、病気がうつってしまうかも… 」
「ああ無理をしないでアメリア お医者様に見ていただけば直ぐに良くなるわ」
体が鉛のように重く、指一本動かせない私の症状をお医者様は無表情で診察していく。その顔は次第に険しくなっていき…最後に掌を私にかざすと魔法治療を試みた。
そして首を横に振ると重苦しい声でこう言ったのだ。
「お嬢様の症状は今まで見たことがない病です。現代魔法医学では治せない病の可能性が高い。高熱がこのまま下がらなければ今夜が峠でしょう」
「そんな… 娘が死ぬと… 」
お母様は真っ青な顔で悲鳴をあげた。
「国で一番の名医と言っていただいてはいますが、私でも今まで見たことがない病です。原因の特定や魔力抽出にも時間がかかる。お嬢様の体力ではこの高熱に耐えられるのは一晩が限度でしょう。それに伝染病の可能性もありますから皆さん部屋から出て下さい大変お気の毒ですが… 」
そう言うと医師はイオナを促し静かに部屋を出て行った。
「誰か! 他のお医者様を呼んで! アメリアの病気を治してくれるお医者様を! 」
悲鳴のような声で泣き叫ぶとお母様はその場に倒れた。気を失ったようだ。
慌てて執事やメイドたちがお母様を運び出すと部屋には静寂が戻ってきた。
そうか… 私は今夜死ぬのか… 実感はわかないが高熱に命を削られていることは分かる。
今朝まではいつも通り読書をしたりマナーの勉強をして過ごしていたのに…。
高熱に苦しみながらも私は何度かウトウトと微睡んだようだ。
どうやら真夜中に近い時間になっているようで、屋敷はひっそりと静まり返っている。
あの後も大勢のお医者様が入れ替わり立ち代わりしては、みんな首を横に振って出て行った。絶望の言葉だけを残して…。
この国は近隣諸国にくらべ魔法医学や医療術が発達している。
それでも誰も知らない、治せない病気なんて突然なるものなのかしら…。
もうろうとしながら考えていると自分が昼から何も食べていないことを思い出した。
空腹は覚えていないがのどが渇いた…。ベッド脇の小机からやっとの思いでベルを取り静かにゆらす。音はならないが、魔法のベルで専属のメイドにだけ用件が伝わる仕組みになっている。
しばらくすると、私付きメイドのイオナが水差しと着替えの夜着を持ってきてくれた。体を拭き清めてもらい、新しい夜着に着替えると悲観的な気持ちが少し落ち着いた。
起き上がることが難しいため、イオナに水差しから飲ませてもらうと冷たい水が体に染み込むようで、痛みも少しだけ和らいだ気がした。
「冷たくてとても美味しい… ありがとうイオナ」
寝台から微笑みかけると彼女は突然堰を切ったように泣き出した。
「今朝まではあんなにお元気でいらしたのに。不治の病だなんてきっとお医者様は勘違いなさっているんですわ。絶対お元気になられる! イオナはお嬢様を信じています」
そういうと私の手を強く握りしめた。その手はかすかに震えている。
そうか、彼女も私がもうすぐ死ぬかもしれないと恐れているのだ。幼いころからずっと傍にいた…メイドというよりは頼りになる姉のような存在。優しくて大好きなイオナ。
泣けてくる思いを顔に出さないよう、わざとおどけて見せる。
「フフ… ありがとうイオナ。そうね、元気になってあなたの作るベリーのスコーンを食べなくちゃね」
「そうですよ! お嬢さまの大好きな特製スコーンを焼きますから。早く元気になっていただかないと」
イオナは涙にぬれた瞳のまま握っていた手を離すとやっと笑顔をみせた
「あまり長いことお話しするのはお嬢様の体にご負担ですね。真夜中ですし、もうお休みください。御用があればお申しつけください。すぐに参りますので」
一礼し部屋を出ていくイオナを見つめながら、私は徐々に消えていく自分の命を感じていた。苦しむのもあとわずかなひと時… 。
※誤字報告ありがとうございました。最初からあるとか…アホですね…。




