四人の異世界生活-②
「『方円弾雨領域』」
声が響くと同時に、四人の前に現れたライオンのようなバケモノは身体に無数の風穴を開けて、絶命した。
空いた穴から絶命の証たる真っ赤な血液が止めどなく泉のように流れ出していた。
「死ん……だ?」
「身体中穴だらけとかエッグいのぉー SAN値チェックか? これ」
驚愕するそえーんと、バケモノの無惨な死骸にはしゃぐ卿。
ズリキチは森の奥を見据え、辺獄は妹……エホバノショウニンを抱き寄せていた。
四人の混乱を他所に、バケモノの後方から足音を鳴らして現れたのは──
「……思ったよりもデカかったな。なあ、怪我は無かっ──」
黒いコートを纏い、前髪の一房を白く染めた黒髪の──“女性”が、四人を見て言葉を失っていた。
おそらく。四人を視認する前は、警戒させないように柔らかい笑みを浮かべていたのだろうが、いざ四人を見た瞬間、笑顔が凍りついていた。
そんな女性を見て──ズリキチが興奮して詰め寄る。
「どうか! どうか! パイズリさせてくださいッッッ!!!」
「開口一番セクハラかよ。殺すぞ」
女性が冷え切った声で対応すると、土下座したズリキチのすぐ側に弾丸のようなモノが地面を穿ち貫く。
「うぉっ」
流石のズリキチも、眼前に致命傷級の攻撃を繰り出され、仰け反る。
その光景に茫然としていたそえーんが我に返り、慌ててズリキチの頭を掴んで地面に叩き込み、同時に土下座した。
「すいませんすいませんすいません! こいつは後でよーく言い聞かせますんで! 何卒……! 命だけは……! 命だけは……!」
「かぁー、そえーんくん命乞いとかみっともないなー。浅ましい」
「うるせえ! というか卿はなんでそんな平然としてんだ! あれか! ゲェジ特有のムーブか!」
「それよか、さっさと手ェどけろやそえーん」
「おめーは先ず謝罪をしろォ!!」
わちゃわちゃとじゃれるそえーんとズリキチ、そんな二人を見てヘラヘラしている卿。
そして辺獄はエホバノショウニンをきゅっと抱きしめていた。
混沌とした状況に、女性は確認するようにしてそれぞれを指で差していく。
「そえーんに卿にズリキチ、そんで後ろの方で痴漢行為してるのが……辺獄くんかね」
気だるそうなノリで一通り確認した女性の言葉に、ズリキチとじゃれていたそえーんが不思議そうに訊ねる。
「…………………あの、どちら様でしょうか」
そえーんの知る限り、こんなスマートでシックなノリに当てはまる女性など、キチガイだらけのTLには存在しない。
……自分で推測しておきながら何だか悲しくなってきたそえーんだが、今は置いておく。
そえーんと卿の名前を言ったのは、まだ良い。人の発言を良く聴き取っていたのだと理解できる。
だが、呼んでいないズリキチと辺獄の名前まで把握しているとなると、知っている人間は限られる。限られるのだが………
(わっかんねぇ……マジで誰だ……?)
そえーんはじーっと女性を見ながら、混乱しまくっていた。
そんなそえーんの視線に気付いた女性が後頭部を掻きながら、ばつが悪そうに名乗る。
「あー……俺だよ。しおみず」
その、名前に。
森に再び静寂が訪れ、風のそよぐ音が響く。
一拍空き。
「……は?」
「はぁ?」
「──はぁああああああっ!?」
ズリキチと卿は間の抜けた声を出し、そえーんは絶叫した。
その後。クエストを達成した四人は、ギルドから僅かばかりの報酬金を貰い、同じくクエストをこなしたであろう、しおみずとエホバノショウニンを引き連れて、四人が泊まっている宿屋へと戻った。
……しおみずが受け取った報酬は四人の倍以上あるという事実に虚無感が襲ってきたそえーんだが、気にしない事にした。
四人が泊まっている部屋に客人として招かれたしおみずは、四人と向かい合って椅子に座っており。
四人は各々床やベッドに座っていたが、エホバノショウニンが辺獄にくっつき、当の辺獄がデレデレになって話にならない為、一先ずエホバノショウニンはしおみずと並んで椅子にちょこんと大人しく座っていた。
妙に気まずい雰囲気の中、しおみずが口を開いた。
「……で? 何が訊きたいの。お前らは」
普段ならズリキチがバストのサイズ辺りを訊ねているが、先ほどの一件からして冗談抜きで命の危機というのを解っているために、四人ともそれなりに萎縮してしまっていた。
黙ったままというのもマズいと感じたそえーんが、恐る恐る挙手して訊ねる。
「えーと……気を悪くしないんで欲しいんですけども。しおみずくん……ちゃん?」
「ちゃん付けとか気色悪いから、別にいいよ呼び捨てで」
「じゃあ……しおみずくん。君のその格好は……女装とかそういう性癖の発露とかじゃあ、無いよね……?」
そえーんの記憶では、ドライな物言いと何故かハードでグロテスクなノリのエロゲーを純愛として認識している節があり、そして趣味でクソゲーを嗜んでいるという程度だが……目の前の某凄腕無免許外科医を女体化したような人とイメージがどうしても結びつかない。
「正真正銘、女だよ。ほら」
そえーんの質問に、しおみずは胸元のワイシャツのボタンを一つ外し、谷間を四人に見せつけた。
「! E寄りのDッッッ……!!」
「お前は、座ってろォッ!」
「ぐぉっ」
ガタッ、と立ち上がりかけたズリキチの足を、そえーんが神速の勢いで足払いを決め、すっ転ばせた。
「そえーんくんの癖に芸術点高い蹴りしよるなー」
「暴力沙汰なら外でやってくださいよ……エっちゃんが怯えちゃうじゃないですか」
「いや、辺獄くん。エホバノショウニンちゃん微動だにしてないで」
「えぇ……?」
卿の言う通り、エホバノショウニンはそえーんとズリキチのコントを無表情でじっと見つめていた。
しおみずは特に反応を示す訳でもなく、平然と胸元のボタンを留め直して、再び訊ねる。
「次、訊きたい事は?」
「あ、じゃあ猥から一つ。しおみずニキが言ってたデッドレイン? ての何なんや? チート?」
「チートだとしたらショボすぎだろ……アレは所謂、魔法ってヤツだよ」
「えっ、しおみずさん魔法少女? 似合わな……」
「自分でもどーかと思うけど、使えるんだから仕方ないだろ」
しおみず曰く。
この世界も異世界モノの定番に漏れず、魔法というものが存在しているらしく、転生者にはそれぞれの性格、行動原理、趣味嗜好に則った上で最も象徴となる要素が選択され、それぞれに固有の魔法が一つ『神』より与えられる……らしい。
『方円弾雨領域』もその内の一つとして数えられ、その能力は「範囲内にある大気中の水分を意識で操り、半自動的に攻撃できる」──要するに、水を使ったセミオートの攻撃が繰り出せるというもの。先程のバケモノに対しての攻撃やズリキチへの威嚇行為は、しおみずの射程範囲内で音速レベルの水滴が飛んで来た……との事。
「というかさ、俺からしたらお前らの方がよっぽど奇妙なんだけど。何だよタケノコやらナメコって。ふざけてんのか」
「いやあ……これに関しては僕らというか……えあくんのノリが原因というか……」
「は? えあくん? えあくんって……“お前の罪を数えろ”が決め台詞の仮面ライダー好きの?」
「うん、まあ……せやな。元は多分そうやったと思うで」
「それが今やこんな姿に」
しおみずの疑問に、そえーんと卿が濁すように答え、ズリキチはすっ、と黄色の凧形二十四面体──AIREAL・ケーアイをしおみずの前に差し出す。しおみずは眉間に皺を寄せてズリキチのAIREALを数秒眺めると、吐き捨てるように言い放った。
「………はぁー。なんというか、本当お前らってネタの源泉だよな」
「他三人はともかく、僕は断固として芸人路線じゃないんで」
「は? ナチュラルボーンコメディアンが何ぞ抜かしおったで、ズリキチ」
「色々とアレコレやらかしまくっといて“芸人じゃありません”は猿でも解るボケだよな。ツッコミポジのボケとかプロじゃないと滑り倒すぞ。そえーん」
「そんなことよりエっちゃんを早く私の膝上にカムバックさせてくれませんか」
「辺獄くんがめちゃめちゃ気持ち悪くなって殺意沸くから駄目」
「酷い!!」
辺獄の要求を一蹴したしおみずは、話が比較的通りそうなそえーんに訊ねる。
「俺も訊きたいんだけどさ、君らはいつ頃異世界に来たの?」
「昨日……には居たかな。それから──」
そえーんはしおみずに、四人の距離が開きすぎると致死ダメージの警告がゲーム的な表記で出てくる事、クトゥルフの館での一件等、これまでの経緯を話した。
そえーんの話を聞いていたしおみずは、神妙な顔つきになりながら少し考え込むと、改まってそえーんに訊ねた。
「確認だけど……本当に、神様とかそういうのには会って無いんだよな?」
「もし会ってたら真っ先にコイツらとの距離縛りについて猛烈に抗議してるよ僕は」
そえーんがうんざりした表情を浮かべながら、指でそれぞれ卿、辺獄、ズリキチを指し示す。その様子を見たしおみずは、深く溜め息を吐いて、残念そうに愚痴る。
「昨日来たばっかじゃあ、“元の”世界に帰る方法とかは知らねえよなぁ………」
「……え? 帰り方とかあるの?」
「かれこれ一年ぐらい前から色んな本漁って探してるけど、見つかんねえんだよな」
どうしたもんかね……と、しおみずが呟くと同時に、エホバノショウニンが小さく欠伸を漏らす。その光景に大変はつじょ……もとい興奮した辺獄に、しおみずが冷えきった声で『方円弾雨領域』と唱えると、辺獄の頬を水滴が亜音速で掠り、薄皮を切り裂いて血を滴らせる。
「……エホバノショウニン、だっけ? この子がもう眠そうだから、今日はお開きにしようか。じゃ、俺はこの子と同室で寝るから」
「ああ……もうそんな遅い時間か」
「ギルドからこの宿まで結構距離あったもんな。少女にはちとしんどかったか」
「あ、しおみずニキ、エホバノショウニン背負った感じとして胸の膨らみどう? 着痩せしてる?」
「ズリキチさんは何しれっとセクハラしてるんですか。ひっぱたきますよ。というか、エっちゃん寝かせるんなら私が適任じゃないですか。私の妹なんですし。ぶっちゃけエっちゃんと添い寝したい」
「変態二人は口閉じろォ!!」
そえーんが二人をビンタ(ズリキチはしゃがんで回避し、直ぐ左側に立っていた辺獄にはヒットした)しているのを尻目に、エホバノショウニンを静かに背負ったしおみずは、四人の部屋から出ていこうとし、部屋の入り口で止まって背中越しから四人に忠告する。
「何回か『方円弾雨領域』使ったから解ってると思うけど、勝手に部屋入ろうとしたら冗談抜きで頭ブチ抜くから。そのつもりでな」
しおみずは後ろ手で扉を閉めて、部屋から去って行った。
そえーんは深く溜め息を吐き。
ズリキチは「パイズリで抜きてぇ~」と気の抜けた声を上げつつ背中からベッドにダイブし。
辺獄は妹(便宜上)と離ればなれになったことに両手と膝をついて項垂れており。
そして卿はそんな辺獄をスマホのカメラ機能を使ってパシャパシャとヘラヘラ笑いながら撮影していた。
翌日。
初クエストの疲労も相まってぐっすりと眠り、起床した四人は隣の部屋に泊まっているしおみずを起こしに行く生け贄もといモーニングコール役をジャンケンで決め(一人負けしたそえーんに決まった)、命の危機を感じながらもどうにかしてしおみずを起こす。
宿の朝食を摂り、しおみずは四人の部屋の窓枠に頬杖をついて、宿屋前を眺めていた。
視線の先にいるのは──
「エホバノショウニーン、野球やろーぜ!」
「やきゅう?」
「あー、そこら辺の知識は無いのか。野球ってのは──」
「エっちゃんと外に出ようっていうから何かと思えば、頭でも打ったんですかそえーんさん。しおみずさんの魔法で頭の通り良くしてもらいましょうよ」
「──って事だから。そんな訳で辺獄くんボールな! エホバノショウニンちゃんはコレ持って辺獄くんが近くに来たら全力で振ればいいから」
「無視しないでくださいよナチュラルボーンコメディアン」
溌剌としたそえーんがエホバノショウニンに杖らしき棒を持たせ、ついでに来た辺獄の腕を掴み、ジャイアントスイングの要領で射出した。
「何やってんだアイツら……」
眺めていたしおみずはひたすらに困惑していた。やっている事はタチの悪い野球ごっこなのだが、何故この状況でやっているのかが皆目見当付かない。
……辺獄の言うとおり、頭でも打ったのだろうか。
しおみずは視線を三人から卿とズリキチに向けて訊ねる。
「なあ、お前ら何か聞いてるか?」
「いや? 特には」
ズリキチは風禍銃刀を様々な角度から眺めながら生返事で応え、ベッドに寝そべっていた卿はのっそりと立ち上がり、窓から顔を出して眼下の三人の野球ごっこを数秒眺めると、気怠そうに解説し始めた。
「猥の推測やけど。エホバノショウニンちゃんの身体能力測ろうとしてるんちゃうかな。猥らも異世界デビューして間も無いし、ガチのお守りするってなると必然的に辺獄くんをアタッカーに回せへんし。どーせ行動とかもあの妹系少女に合わせなイカンくなるから、今の内に限界値みつけよーっていう、そえーんくんの魂胆やろ」
それと辺獄くんへの八つ当たり、と付け加えた卿の解説を聞きつつ、しおみずが視線を眼下の三人に戻すと、エホバノショウニンに千鳥足で近寄った辺獄が、彼女のフルスイングを腹に食らって悶絶していた。
コンコン、と扉を叩く音が響き、卿が応えると宿屋の主人が立っていた。
「四人組の兄ちゃん達、あんたらにお客さんだよ」
その言葉に、卿とズリキチが顔を見合わせた。
そえーんと辺獄が卿とズリキチに合流し、四人とエホバノショウニン、それとしおみずは宿屋の玄関口に居た。
なんでも、四人を“指名”した客は「四人のみで来るように」との条件を提示してきた。
その為、エホバノショウニンとしおみずと別れる事になるのだが。
「ほら、行くぞっ……! 踏ん張ってんじゃねえよ! この野郎!!」
「嫌! 私は絶対に嫌ですよ! エっちゃんと離ればなれになるとか! そえーんさん達の命を引き換えにしてでもエっちゃんと離れませんからね私は!」
「しれっとひでー事言ってるけど、この自称お兄ちゃんの発言、真性のお兄ちゃんとしてどうよ、卿ちゃん」
「猥としては辺獄くんおもろいから別にええんやけども。せやなぁ……本物のお兄ちゃんとしては、兄失格の言葉を贈りたい」
「てめえらも喋ってねえで手伝えよ! 先方待たして良いことなんか一つもねえんだからよ!!」
必死にその場に留まろうとする辺獄を、そえーんが力ずくで引き摺ろうとし、ズリキチと卿はいつもの調子でヘラヘラと眺めていた。
同じように眺めていたエホバノショウニンが辺獄の前に来て、真っ直ぐ見据える。
「エっちゃ──」
「……お兄ちゃんは、どうしてわたしの名前を呼んでくれないの」
「────それ、は」
「エホバノショウニンちゃんのツッコミに上手く返せない辺獄くんにお兄ちゃんの資格無しってことでね。オラッ、乗り込めっ」
エホバノショウニンの一言で辺獄はフリーズし、好機と見たそえーんは精神的な追い討ちを加えつつ、待機していたであろう馬車に辺獄を押し込む。
「エホバノショウニンは俺が教会辺りに届けとくから。お前らとはここでお別れだな」
「あー、そっかー。しおみずニキはしおみずニキで拠点あるもんな」
「TS異世界転生か……………よくよく見れば普通にE………」
「何か言ったかズリキチ」
「いや何も」
先に乗り込んだそえーんと辺獄に続いて、卿とズリキチも馬車に乗り込み、三人はしおみずとエホバノショウニンに手を振って別れた。
しばらく馬車に揺られ、城らしき場所の手前で下ろされた四人は、徒歩で城の入り口へと向かっていた。
「うっ……うっ……エっちゃん………」
「いつまで落ち込んでんねんな辺獄くん」
「エっちゃんじゃなくてエホバノショウニンだろうに。辺獄くん頑なに呼ぼうとしねえよな」
「そえーんさんがテキトーに付けた名前なんか呼びたく無いですよ!!」
「………あ? 何? 自分がノロマだったのを棚に上げて僕のせいにすんのか君は」
辺獄がビシィとそえーんを指さし、当のそえーんは眉間に皺を寄せて、右耳を押えて辺獄を睨み付けていた。
「辺獄くんが馬車ん中で“エっちゃーん”って絶叫したせいで、まだ耳鳴り止まんねえんだけど。殴っていい?」
「馬車の中で散々ビンタしといてまだ殴るとかどんだけ芸人気質なんですか。やり過ぎはサムいですよ」
「ああ、そえーんくんあの絶叫もろに聞いちゃったんか」
「その後のそえーんの十六連ビンタは面白かったなー」
益体も無い事をダラダラと話しながら、四人は城に辿り着き、キョロキョロと辺りを見回す。
「綺麗………ってよりは古いな」
「遺跡みたいな感じやな」
「城ならメイドの一人や二人貰えねえかな。ズリたい」
「ほっぺ痛いんで氷嚢とか欲しいですね……」
各々感想を漏らすと、奥から小走りで駆けてくる──ゴスロリ調の服を着た少女が現れ。
「おお! 兄者と愉快な付き人達よ! 良く来たな! さ、こっちじゃ!」
辺獄の手を取り、城の奥へと連れて行こうとする。流れるような光景に、呆然としていたそえーんは我に返り、少女に訊ねる。
「いやいやいやいや、いきなり出てきてどこに行こうとしてるの。あと兄者ってまさか辺獄の事言ってる訳じゃないよね」
「? 兄者は兄者であろう? ああ、そういえばまだ名乗って無かったな。我はオルフェゴールという者だ!」
「いやそういうことじゃなくて………」
「そえーんさん」
そえーんの言葉を遮るように辺獄が穏やかな……鼻の下が少し伸びている……笑みを浮かびながら語りかけてくる。
「なんだかんだで私は“お兄ちゃん”な訳ですし。とっとと行きましょう」
その言葉にそえーんは“後で絶対にボディーブローしてやる”と固く決意し、卿とズリキチは慣れたのか、文句一つ言わずにオルフェゴールの先導に付いて行く。
しばらく歩き、やがて巨大な扉の前で止まる。
「さ、兄者達はこの扉を開けて進むといい! 我は色々と準備があるのでな」
オルフェゴールは辺獄の手を離し、元気良く城を駆けて行く。
「はぁー、オルフェゴールちゃん可愛い……」
「ボサッとしてねえで行くぞ」
「デカイ扉やなぁー」
「じゃあ、俺と卿ちゃんが左側、そえーんと辺獄くんが右側押せよ」
せーの、の掛け声で扉を開くと、まるで某国民的RPGで見るような、玉座の広間が広がっていた。
四人がキョロキョロと辺りを見回しつつ、玉座らしき場所の前まで歩くと、そこには──
「こんにちは。卑小の命」
想像を絶する程に美しい女性が座っており。
“ソレ”を見た四人の思考が──沸騰した。