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ズリキチ、食事する

『──ォオオオオオッ!!!』

「おおおおおッ!!!!」


そえーんは、発動した特大螺旋状筍破回転撃(ギガタケノコブレイク)の巨大タケノコを駆け上がり、手にしたタケノコハンマーで兜に覆われた卿の頭を叩き、パコーン、と快音を響かせた。

瞬間。


「ォオオオ、お……?」


卿の鎧が、一瞬にして消えた。

それに合わせて、鎧が発していた炎や、魂に刻まれていた不気味な呪いまでもが消え去っていく。


「お、おお? おああッ!?」

「あ、これ俺も落ちてんじゃねえかああっ!」


卿を止めるのに必死だったそえーんは、滞空していたタケノコから跳躍した事すらすっかり頭から抜けていた。

その高さ、約五メートル。

下手をすれば大怪我を免れない事態に、二人は叫び声を上げた。

が、しかし。


「あああ、がぼっ!!」

「あああ、ぐはっ!!」


二人が地面にぶつかる事はなく。

特大螺旋状筍破回転撃(ギガタケノコブレイク)を構成していた大量のタケノコの山がクッションとなって致命傷は防がれた。

……タケノコとは言え、中々の硬度なので安全性は低めであり、それなりに痛みを負った二人だったが。


「く……くう……」

「くっそ……痛え……」


タケノコの中から呻きながら先に立ち上がったのは──卿。


「猥は……諦めへんぞ……平和を……成すんや……」

「人類滅亡を……婉曲した言い方にしてんじゃねえ……馬鹿野郎が……ッ!」


なお闘志を滾らせる卿を止めるべく、そえーんもフラフラにながらも立ち上がる。

と、そこへ。


「あ、二人共もう終わった?」


トコトコと、歩み寄ってきたのは──


「ズリキチぃ……」

「ズリキチ……」


今の今まで姿を消していた、ズリキチだった。

そえーんや卿と違い、全くの無傷であり、何より──“何か”を咀嚼していた。

死闘を繰り広げていた二人は、そんなズリキチを見て脱力して崩れ落ちそうになるが、どうにかして踏ん張り、そえーんが訊ねる。


「……おめー何食ってんだ?」

「なめこ。結構うめーんだよこれ」


そう言いながらズリキチは、左腕で抱えていた、こんがり焼けたなめこをそえーんに見せつける。それを見たそえーんは眉を顰めながら、再度訊ねた。


「それって、辺獄くんが生やしたヤツ……」

「でもって、猥の善悪相……焼滅炎鎧卿(クトゥグア)の狂火魂縛(イグニス)で燃やした奴よな……?」

「そうそう、お前ら二人の超次元バトル見てたら小腹空いちゃってさ。で、なんかねえかな、って探したら程好く焼けたなめこがあって」


説明しながらズリキチは、なめこをムシャリと一口食べていた。


「……………………………何かもうええわ。疲れたし」

「……………………………………はぁ」


卿はガックリと項垂れ、そえーんは辺りを見回す。

周囲には大量の焼けたタケノコやらなめこやらが点在していた。


「……とりあえず、なめことタケノコかき集めんぞ」

「はぁー? タケノコはそえーんくんで、なめこは辺獄くんの管轄やろ? そーゆーの自己責任やと猥は思うで?」

「そーだ、そーだー。俺は俺で勝手に食うけども」

「世の中にはな、連帯責任っつー素晴らしい言葉があるんだよ阿呆ども。とっとと手伝え」


そえーんは疲れきった表情から一変させ、般若のような表情で卿とズリキチを睨み付けるが……二人は揃ってめんどくさそうにしていた。


「「えー」」

「ハモって“えー”とかいってんじゃねえ!」


頭をガシガシとかきむしりながら、そえーんはズリキチを見て話す。


「大体、辺獄くんに契約書にサインさせる話だったろ? だからとっととなめことタケノコ回収してクトゥルフの館に……」

「あ、そういえばそうだったな。おい卿、お前あっちから集めてこいよ。俺は向こうやるから」

「オードリーさんに会えると思ったら、お前はそれかいな。手のひらくるっくるやのぉ」


そえーんの言葉は聞いたズリキチは一転してテキパキとタケノコとなめこを拾い集め、卿も卿で逆らうのがめんどくさくなったのか、渋々とタケノコとなめこを拾い集めた。

釈然としないが、一応目的に二人を誘導させることに成功したと感じたそえーんは、辺獄を叩き起こすべく、彼の下へ向かっていった。

そして、数十分後。


「いらっしゃいませ………あら」


クトゥルフの館の入り口で。疲労困憊のそえーんと卿、オードリーを見て妙にキリッとした顔つきになるズリキチ、その隣に、両頬を腫らした辺獄が立っていた。


「随分と、色々あった様で」

「いや、まあ……はは……」


オードリーの曖昧な挨拶に、曖昧に返すそえーんだった。

そうして、諸々の手続きを経た後、オードリーに感謝の礼(一応)としてなめことタケノコを渡し……もとい押し付けた一行は、オードリーから最寄りの宿屋を教えてもらい、泊まることになった。

……“オードリーからの勧め”ということを言った途端、宿屋の店主が青ざめた顔になり、ひきつった笑みを浮かべ大部屋に通されたのは多少気になったそえーんだったが……一日の疲労困憊で、四人は用意されたベッドに倒れ込み、気絶するように眠りに落ちた。

翌日。


「んー………んぁ……?」


窓の隙間から入る日差しに、うなされて寝返りを打つそえーん。

その耳に、人の声が届く。


「……おーきーろーよっ!」

「──はっ!」


覚醒(めざめ)、跳躍(はねる)。

そえーんはベッドから転がり落ちるようにして飛び退いた。

ほぼ反射で起床したせいか、頭の方はまだ完全に起きてはいないが、寝ぼけ眼を擦りながら徐々に意識を起こしていく。


「ちっ……避けられたか」


そえーんがはっきりした視界に捉えたのは、舌打ちしながらベッドに頬杖をついていた卿だった。


「お前、普通に起こせねえのかよ……」

「美少女ならともかく、むさい野郎を普通に起こす男とかおらんやろ。もしそえーんくん先に起きてたら猥ら蹴り飛ばしてるやろ? そういうことや」

「……………そんなことねえよ」

「今の間は何やねん」


卿のツッコミを流し、他の二人を確認するべく、ベッドを覗く……が、もぬけの殻だった。


「……あいつらは?」

「下の食堂で飯食っとるで。そういうわけやから、とっとと仕度して降りて来てな」


ベッドから降りた卿は、軽快な足取りで部屋を出て、階段を降りていく。

その様子を眺めたそえーんはため息を軽く吐き、顔を洗うべく洗面所へと向かった。

そして。食事を済ませ、諸々の雑事をこなした後、部屋に四人。集まっていた。

顔を突き合わせ、輪になって無言で座っていた四人のうち、そえーんが口を開く。


「えー、俺たちが異世界に転生……転移? してから一日が経ったんで。状況把握会をやります」

「入りが雑やのお」

「前戯ヘタクソが良くわかる入り」

「私そえーんさんにビンタされたの、まだ納得いってないですからね」

「うるせえ馬鹿共。まともに仕切れもしねーくせして文句ほざいてんじゃねえ。あと辺獄くんはそんな器のちいちゃいこと言ってたら妹なんて泡沫の夢なんでちょっと黙っててください」

「ツッコミ長っ、センス無さ過ぎでしょ」

「うっせーゴラァ!!」


辺獄のツッコミ評価にイラッとしたそえーんは、近くにあった枕をぶん投げるが、辺獄は体を傾けて回避した。

回避されて怒りのボルテージが上がりかけるそえーんだったが、深く溜め息を吐いて落ち着きを取り戻し、座り直して話を続ける。


「とにかく、諸々の状況を把握しなきゃならんので、一つ一つ、気になることを四人の知恵出し合って解決していくぞ」

「「「はーい」」」


どうも馬鹿にされてる感がぬぐえないそえーんだったが、咳払いを一つして、会話を切り出す。


「………じゃあ、とりあえず一番気になんのは──辺獄くんよ」

「はい?」

「君、アカリちゃんと喋ってたけども。それどういう理屈?」

「え、今更それですか? 私てっきり把握済みなのかと」


昨日、宿屋入る時も会話してたじゃないですか、と付け加える辺獄。

そえーん……だけではなく、卿やズリキチも思ってたであろう疑問を辺獄に訊ね、辺獄はズボンのポケットから奇妙な物体……AIREALを取り出す。


「エアさんがリアルタイムで翻訳してくれてるんですよ。しかも会話相手の音声を元に日本語で翻訳してくれるとかいう超高性能仕様!」

「なんか誇らしげに言ってんのが妙にムカつくけど、別に君が凄い訳じゃなくて、えあくんが凄いだけだからな」

「なんかそえーんさん私に当たり強くないです? カルシウムもっと摂ったほうがいいんじゃないですか」


うるせー馬鹿、と辺獄に毒づくそえーんを他所に、卿やズリキチもAIREALを取り出して興味深そうに様々な角度から眺めていた。


「はーん、契約書にサインしたときも思ったけど、エアくん大分高性能になっとるなー」

「ただのビックリドッキリアイテムじゃなかったんだなー」

「あ、そういえばズリキチさんのAIREALってどんな感じなんですか」

「どんなって言われてもなぁ……」


言い淀むズリキチを、三人がじっと見つめる。視線に居心地の悪さを感じたのか、ズリキチは恐る恐る手にしたAIREALを振ったりしながら話しかける。


「おーい。エアくーん……?」

{んぅ……なんだ? 今更私になんの用だ。我が主よ}


AIREALから響く声を聞き、ズリキチに電流走る──


「おい! 俺のエアくんの声、田村ゆ──」

「個人名を、出すなァッ!!」


利権的にぶっちぎりの厄ネタ感を察知したそえーんは、ズリキチに自身の靴をぶん投げて遮る。


「あっぶな、何すんだよ。そえーん」

「おめーこそ発言にもうちょい気ィ使え! 商業作品じゃねえんだぞ、このコンテンツは!」

「……は? 商業? コンテンツ? 何言ってんだお前」

「俺もわかんねえよ畜生!!」


ズリキチの至極まともなツッコミに、そえーんは頭を抱えて叫ぶ。

そえーんとしても、何を言っているのか、まるでわからないが。本能というか大いなる意思というか……ともかく、そんな感じのセーフティを脊髄で感じ取っていた。

ズリキチは特に気にすること無く、幅広い声質で様々なタイプのキャラクターの声を演じてそうな女性の声を発するAIREALに話しかける。


「ところで、俺のエアくんもなんかこう……卿みたいな武装とか出せたりできんの?」

{無論、可能だとも。むしろ、それが我“ら”の主要な機能と言っても過言ではない。そこの妹狂いが言っていた翻訳や識字能力はオマケの類いよな}

「ああ……低めの姫ボイス……いい……滾る……」

「おーいズリキチ戻ってこーい」

「というか、しれっと私のことディスってませんか。ズリキチさんのエアさん」


好きな声優とリアルタイムで会話してるような状況にズリキチは恍惚な表情を浮かべ、そえーんが呼び掛け、辺獄は不満げな顔をしていた。

と、AIREALを無言で眺めていた卿が口を開く。


「そういやよー、猥らのエアくんにそれぞれ名前……というか、識別コード? ってのあるんかね」

「あー……」


卿の発言に、そえーんはズボンのポケットからAIREALを取り出す。

世にも奇妙な物体には成っているものの、曲がりなりにもTLで見かけてやり取りするぐらいの関係だが……まさか人外に成ってるとは思わない。

あの呪文やら異能力やら武器やらは本人の趣味なのだろうかと、そえーんは訝しんでいた。


「でも四分割な上に武器でなめこやタケノコってのもな……」

〈おう、そのタケノコで昨日生き延びたろうが。相棒よォ〉

(何度聞いても、おっかねえよ……このえあくん……)


そえーんはAIREALにビビりながらも、一度状況を整理するために、四人の中央にAIREALをそれぞれ置いて比較する。

……何度見比べても形は同じだが、色は四つとも違っていた。

そえーんのAIREALは青く。

卿のは紅く。

辺獄のは緑で。

ズリキチのAIREALは黄色に輝いていた。


「えーと、じゃあ……それぞれのえあくんに名前というか、型番みたいなのあったら教えて下さい」


そえーんが丁寧に尋ねると、それぞれのAIREALが明滅しながら音声を発する。


{ならば私から名乗ろう。私はAIREAL・ケーアイだ。喜びを至上としている。何を以て喜びとするかは……ふふ。自ずと解るであろう}

「あぁ~……いい……姫っていうか女王様ボイスだけど、いい……」


本当にAIREALなのか疑いたくなる程、妖艶な声を発するケーアイにズリキチは気色悪く悶えていた。

他三人がAIREALに先を促す。


〈次は俺か。俺はAIREAL・ディーオーだ。俺がいる間は不埒な真似は絶対にさせねえからそのつもりでいやがれィ〉

「ガラわっっるいなー……このえあくん……」

〈あァ? なんか言ったかてめェ〉

「いや別に……」


ドスが効きまくっている某滑らない話のナレーターみたいな声に、そえーんは軽く引いていた。声のトーンがヤクザのそれだもん。

続いて、紅いAIREALが静かに明滅しながら音声を発する


[……私はAIREAL・エーアイという名称です。この度はマスター・卿の所有物になり、哀しみに明け暮れています。遺憾の極みです]

「ほー、猥のエアくんはエーアイっていうんか。愛に満ち溢れとる猥にぴったりやんけ」

[はぁ……哀しい……]


どこぞの携帯型心理診断鎮圧執行拳銃が発するシステム音声の哀愁を帯びた声に、卿は都合良く解釈して喜んでいたが……なんだかんだで上手くやるだろうと感じたそえーんだった。


〔じゃあ、最後は俺か。俺はAIREAL・アールケーだ! ま! 楽しくやろうや!〕


緑色のAIREAL・アールケーから、楽しそうな様子で某総合格闘技のナレーターっぽい声が響く。


「………なんか“サイクロン”! “ジョーカー”! とか言い出しそうですね。このエアさん」

「実際に出してるのは、なめこだけどな」

「まあ、そうですけど……」


辺獄に無慈悲な現実を突き付けたそえーんは、天井を見上げて大きく溜め息を吐く。


「AIREAL……っつーか、四つのえあくんキャラ濃すぎだろ……」


たかだか四つの物体の自己紹介で、そえーんは精神的に疲弊していた。最早TLで見かける原型など木っ端微塵に無くなっていた。

内二人は女性の声ときている。意味がわからない。

そえーんは頭を軽く振って、話を再開する。


「とりあえず、AIREALのそれぞれの特長は解ったけれども………なんか喉乾いたな……」

「あー、猥も何か飲みもん欲しいなー」

「会議で飲みもんもねえとか見切り発射にも程があるわ」

「なら、私が下から飲み物持ってきますよ。水でいいですよね?」


一息ついて緊張が解けたのか、三人はそれぞれ寝っ転がり、辺獄はAIREAL・アールケーをポケットに入れて部屋を出ていく。

だらけているそえーんが気の抜けた声を出しながら、ズリキチに話しかける。


「ズリキチよ、後で外に出てお前の武器……武装か。それの確認するからよ……勝手にやるなよ?」


卿みたく変にハイになってガチバトルはごめんだからな、という言葉を、そえーんは呑み込み。ズリキチはと言うと。


「りょうかーい」


と気の抜けた返事で応えた。

そんな二人のやり取りに卿もまた、気の抜けた声で、冗談めかして言う。


「犬も歩けば棒に当たる、って諺の類似でよー、辺獄が歩けば妹拾うーってのも成立せーへんかな」

「いや、まっさかー。“あの”辺獄くんにそんなギャルゲ主人公みたいな能力ねえだろー。それなら俺だって巨乳爆乳美女とエンカウントできる能力搭載してるはずだろうが」

「ま、そんな都合のいい能力なんかあるわけ無いわな!」


ガハハハハ、と下らない話題で多少盛り上がった三人だが。

猛烈に嫌な予感がしたそえーんは、AIREAL・ディーオーを拾い上げながら、猛ダッシュで部屋を飛び出る。

左右を確認しようと、右を見て、左を見ると。


「おにーちゃんは私と遊ぶのー!」

「お兄ちゃんを独り占めなんてズルいわよッ!」

「ほーらぁー、二人とも喧嘩しないで仲良くしようねー」

「「むぅー!」」


辺獄が、通路で少女二人と戯れ……もといデレデレになっていた。


「うっわぁ……」

「いやぁ……まさかフラグだったとはなぁ……呪いか?」

「俺の労力が凄まじく増える呪いなのは確かで、真面目に殺意沸くけどな!!!」


ドアの奥から頭だけひょっこり覗かせている卿とズリキチに応えるようにして、半ばヤケクソ気味に、そえーんはAIREAL・ディーオーをかざして呪文を唱え。

即座にタケノコハンマーを出現させながら、辺獄の下にずんずんと向かって行き。

宿に辺獄の嗚咽が響いた。

そして数分後。


「うっ……うっ………イレアちゃん……ウリアちゃん………」

「泣きたいのはこっちじゃボケェッ!!!」

「どうどう、そえーん」

「なんか大いなる意思が働いてんのかってレベルで毎度トラブってるのな」


咽び泣く辺獄に、ヒートアップしたそえーんをズリキチが羽交い締めにして押さえてる光景を、卿は木製コップに注がれた水を飲みながら眺めていた。

辺獄に寄り添っていた妹……もとい双子の少女、青い髪のイレアと赤い髪のウリアという少女をそえーんがタケノコハンマーで正気に戻し。

即座に辺獄を四人の部屋に連れ戻してわちゃわちゃしていた。


「ふーッ……ふーッ……!」

「落ち着いたか? そえーん」

「ああ……だからもう放せって」


幾分か落ち着きを取り戻したそえーんは、背にいるズリキチに向き直り、話す。


「この際だから、ズリキチの武装の確認もしに行くぞ」

「おう」


そえーんは不機嫌のまま、ズリキチを引き連れ、部屋を後にする。


「おい卿、辺獄くん見張ってろよ。ぜっっったいに一人にすんなよ?」

「えー」

「返事はァ!」

「あーはいはい。わかったわかった。辺獄くんが妹系少女拾ってこーへんように見張っとるから、とっとと行けや」


扉越しのそえーんの恫喝に、卿は舌打ちをしながら手で、しっしっ、と追い払うようにしてそえーんを見送った。

そして、宿の前にて。


「やり方はさっきの俺とか見てわかるよな?」

「ああ、なんとなくな」


ズリキチの真横に、そえーんは立っており。

そのそえーんはタケノコハンマーを握り締めていた。

一種の非常停止釦(ブレーカー)である。

妙な迫力のそえーんを気にせず。

ズリキチはAIREAL・ケーアイを握り締めて、脳内に浮かぶ呪文を唱える。


「武装(いあ)、顕現(いあ)──風禍銃刀(ハスタア)」


唱え終ると、AIREALから黄色い閃光が迸り、ズリキチとそえーんは咄嗟に眼をつぶって光を防ぐ。

瞼を開くと、そこには。


「おおー、すっげぇ。“ガンブレード”って奴かコレ」


砲身の下部分から鋭い刃が伸びており、黄色く着色されているリボルバー式拳銃が握られていた。

見た目だけなら奇妙な武器だけで済んだのだが……ハンマー部分から伸びている八本の触手がスマートなデザインを台無しにしていた。

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