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100.カウントダウン開始。


 時計の時刻は、23時丁度。今日は待ちに待ったゲームソフトの発売日だ。それは、僕にとっては初めてのフルダイブ型VRG(ヴァーチャル リアリティ ゲーム)になる。しかも、多人数で遊べるオンライン対応作品……MMOVRGだ。


 海外の新鋭メーカーが仕掛ける大作という以外、ほとんどベールに包まれている作品だったけれど、前作に当たるシングルプレイのVRGが世界的にヒットしていたため、その期待値は高まり続けていた。


 ただし、この新作をプレイするためのハードルもまた、高かった。このゲームをフルに体感するためには、専用の高級機器が必要だったのだ。高所得者や、裕福な家庭の子供たちに限られるようなこの仕様。


 しかし、世界中のガチ勢は、そんなことで諦めはしなかった。僕も、そんなヤツらの一人だ。ゲーム漬けだった毎日が、アルバイト漬けのソレへと変わった。


 そして貯めた金額は、1年で約60万円。高校に通いながらの資金調達としては、まあまあ上出来な部類だと思う。正直、ゲームをプレイするためにこんな苦労をするとは思わなかったけれど……同じくゲームフリークな友人がこの苦労に付き合ってくれたから、どうにか乗り切ることが出来た。お互い自分のためとはいえ感謝しかない。


 そういえば、一斉に二人辞めることになって、アルバイト先の店長は何故か焦っていたけど。最初にちゃんと言ってたんだけどな、二人とも一年だけですって……。そもそも、高校生に頼り過ぎちゃ駄目だと思う。


 ……まぁ、そんなワケで購入した機器がこちら。


・没入感を最大に上げるフルフェイスヘルメット型VRギア……15万円。

・プレイヤーの生体情報管理を行うガントレット型のコントローラ……8万円。

・長時間のプレイのための褥瘡(床ずれ)防止機能付きチェアー……17万円。

・更に、VRギアの性能を向上させる拡張パーツ……6万円。


 ソフトの発売に先駆け、数日前に自宅に届いたコレらは、既に所定の位置にセットしてある。欲を言えばプレイ中の身体を完全に管理する機能を持つベッドタイプ(小型のMRIみたいな見た目)のVRギアが欲しいところだったけれど、それは最低グレードでも300万円を超える価格で、一般の高校生なんかにはとても手が出ない。


 今回の作品用にアップグレードされたソレを、YOUT〇BEの有名プレイヤーが自慢げに紹介していたのを観たけれど……まぁ、妥協して廉価版で揃えようと思えば、10万円ほどで揃えることも出来るのだ。しかし、ゲーム世界への没入感は薄れるし、長時間のプレイは制限される。それを考えれば、僕の揃えた装備の性能は、前述の最上位モデルと比べて遜色ないものだ。


 そして何より、コレ――。


 ソフト「ディバイバーズ・ドーン アルティメットエディション」……1万5千円。


 kono〇ama回避。ギリギリ今日届いてくれたパッケージ版のそれは、スタンダードエディションより3日間も先にプレイ出来る、先行プレイ権が付属している。USB8.0対応のメモリを、VRギア側面にある挿入口に嵌める。ゲームのクライアントデータは既にインストール済みだったから、それはあくまで認証用だ。


 VRギアの電源を入れ、専用チェアーの上部にあるアームにセットして腰掛ける。姿勢をリクライニング状態にし、音声認識で長時間プレイモードをセットする。背中に当たる低反発マットの中で、一瞬モーターが唸るような気配を感じる。


 既にセッティング段階で何度か試してはいるけれど、まだ慣れない。構造的にはマッサージチェアーみたいなモノだけれど……あれよりも更に身体全体を左右に傾けて、体重が一点に掛からないように動いてくれる。まぁ、フルダイブしてしまえばソレも感じることはないわけだけど。


 チェアーの横に置かれた安価なラックから、アームウォーマーのような薄手の専用手袋を嵌めると、更にガントレット型コントローラを手に取り、セットする。この腕に内蔵された各種機器は、僕のバイタル……血圧、体温、脈拍、血中酸素飽和度などを常にモニタリングし「ゲーム内の僕」に伝えてくれる。


 ある程度は、この情報を元にゲームを続けるかどうかを判断出来るということだ。勿論、バイタルに異常が発生した場合や、設定されたログイン制限時間の超過、また特定の違反行為などが発覚した場合は強制的にサーバーからログアウトさせられるが……。


 Tシャツとジャージという、僕にとっての寝間着に、中世の鎧をサイバー化したようなガントレット型コントローラは、あまりに不似合いだったが、それも今だけだ。ゲームの中に入り込んでしまえば最後、そんなことを気にするものは誰も居ない。


 アームに取り付けられたVRギアを被ると、それまで表示されていた「ユーザーIDを確認できません」の文字が消える。網膜認証によって僕のIDが確認され、先に設定されていたアカウントと紐付けされたハズだ。


 ピコン、という音と共にチャットウィンドウが開く。このVRギアは周囲の様子も透過するように認識することが出来るから、まるで自分の部屋の宙空に光るウィンドウが浮いているように見える。相手は例の友人で、表示されているのは一言だけ。


『Are You Ready?』


 ――当然!!



 ◆



 ///...カウントダウン開始。残り99日。


完全なる思い付きで始まりました。

残念ながら、リアル時間とはリンクせず、作品内時間で100日となりますので、悪しからず……。

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