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第2話:鬼(?)退治

世界に訪れた危機。それを倒すために、メタトロン学園の生徒達は各地に向かう。そこには魑魅魍魎達が……いる?



空間転移装置を使い、我々はシガシティに向かった。この国随一の大きな湖の周囲を、取り巻くように街が存在するのが、シガシティの特徴で。今居るオオツと言う場所が首都である。見た感じは昭和と言う時代を思い出させるような懐かしい雰囲気の町並みで、全体が傾斜になっておりその上に家々が建っているため段々になっている、坂下には湖が見え日の光で蒼く輝いている。


「なんか平和そうだねー」


男女別に2列に並んだクラスメートの先頭に立つリョウカは、ぐーんと背伸びをした。こういう仕草と言い、見た目と言い、性格と言い、まるでネコのようだ。ちなみにこいつが先頭にいるのは、有能だからと言うわけではない。ただ、身長が低い方から順に並んでいるだけである。


「委員長」


リョウカの横の小柄な男子、シンタが真面目くさった顔をして、列を束ねる俺に話しかけた。こいつは、理知的でぶれたことを言わない、安心感のある奴だ。ただ、戦闘はあまり得意ではないので軍師向けと言える。


「何だ」


「鬼ヶ島は、随分この街に近いようですね」


「確かに、あんなところにあるんだからな」


鬼の巣、通称「鬼ヶ島」は、水面上に急に現れる。島と言うだけあって昔から必ずそうらしく、海や湖だけでなく川にできたこともあったらしい。どうやら水を媒介にしているようだが、暫く出てこなかった事もあって、まだ完全な仕組みはわかっていないらしい。まあ、神魔霊獣の類に仕組みなど求めるのは下衆な考えかもしれないが。


湖の上にある鬼の棲み家に乗り込むには船が要るのだが、これは学園側がチャーターしてくれた。火星に行かせる事もできるんだからお安い御用と言うわけだ。なぜ、直接鬼ヶ島にワープさせなかったのかと疑問に思う方もいるかもしれないが、ワープ装置の精度にはやや不安があり、やや位置に誤差が生じる事があるため、あまり小さい島だとワープ先が湖の上になってしまい水にドボンと言う恐れがあるのだ。なので、なるべく陸地が続いている場所を選ばなくてはならない。ちなみに、火星には宇宙人の持っていた「コサインベルト」を使って位置固定型の2区間ワープをしたので学園のワープ装置は使用していなかったりする。


して、専用フェリーを使って、湖の水をかき分けて、俺達は手早く鬼ヶ島に到着した。ピョンと船から飛び降り地に着くと、黒々とした粘土質な土がヌチャッと音を立てた。不快だ。


「うわー、きったねーな。泥だらけになるじゃんかよ!」


と、だらしない格好のシタロウが言った。お前の制服は既にライトフードの油でテカっているだろうに、何を今更泥汚れ等気にしているのだろう。そもそも、学園寮の「グランド洗濯機」なら、放射能や邪神の汚れすら落とせるのだからそれで洗えば良いわけだし。


それはさておき、その小さな島の真ん中にはぽっかり口を開けた、何処かのロールプレイングゲームに出てきそうなかまくらみたいな入口らしきものがあった。中から漏れる漆黒は俺に入ってこいと言わんばかりなので、俺達はお邪魔しますと飛び込んだ。何の確認もせずに危険なところに入るなんて普通からしたらハイリスクだが、俺達はメタトロン学園の生徒なのでそんな些細な事は気にしない。退路を塞がれてよう塞がれまいがこの穴の中の全てを壊滅させるまで出ては来ないし、何が襲ってきても全て撃滅するだけなので、まるで問題ないのだ。


そんな罠は結局いや予想通り無く、中はじめじめした紫色の空間だった。入口に似合わない天井の高さと広さだが、おそらくここは異次元なのだろう。メタトロン学園の活動実績の中に前例があるので驚きなどまるでない。リョウカは、この光景に対して、ほっぺたを片方だけプーと膨らませて、欲しい玩具を買ってもらえなかった子供のように不機嫌そうにした。


「うわー、じめっとしてるね」


「そりゃ、鬼の巣だからな」


「で、鬼はどこにいるの?」


「ほら、そこにいるだろう」


俺が指を指した先には、ぶよぶよした半透明でゼリー状の塊が蠢いている。脳みそらしきものはなく知はまるで無さそうだ。


「え、あれどーみてもスライムじゃないの?」


「あれが、鬼だ」


「うわ、超ガッカリ」


「だろう。昔話であんなのが出てきてもあまり盛り上がるまい」


「せめて、ボスみたいなのがいればいいんだけど」


「それは、いるぞ」


「それはよかった! んじゃ、少しはメリハリあるね」


「軟体だけに骨は無いが、少しくらいは歯ごたえがあるかもな」


「おー、流石は委員長。上手いこというねえ」


「じゃあ、いくぞ皆!」


俺は右手をパーにして前につき出した。これは「全員突撃」の

合図である。クラスメートは一部の人間がオーッと叫びながら飛び出していく。障害となるスライムは、もちろん倒しにかかる。


「ふぁいあ!」


「この、血塗られたハサミをくらえ!」


メタトロン学園の生徒はみな、超人的に強い。それぞれが持つ力を発揮して鬼をガンガン圧倒していく。ただ、物理攻撃で殴るタイプのヤツは、そのぶよぶよした体に攻撃を受け止められ、ダメージを与えづらく苦戦しているようだ。まあ、足止めにはなるので問題ないだろう。


「≪亜空間ブレード≫!」


 時空より取り出した剣を手にしたリョウカを先頭にして進路を切り開きながら、俺とブンジは洞窟の奥へと向かう。奥に進むにつれ遮るスライムもとい鬼は増えるが、こういう状況はブンジの得意とするシュチュエーションだ。


「まとめて片付けてやるぜ! 並みいる敵を一層だ! ≪爆烈サヨナラツーベースヒット≫!」


手に持つバットで、自らが生み出した光の玉を打つと、玉はスライムの方に光線となり向かっていき、ドカンと爆発した。「戦闘野球部」所属の彼らしい技だが、自分の球を自分で打つのはヒットではなくて正確にはノックと言うべきだろう。まあ、そんな些細なことを気にしても仕方ないか。


そんな感じでまるで雑魚なスライムたちを殲滅していくと、ついに、スライム……ああ鬼だったなの親玉が姿を現す。全長5メーターくらいはあろう赤いクラゲみたいな生き物が、洞窟の最深部にある泉の上にフワフワと漂っていた。


「わ、何かこの前の火星人より宇宙人ぽくないか?」


ブンジはウキウキした声で言う。確かに、この前の火星人はタコのような姿をしていなかった。こっちの方が明かに異星人らしい身なりをしている。それもそのはず、メタトロン学園に残る文献「経年記」には、鬼は他の宇宙から流れ着いた生命体と記されているのだ。遥か昔、神話の時代にはすでに書きはじめられた何万冊に渡る資料は並の歴史なんぞよりは遥かに信憑性が高い。ちなみに、今は電子化もされていて、学園のパソコンから見ることもできる。こちらはワード検索機能がついており、調べたいところをピンポイントで調べられ大変便利だ。ただ、稀に「検索開始にゃりー」と秋葉原電波少年的な謎の声がするのがきになるけれども。


「だねー、さっさと倒そうよ」


「リョウカ、お前と随分さっぱり言うなあ」


「だって、どーみても相容れそうにないでしょ」


「なのかね。委員長様どうなのよ」


俺は、おそらくリョウカの言う通りだろうなと答えた。和睦の通じる相手ならはなからこの世界から追放する意味がないのただ。


「グミミミ」


唸る赤いスライムもとい赤鬼は、不気味に唸った。まずは知性がどれだけあるのか確かめよう。まずは、人の言葉で話しかける。


「お前たち、地獄からわざわざご苦労だな。一体、何が目的だというんだ。まさか、ただ過去の復習と言うわけではあるまいな」


「グミミ。ソウダナ人間」


おお、案外頭が良さそうだ。脳みそなんてなさそうなのに。


「他の場所にも妖怪が出ているようだが、関係はあるのかな」


「アー、他ニモ居ルノダナア。アノ者ノ、チカラヲ、カリタ輩ガ」


「ほう、随分簡単にバラすものだな。黒幕がいることを」


「我々バ、アノ者ノ手下デハナイ。コノ地ヲ我々ガ手ニシタア後、アノ者モ殺ス」


「それは、力を貸した方も甲斐が無いな。まあ、倫理観の無いものにそんなことを言っても無駄なわけだか。それに、貸した方が見返りを求めているとは限らんし」


「ナンダト?」


「ほう、少しは気になるか。いいだろう、教えてやる……お前はおそらく利用されているのさ。その、黒幕にな」


「ダ、ダマレェェ、我ラ鬼ハ、アンナヤツ二敗ケハシナイ!」


「動揺具合では、話にならんな。よし、身をもって味合わせてやるとしよう。リョウカ、ブンジ、こいつを仕留めるぞ」


「りょーかい!」


二人は、それぞれの得意とする射程(レンジ)から攻撃を開始する。リョウカが次元の剣で相手に迫り切りつけ、相手が後退したところにバンジの放った炎のボールが飛んでいき、ボウっと燃えた。これだけで、かなりダメージを受けたのか、鬼はギエェと叫んだ。あとは、俺が止めを刺す。


「地獄に帰って引き籠るがいい。出でよ、全てを射抜く魔弓〈レゴルバント〉よ……」


俺がそう呼ぶと、右手にどこからともなく黒き闇が集り、禍禍しい見た目をしたボウガンのような弓を生み出す。俺はそれを、敵の方に向けた。


「矢よ、抗う敵を跡形もなく滅ぼせ……≪闇黒乖魔弾ダークワインドバスター≫!」


放たれた一矢は、黒き光の唸りとなって、敵に向かい、貫く。



「グミェェェェ!!」


直後、爆発四散する鬼。

他愛もないとはまさにこのことだ。


「うわー、弱っ。大したことないね」


そう言い、リョウカがからからと笑った直後、ゴゴゴと洞窟が揺れだした。おそらく、ボスである今の赤鬼がいなくなると、この場が保てないのだろう。そう、即時に判断した俺は、皆に撤退命令を出す。


「脱出するぞ。出口に向かえ」


「了解!」


俺達がフェリーに戻った2分後に、鬼の島は湖の中へと沈んでいった。任務終了。被害者は0名だ。




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