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妹は俺を超人(ハリボテ)にしたくて仕方ないらしい

次の作品を模索しております。

反応を見る意味で、こちら、試験的にあげさせていただきました。感想を頂ければ、天上に上るほどの喜びでございます!

「お兄様には、並々ならぬ力があると、(わたくし)はわかっております!」


 両手をぐっと握りしめた妹のリリイは、目をキラキラと輝かせて俺を見つめる。


 んなもんねぇよ。


 魔法授業の課題。なんでも良いから魔物を狩ってこいという、適当極まりない内容を言い渡された俺は、それに合わせるように適当なスライムを狩りにきた。


 はずだった。


 俺に付いてきたリリイが、当然とばかりに俺の首根っこを掴み上げ、浮遊魔法をマッハに飛ばしながら、たどり着いたのは、この竜王の住まう山。

 何しにここにきたんだと、戦々恐々としながら妹に問いかけたのが、ついさっきの話。んで、「力を覚醒させてください、さあ!」とか言われたのが、今の話。


「お兄様ならきっとできます! さあ、あそこで睨みを利かせている竜王デザートを、けちょんけちょんのふにょんふにょんにしてください!」

「お前は俺に死ねといっているのか?」


 できるわけねぇだろ。


 頭のおかしい妹を説得し、元のスライムの森まで戻るのが、俺に課せられた人生最大の、生死をかけた大ミッション。

 難易度はSSランク。だれか冒険者ギルドから応援つれてきて。

 ……まあ、来るわけがないので、俺はリリイを説得する方向へと話を持っていくことにする。


「リリイよ」

「なんですか?お兄様」


 キョトンと小首を傾げるリリイ。かわいい……、いやいや、騙されるな、こいつは悪魔だ。

 気を取り直し、リリイの肩にポンと手を乗せて、目線の高さを合わせながら、勤めて笑顔で続ける。


「俺は一般人だ」

「今はそうですね!」

「今も昔も、未来永劫も、俺は一般人だ。それで、賢いリリイならわかるよな? 普通の人が竜王なんかに喧嘩を売ったら、鼻息一つで死ぬよな?」

「お兄様なら平気です!」

「んなわけねぇだろぉぉぉ!?」


 呆れと怒りをぶつけるように、ガンッと地面に拳を叩きつけ、膝をつく。

 リリイの主張する、意味のわからないわからない「お兄様なら平気」理論、略して「オニヘイ理論」。なにそれ? 何が平気なの? もっと論理的に説明して?

 ……よし、今度はもっと、小学生にもわかるような言い回しをしてやろうと、気を取り直して、再びリリイへと向き直ることにした。


「リリイよ」

「はい、お兄様!」

「俺の今年初めに測定した、MP(魔力値)を言ってみなさい」

「1です!」

「そうだよな。MP1は、どんな評価だったっけ?」

「クソザコナメクジです!」

「うんうん、悲しいけど、涙が出そうだけど、その通りだ」


 で。


「MP1の人間が、竜王に立ち向かったら、どうなる?」

「まず死にます!」

「そうだよな、まず、死ぬよな」


 で。


「なら、MP1の兄ちゃんが、竜王に立ち向かったら、まず死ぬよな?」

「お兄様なら平気です!」

「だからなんでそうなんだよおおおおおおお!?」


 頭を抱えて、俺は悶える。

 その「オニヘイ」理論はどこから来る? MP1だぞ? 水鉄砲レベルの水魔法すらも生み出さないクソザコナメクジだぞ??????

 なんで1から弁論術まで使って論理立ててやったのに、最後に「オニヘイ」理論でぶち壊されなきゃならないんだ??????????


 俺は特に運動もしていないのに、肩で息をしながら、キッと、妹のリリイを睨みつける。このままでは死ぬ。アホな妹にアホ理論を掲げられたまま、竜王に挑まされて、確実に殺される。

 前門の妹、後門の竜王。まさに板挟み状態である。

 説得は無理……、となれば、俺が取れる行動はたった一つしかない。

 妹をごまかす。それだけだ。


「リリイよ」

「なんですか?」

「俺は今日、朝食を食べていない」

「はい、それは確かに、学校に遅刻でしたから。でも、それはいつものこt「朝食を食べていないと、力は出ない。そうだな!?」……その通りです、お兄様!」


 よし、少しばかり危なかったが、なんとかごまかせた。俺はその勢いのまま、リリイに考える余地を与えないよう、畳み掛ける。


「だから、俺は今、力が出ない。本来の力を発揮できれば、竜王なぞ指一本でチョチョイのチョイだが、力が出なくては、さすがに無理だ」

「な、なるほど……!」


 なんでこれは信じるの、この子。お兄ちゃんは将来が心配です……、主に、未来の旦那の方が。


「だから、今日のところは、リリイ、お前が代わりに倒してこい」

「で、でも、それじゃあ、課題が……あ、そうです!」


 わっと、満面の笑み。とてもいいことを思いついたような、これ以上ないくらいの笑顔。

 俺には悪魔がニヤリとしているようにしか見えないが、本人にとってはきっと名案なんだろう。


「私が倒した竜王を、お兄様が倒したことにすれば、なんの問題もございません!」

「え?」

「そうと決まれば、早速、竜王を倒してきます!」

「ちょ、まっ……」


 静止、間に合わず。リリイは一瞬で竜王の元まで走っていくと、そのまま地形が変わるほどの激闘を繰り広げ、俺はそれから必死に逃げるという構図が生まれることとなり。


 結果、後日。竜王は俺が倒したことにされ、学校中から注目を浴びることとなった。


 だれかこの妹、どうにかして。

お読みいただきありがとうございます!


これが連載になった場合、手を加えてからになるのでこの短編とは少しばかり雰囲気が異なるかもしれません。

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