Level one
「はーぁ…。」
入学式を終え、ムートを含む新入生たちはホームルームのために教室へ移動へ移動していた。
新入生は成績や家柄とは関係なく無作為に分けられた40名3クラスに分けられる。
ムートはCクラス。
「ちょっと!」
とぼとぼと、溜息をつきながら廊下を歩いていると、ムートの後ろから声がかかる。
先程壇上に上がって挨拶をしていたミラだ。
「あー、えぇっと、何?」
「何? じゃないよ。ぼーっとしちゃって」
「…だから何? 何の用だよ」
「アナタ、ワタシの挨拶全く聞いてなかったでしょ! 人が折角前出て色々アナタたちの代わりに挨拶してるのにさ!」
「…何で知ってんだ」
「何で、じゃない! あれだけあからさまにぼーっとしてる新入生、アナタくらいしか居なかったの! ったく、落ちこぼれだからって舐めないで」
落ちこぼれ。
そう言われて思わず、とぼとぼと歩いていたムートは足を止めた。
「いい? 何でアナタみたいな落ちこぼれとクラスが一緒になんなきゃいけないかよく意味がわからないけど、ワタシの足引っ張るような真似したらただじゃ置かないから! 分かった?」
足を止めたムートに向き直るようにしてミラは続けた。
会話を聞いていた周りの新入生もそちらを見てクスクスと笑っている。
「落ちこぼれ…か」
そう言いながら、ムートは微笑んでいた。
笑いにも種類があるが、嘲りや憤りといった負の感情はとてもではないが見受けられなかった。
その様子にミラも思わずたじろいでしまった。
「な、何よ。 文句があるなら言いなさいよ」
「俺には夢がある」
「…はぁ?」
「とてつもなく大きな夢が」
「突然何言い出してるのよアナタ」
困惑の表情を浮かべるミラを他所に、ムートは高らかに宣言した。
「俺は、魔王になって世界を変える」