Intro
それはまだ遠くない昔、男の前に二つの「この世ならざるモノ」が現れた。
それらは互いに互いを否定するかのような出で立ちの違いを見せていた。
片方は黒きドレスを身に纏う金髪赤目の女、片方は白き鎧を身にまとう黒髪青目の男。
どちらも背中に翼があるが、女は鳥のような羽根でできているのに対し、男は炎のように噴射していた。
黒き女は男の右手を、白き男は男の左手を手に取ると、こう問いかけた。
「あなたは、私達に何を望むか。」
男はそれに対し、一言で答えた。
刹那、土地は光と闇に包まれ、それが晴れた頃には何も無くなっていた。
あるのは生き残った者の孤独と、果ての無い絶望、どこまでもひたすらに広がる虚無だった。
男は後に「魔王」と呼ばれ、魔王の前に現れた「この世ならざるモノ」は、「魔界から来た魔物」と定義づけられた。
初代魔王の降臨から2000年後の今となっては、更地になった土地は再生し、魔王の支配のもとで文明を築き上げていた。
魔王国ウルティマ。
諸外国からの侵攻を魔王一人の戦力のみで守り続けていた絶対的領域。
その絶対性に陰りが生じ始めていた。
魔王の活動限界である。
魔物と契約し、圧倒的な力を得た魔王は人外の存在となっていた。
しかし、降臨から1000年を過ぎた頃、魔王は自身の力の衰えを感じ始めた。
魔王は、自身のみを戦力をしている自国の軍事力を危惧し、軍を作った。
更に500年を過ぎた頃、自身に代わる者を育てるため、学び舎を作った。
確かに優秀なものは居た。
しかし自分に代われるほどの逸材が現れることなかった。
ただただ時が過ぎていき、気がつけば降臨から2000年が経過していた。
この物語は、そんな時代背景の中で、新たな魔王となることを目指す一人の少年の物語である。