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アドベンチャー・アイランド  作者: 只野御夜市
[二人目]三浦悠馬
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寡黙な男。

ここはアイランドの一番高い山頂へと向かうアトラクションの途中。

深い森のなか、キキンッと金属の打ち合う音と何者かの倒れる音がしばらく続いた後、ドサリという音と共に森には静寂が訪れた。

その静寂を破ったのは数人の声だった。


「た、助かりました!ありがとうございます!」

「ほんと、なんて感謝したらいいか…。」

「死亡時の経験値やアイテムドロップのペナルティが重いので、感謝してもしきれません!」

その礼の声には感謝の念が溢れていた。

その感謝の声に男は、「ん…いや…。」と短く返し、忙しなく視線をアチコチへと向けた。


「お名前を教えてくれませんか?お礼がしたいのですが…。」

「別にいい…です…。気をつけて…。」

男は感謝の言葉にそれだけ答えると、何事もなかったかのようにスタスタと先へ進んでいった。


彼はこのアトラクションを攻略している最中であった。

たまたま進行上に数多のモンスターに囲まれたパーティーを発見し、あわや全滅と思われた瞬間に体が動いて飛び出したのだ。

彼の名は三浦悠馬(ミウラハルマ)、このアイランドに存在するSSSランクの一人だ。

パーティーを救った彼は、そのまま何事もないかのように進んでいき、周囲に人目がない事を確認するとその場に座り込んだ。


「ぷはぁ…緊張したぁ…。思わず助けちゃったけど…余計なことをしたとか思われてないかな?

運営に報告とかされてないかな…、うわー!僕はどうしたらいいんだ!」

他を寄せ付けない圧倒的な戦闘力を持つSSSランク。

鍛え抜かれたスキルや装備と、磨かれた技術を駆使して大半のアトラクションを一人でクリアしていく彼は…。

「うぁー!僕の進行方向で全滅しかけないでよ!

でも、助けないわけにはいかないし…だからって、ほっとけないし…。誰か、どうしたら正解なのか教えてー!」

とてもネガティブで、話すのが苦手であった…。


そうして悶えている悠馬の耳に、悲鳴が聞こえてきた。

「ん…女性の声?コッチに向かってくる?」

彼の人並み外れた感覚は、数多の情報を繋ぎ合わせる。

「追われている?四体のモンスターかな?この辺だと龍人(ドラグニュート)かな?

もー、さっきも助けたばかりだってのに…。

知らない所だったら、ほっとけるのに…足音から考えて、こっちに向かってくるか…。」


悠馬は素早く所持品の確認をして、腰の刀に手を置き腰を落とした。

「うーん、やっぱり真っ直ぐに来るな…。

どうか怖い人じゃありませんように…。」

そう呟きながら待ち構える悠馬の目の前を、一陣の風が通りすぎた。

漆黒の髪を靡かせ、回避重視の軽鎧を身につけた少女が通り過ぎていく。

普通の人なら、彼女のはためくスカートへ眼が向かうのだろう。

しかし、集中している悠馬の目には入らない。


彼女に続いて、藪を掻き分けて赤黒い鱗に包まれた羽のある生物が姿を見せた。

「抜刀術、二の型!」

悠馬は瞬時に抜刀して切り上げ、切り伏せる。

そのまま左手で腰のダガーを引き抜いたときに、続いて三匹の龍人が姿を表した。

その時には悠馬の左腕が動いている。

ビッ!と投げられたダガーは龍人の1匹の眼を穿ち、よろめかせた。

「稲妻斬り!」

残された二匹は悠馬の操る刀にジグザグに切り裂かれ倒れ伏す。

伏した龍人には目もくれず、悠馬は一気に眼を潰された龍人へと距離を詰め、「刀術、一閃!」一撃のうちに止めを刺すのだった。


少しの間、他に襲撃がないのを油断なく確認した悠馬はフゥと息を吐き緊張を解いた。

「んー!んー!」

そんな悠馬へと先程の女性が話しかけ…ようとしたが出来ないでいた。

「えっ…あっ…。大丈夫?」

「んー!んー!」

少女の口には大きくバツ印の付いた布で封印が施されていた。

「あ、呪いを受けたんだ…。これは、重度か…。ちょっと待ってて。」

本職ではないにしろ、少々の心得がある神聖魔術を使用するための本を悠馬は取り出した。


「大地の女神よ、彼の者の呪縛を解き放ちたまえ…。」

キラキラと光りが女性へと降り注ぐ…が、口の封印はそのままだ。

「あ、失敗…。もう一回…。」

もう一度言うが、本職ではないのだ。


「ぷはぁ、助かった!ほんと、ありがとうね!」

呪いを解かれ、女性はようやく話すことができるようになった。

「あー、じゃぁ…。」

悠馬は軽く手を上げ、別れようとしたが…。

「ちょっと待ってよ!サブ武器も落としちゃって、戦闘出来ないの。

拾いに行きたいから、そこまで助けてくれない?」

「えっ…あ、あぁ…。」

「魔法攻撃が主だから無くても戦闘できるんだけど、さっきみたいに呪われたら戦えないからねー。

ほんと、助かった。こんな強い人と一緒出来てラッキーだよ。」

喋れるようになったとたん、少女は休む間もなく話し出した。

そのまま悠馬の腕を掴むと、グイグイ引っ張っていく。

「あ…あの…。」

「ん?もっと大きな声で喋ってよね。いやー、私も一応SSなんだけどさ。油断しすぎちゃったなぁ。何回もクリアしているからって縛りプレイはしない方がいいね。行けると思ったんだけどなぁ、あそこで呪われたら飲み物系の回復使えなくなるし、武器は取り落とすし、そのまま追いかけられてデスペナ覚悟したよ。君もソロで来ているってことはSS以上だよね?まぁスキル構成次第ではソロでも危ないけど、さっきの動きを見る限り余裕があったねー。」


口を挟ませる隙を与えず延々と喋り続ける女性。

悠馬の心の「誰か助けて!」という叫びは、誰にも聞こえないまま森の奥へと消えていった。

短編書きなぐるのは、サクサク出来ますねぇ。

まぁ、こんなに様々な人を書けるのか…。

私の挑戦ですね。


ちなみに、色んな自分への挑戦のため一人称視点だけでなく三人称視点も練習してみます。

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