突発イベント。
「ふぅ、今日も一杯頑張ったな!」
俺達は無事に狩りを終えて町へと戻っていくところだった。
「次の装備はどうしようかな…。我慢して、その次のを狙った方がいいかな…。」
「凌馬のことだから、きっと待ちきれなくなって装備買い換えるだろ。」
「あはは、言えてる!」
「うっさいなぁ!」
そんな会話をして歩いていると…。
「アイランド主催突発イベント!Sランクと戦ってみたい方いらっしゃいませんか!?」
そんな声が聞こえてきた。
「Sランク?一軍に匹敵するって認められるミッションを攻略したらなれるランクだよな?」
「確かそうだよ。全部で100人位しか居ないんじゃなかったかな?その上にSSが各職5人居て、SSSが各職に1人しか居ないんだってね。」
「うわー、装備とか凄いんだろうな!行ってみようぜ!」
俺達が街の中央の広場へと到着すると、既に試合が開始されているところだった。
交わる剣撃、スキル発動のエフェクトが交わされ、2人の大人が激しい攻防を繰り広げている。
「どっちがSランクかな?」
「あー、装備は似たような感じ?でも、ステータスや精錬の状況、プラス値で違ってくるし…。一番大きいのは、プレイヤースキルかな?」
「あ、双剣の方が押してるっぽいよ?」
両手に剣を持った剣士が、剣と盾を持った方を押していっている。
攻める手数が多いのが優勢に進められるのだろう、盾使いはステップを踏みつつ回り込んだりしているが劣勢なようだ。
そんな盾に双剣士が距離を詰めて突きを放つ。
それを剣で受け止めようとした瞬間、双剣士がクルッと剣を回し盾使いの剣を跳ね上げた。
クルクルと上空へと剣が舞う中、双剣士が話しかける。
「なんだ、Sっていっても大したことないな。俺が変わって…んなっ!?」
双剣士が話しかけたとたん、ニヤッと笑って盾使いが盾を双剣士に投げつけた。
視界を塞ぐ盾を双剣士が弾き飛ばそうとした瞬間、盾によって死角を作り出して盾使いが一気に距離を詰めた。
バキッ!
前蹴りを盾を押し込むように叩き込み、後ろへと双剣士が倒れこんだところへスキルによる猛追が始まる。
「連環撃!飛燕脚!虎爪斬!爆神掌!」
前蹴りによって崩された体勢を整える間もなく、双剣士は後ろへと転ばされる。
「Sランクがこの程度なわけないだろ。まだまだ隠し玉も奥の手もあるに決まってる。
ついでに、俺の職業は…内緒だ。」
「だ…騙してたって言うのか!」
「言ってないだけで、騙してなんかないぞ?
あ、そうそう…ソコは危ないぞ?」
Sランクが言った途端、さっき跳ね上げられた剣が上空から突き刺さった。
Glassによって、そう見えるだけだが驚かされる。
「つえぇ…。全く相手になってない…。」
「一軍に匹敵するって言われても納得だな…。」
俺の呟きに、雅人が同意する。
周りが息を飲むなか、司会者が進めていく。
「次の希望者居ませんか?勝てなくても参加賞。認められたら、景品がありますよ。」
「はーい、あたしやりたいです!」
「桜夜!?」
慌てる俺たちをよそに、桜夜が交渉していく。
「私はまだDランクなのでパーティーで参加はダメですか?」
「んー、まぁ今回はいいだろう。」
「やった!後はハンデとして装備もランクを落としたり…。」
「あっはっは、面白いお嬢ちゃんだ。オーケーオーケー、良いぞ。他には?」
カチャカチャと装備を付け替えてもらいながら、様々なハンデが付けられていく。
ほ…本当に大丈夫かよ?
「何してんだ、桜夜。さっきの戦闘見ていただろ?」
交渉を終えて戻ってきた桜夜をジトーっと見つめて雅人が問いかけた。
「だからだよ。勝てるとは思わないけど、認められればいいんでしょ?」
「はぁ…。何か策でもあるのか?」
「策ってほどでもないけどね…。ちょっと真似させてもらうだけだよ。」
フフッと桜夜が黒く笑った。
準備と打ち合わせが終わり、俺達はステージへと上がった。
「さっきのを見て俺にハンデを付けるのは良かったが、認められるのは簡単じゃねぇぞ~。」
Sランクが軽く柔軟をしながら声をかけて来る。
「まぁ、そこは見てからのお楽しみですね。」
桜夜が応答しつつ、俺の後ろに隠れる。
「それでは、双方準備はいいですか?始め!」
「エネルギーボルト!」
開始の合図と同時に桜夜が隠れて準備していた魔法を放つ。
「おっと、コレくらい…。おわぁ!?」
かわした足元目掛けて、俺が剣を投げる。
「ちょっ、メイン武器じゃ…。ってゴルァ!」
「ラビットショット!ラビットショット!」
足元の剣を跳んで避けたSランク目掛けて、雅人が素早く矢を射かける。
空中で身動きが取れないSランクの眼付きが変わった。
「龍の顎!」
いつの間にか両手に剣が握られ、雅人が放った矢を上下から叩き落とされる。
「次はどう…そう来るか!」
「ストレートシールド!」
俺は盾を前面に押し出して、スキルで突進をかける。
そんな俺を軽く馬跳びでSランクが避ける。
そこに矢や魔法が射かけられるが、双剣を操り軽く叩き落とされる。
「なかなかのコンビネーションだったな。だが、まだ俺には届かな…アイタッ!」
Sランクの後ろに通りすぎた俺は、投げた剣を拾い上げてバッシュを叩きつけた。
「へへん!届いたぜ!どうだ!」
瞬間、ゾクリと体が震えた。
「オーケー、俺に双剣を抜かせて1撃入れたんだ…。
泣くなよ?」
「いっ!?」
何がどうなったのか、わからないまま一瞬でHPがゼロにされてしまった。
残されたスキルの残滓が両手脚と、胴と首に攻撃されたと告げている。
「は…速すぎだろ…。」
そのままSランクは流れるように雅人達の方に駆けていく。
向かい来る矢や魔法を最小限の動きで避けながら…。
「あらよっと!」
一筋の斬撃が飛び、3人纏めてスキルによって切り伏せられる。
「ふぅ、こんなもんかな。」
肩に剣を担ぎ、Sランクが一息ついた。
完全に遊ばれていただけで、俺達は完敗した。