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アドベンチャー・アイランド  作者: 只野御夜市
[一人目]柏木凌馬
3/23

初討伐。

「では、そちらとそちらの皆様が準備終わったようですね。

では、始めましょうか。」

俺達より少し年上のグループと子供連れのグループに声がかかる。


「ぱぱー?犬さん可愛いね。」

「そうだね、でもよく見てるんだよ。すぐに飛びかかってきて危ないからね。」

お父さんは慣れているのか、5歳くらいの子供と話をしながらコボルトを見つめている。

あそこはホノボノとした空気が流れているな。


檻が開け放たれ、コボルトが「クーンクーン…。」と啼きながら親子に近づいていく。

子供が撫でようとして手を伸ばした瞬間。

「ほら、来たっ!」

お父さんがサッと子供を抱えて、コボルトの攻撃から身をかわす。

「えっ、あれが本性なの?可愛くない!」

額には角が生え、鱗で覆われた犬のような感じの頭を持つ4足歩行のモンスターへと変貌していた。


その変貌したコボルトの攻撃を軽くかわしながら、「ほら、よく見て。ぱぱをギューってして。怖くないよ。」「きゃー!ぱぱつよーい!さいきょー!」等と話をしながら戦っていく。

子供のランクを上げるためなのかな?

とても余裕のある討伐だった。


片手で子供を抱きながら片手の剣でコボルトの爪を弾きながら、かわしていくお父さん。

「ほら、剣をギュッて握って。真っ直ぐして。そうそう、そのままだよ。」

爪が掠めるほどのスレスレで避けて、お父さんが距離を一気に詰める。

子供の手でも当たるように抱き合うほどの至近距離へと詰めて、剣を当てて、すぐさま距離をとる。

「あのね、ボクさいきょー?」

「うんうん、最強だねー。」


「はー、すげぇ。勉強になるわ。」

俺もあんな風に動けるかな?

「凌馬、あっちも上手いよ。」

雅人が指す方を見ると、両手に手甲を付けた兄ちゃんがコボルトの爪を頭を振って避け、2連続…いや、脚による攻撃も絡めて6・7・8連撃と繋げていく。

手甲の兄ちゃんの連撃で体が持ち上がった所へ、弓を持った兄ちゃんの矢がビシュッ!と額に撃ち込まれた。

「あー!良いとこ取られた!」

「ふっ、さすが俺。クリティカルだな。」

「ちっ、月のでない夜は気を付けろよ!」


「あの人達も慣れてるな。ランクも高そうなのに、なんでこのミッションやっているんだろう?」

「攻略情報の確認とか編集のためじゃないか?」

公式が発表している情報だけじゃなくて、サイトもあるからな。

納得の理由だな。


「では続いてそちらとそちらのグループどうぞー。」

「よし、行くか!」

檻から解き放たれたコボルト目掛けて俺は駆け出した。

「さっきの見てたからな!騙されないぞ!」

潤んだ瞳で見つめてくるコボルト目掛けて距離を詰めて、俺は剣を叩きつけた。

「キャゥン!」

そのまま吹き飛ばされ、コボルトは地面に踞ってこっちを見つめてきた。

「クゥンクゥン…。」

瞳はウルウルとし、尻尾は垂れ下がって助けて欲しそうに俺を見つめてくる。


「うっ…。」

そんな眼でみられるとちょっと…。

「雅人、コレさっきのと…。」

「油断するな!」

シュッ!

「ギャウン!」

俺が後ろを振り返ると、雅人の矢がすぐ脇を通り抜けコボルトの肩を射ぬいていた。

「そうやって、隙を作らされているんだ!そいつは敵だぞ!」

「ずっりぃ!騙されたじゃないか!」

俺が振り返った隙に本性を表したのだろう。

今は姿が変わっている。


「力の根元たるマナよ、我が敵を射ぬけ。エネルギーボルト!」

桜夜の魔法がコボルトに突き刺さる。

「水の女神よ、かの者に活力を与えたまえ。マナリチャージ!」

スキルで消費したMPを、美月が癒してくれる。

「スキルセット、チャージ…。チャージショット!」

俺を越える身長のコボルト目掛けて、雅人の矢が突き刺さっていく。

「スキルセット、バッシュ発動!」

俺は皆の支援を受けて、剣を肩に担ぎ腰を落として狙いを定める。

「これで、終わりだぁ!」

一気に距離を詰めて、剣を叩き込んだ。

「グルアァァ…。」

断末魔の叫びと共に、コボルトが光となって消えていく。

「よっし、討伐完了!」

「お疲れ。」

手を上げて労ってくる雅人に、俺はハイタッチで返した。


「はい、皆様ご苦労様でした。では報酬を配りますので皆様カードを出してください。」

全グループの討伐が終わって、講師の先生が討伐報酬を配ってくれる。

1回のみのミッションなので、報酬は高めだ。


「よし、それじゃあギルドで討伐と素材回収のミッション受けてから、また狩りに出ようぜ!」

頷く仲間達と共に移動しようとしたところに…。

「すいません、このミッション報酬を売っていただけませんか?」

先程のお父さんが声をかけてきた。

「えっ、そりゃぁ構わないですけど…。」

「あー、良かった。なら単価1000でどうですか?」

彼が言った価格はギルドへの換金の2倍、露天での買取価格の1.5~1.8倍位になる。

「高く買ってくれるのは嬉しいけど、何に使うんですか?」

「まぁ、色々と使用方法はあるけど…。今回は子供にコボルトのキグルミでアバター変えようかと思って集めているんだ。」

へー、そんなことできるのか。

「俺は使わないから良いですよ。」

ボクも私もと皆が素材を売っていく。


「では、ありがとうね。助かったよ。」

「こちらこそありがとうございました。」

「んじゃ、駆け出しの君達に様々な祝福を。」

「えっ?」

お父さんが早口で何か唱えるにつれて、様々なバフが俺達に掛けられた。

ポカンとしている俺達に「んじゃ、またね。」と声をかけてお父さんは去っていった。


「あれだけの動きで剣を使ってたのに、まさかの補助職だったなんて…。」

「今日一番の驚きだったな…。」

「気を取り直して、狩りに行こう。バフ勿体ないし。」

俺達は急いでギルドへと向かうのだった。

知人の催促が激しい。

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