露天風呂と新たな課題
侵入者の排除が終わり、俺は温泉に入っていた。
湯煙漂う露天風呂、お湯が揺れる浴槽、近くには水の滴るシャワーに蛇口。石や木々が周りには立ち並び、まるで高級温泉宿のような雰囲気を醸し出している。
浴槽の大きさは入ろうと思えば十人は入れるほどの大きさ。
浴槽内のお湯の温度は平均43度といったところ。
後シャワーの近くには、椅子とこれまたDPで買ったシャンプー等が置いてある。
ちなみにこの露天風呂一式全て揃えるのに1000DP近くかかった。
俺はその温泉に一人で浸かっている。
「はぁ~、極楽、極楽」
俺は湯船に浸かっていると、自然とこの言葉が口から漏れる。
この快楽もあのエフィドスの粋な計らいがあってこそだと思うと、頭の中でエフィドスへの感謝を述べる。
「分かってるじゃないか。もっと敬ってくれてもいいんだよ」
突然、俺のすぐ側から声が聞こえる。
その声がした方向を向くと、あの白い空間であったエフィドスが俺のすぐ後ろにいた。
エフィドスは、現在俺と同様に衣服を着用しておらず、その色白の肌が良く見える。
そしてあの空間であった顔の靄が、今は無くなっていて顔がうかがえるようになっているのだが、流石神と言うべきか、かなりの美少年だった。
「これが温泉かぁ、僕達は汚れとかとは無縁だから入りはしないんだけど、結構気持ちよさそうだね」
「………入るか?」
「うん、お邪魔させてもらうよ」
エフィドスは一言断ってから、お湯に浸かった。
お湯に浸かると「はぁ~」と満足げな声を漏らし、しばしそのまま温泉を堪能していた。
しばらくすると、エフィドスは口を開いた。
「いいね、これ。最初はそこまで期待していなかったけど、浸かってみると予想以上だったよ」
「だろ?また浸かりにくるか?どうせ利用するのは俺と玲奈しかいないし、それにお前のつけてくれた効果のお陰でこの温泉は半日たつと汚れがなくなるからな」
「是非とも来させてもらうよ」
この神様にも温泉の素晴らしさが伝わって何よりだ。
俺は「ふぅ~」と息を吐いてから、エフィドスの方に体を向ける。
「それで?何か用件でもあるか?」
「うん、今日はそのために来たからね」
そう言ってエフィドスは俺に手を向ける。
その手から一瞬何かの気配がしたが、それだけやるとエフィドスは手を下ろし「はい、おしまい」と言った。
「何したんだ?」
「いやぁね、僕としたことがうっかりしていたんだ」
エフィドスはそう言ってから再び話し始める。
「君には、上位神の加護超極小、と、神の眷属、の二つのスキルをプレゼントしたんだけどさ。本来この力はこの世界の監視という目的のためと、万が一にも君が死なないようにするためのものなんだけど……この状態のままだとこの世界の人間がダンジョンを攻略しにきても100%攻略出来ないじゃん」
「まあそうだろうな、あのステータス、それにあのスキルだもんな」
「それだとダンジョン防衛戦を見る面白味が薄れるなぁ、って思ってわけよ」
「それで?」
「だから君にあるスキルをプレゼントしたんだ。確認してほしいな」
俺はそう言われたのでステータスを開く。
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種族:神の眷属
名前:ライ・カザマ
性別:両性
Lv:?
HP:99999
MP:99999
STR:9999
GRD:9999
AGI:9999
DEX:9999
INT:9999
MPR:9999
スキル
神の眷属
上位神の加護超極小
暗殺術
ダンジョンマスター
エフィドスの呪い
称号
上位神の加護超極小を受けし者
エフィドスの眷属
暗殺者
ダンジョンマスター
異界より召喚されし者
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「なんか嫌そうなスキル増えてるんだけど……」
「詳細をご覧あれ」
俺はそう言われたので渋々詳細を見ることに。
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エフィドスの呪い
種族、スキル又は称号に、神、神の眷属、神の加護、保持者以外と戦う時、状態を加護と眷属を抜いた普通の人間の状態に戻す。
だが、その状態でHPが1を下回った場合、このスキルは自動的に消滅し、体を元の状態まで回復する。そしてエフィドスの空間へ体を転送させる。
なおその際、ダンジョンは攻略したとみなされる。
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これを見た俺はこう言った。
「つまり、神関係の奴らが相手以外の戦闘はお前の力抜きで戦えと?」
「そうだね。元々僕から貰った加護で無双なんてやらせるつもりなかったし」
俺はそれを聞いた途端ため息をつく。
ああ、まだここは絶対安全の地ではなかったと。
「マジかよ、聞いてねぇぞそんな話、……もし強い奴らきたら死ぬかもしれないじゃん」
「いやいや、一応負けても僕の空間に送還されるだけだから」
「でもなぁ、ダンジョンを攻略されるってことはこのマイホームが壊れるってことだろ?それに玲奈はどうなるんだ?」
俺がそう言うと「そういえば彼女もいたね」と言ってから続ける。
「まあ、説明不足だった僕の不手際もあるから、もし君が負けても君の家とこの温泉、それに彼女の命は保証してあげるよ。後彼女ももし死んだら僕の空間に自動転送されるようにしておくから」
「サンキューな。………まあそうならないようにダンジョンの防衛レベルを引き上げないとな」
俺はそう言って「はぁ~」と息をこぼしてから立ち上がる。
それを聞いたエフィドスは俺に言う。
「悪いねぇ、一つの課題が終わった後に課題を増やして」
「まあ譲歩してくれただけありがたいよ。後、これから俺のステータス表示は呪いがかかった状態のステータスにしてくれないか?そうじゃないといざ戦う時に自分の力が分からない」
「そうだね。分かった、そうなるように直しておくよ」
「サンキュー、それじゃあ俺は上がるぜ」
俺はそう言って出口の方へと歩いていく。
エフィドスは「それじゃあまたねー」と言い残し、姿を一瞬で消した。
さて、増えた課題もあることだしゆっくりしてられないな。