表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

初めてのコンサート

「江海、明後日の日曜日、暇だったりする?」

授業と授業の間の休み時間、夏子が聞いてくる。

「うん、暇だけど…」

「三人でコンサート行こうよ。チケット三枚手に入ったのよ」

夏子はカバンの中から、コンサートチケットを取り出す。

「チケットなんてどうしたのよ?」

渚も興味津々に聞いてくる。

「実はね、近所の人が取ったんだけど、その近所の人が行けなくなって譲ってもらったのよ」

「で、誰のコンサートなのよ?」

「UNLUKEYっていうビジュアル系バンドよ。知ってるでしょ?」

「あぁ…この前、歌番組に出演してたよ。私、UNLUKEYのコンサート行きたかったんだ」

渚はチケットを前に目を輝かせている。

だけど、私は、

「はっ? UNLUKEY? 誰それ?」

って、目を丸くする。

「はぁ―…」

二人共、ため息なんかついちゃってる。

私、何か変なこと言ったかな?

「四人組のバンドのグループよ」

夏子ってば呆れ顔で言う。

「ご、ごめん…私、そういうの興味ないの。アハハ…」

笑ってごまかすしかないよね。

「へぇ…意外」

「じゃあ、明後日、昼の1時に駅で待ち合わせね」

「うん。今から楽しみだな」



UNLUKEYかぁ…。どんな人達なんだろう。素晴らしい人達なんだろうな。どんな歌が飛び出てくるんだろう。私のお気に入りの曲があるかな。ト―クもどんなこと話すんだろう。私生活のこと? やっぱり芸能人だから私生活のことなんか話さないか。自分達の仲の良さとか、マイブームのこととか、今まで出した曲で一番気に入ってる曲とか、色んなト―クなんだろうな。曲とト―クで盛り上がるよ、きっと。なんだか、コンサートって聞いただけでウキウキしてくるな。



「ただいま―っ」

元気よくドアを開ける。

「あ、おかえり。今日は早かったのね」

「うん。明後日の日曜日、渚と夏子とコンサート行く約束したんだ。行っていいかな?」

「いいよ」

あっさりと了解してくれる。

早く明後日になぁれ!! なるべく明後日は雨は降って欲しくないな。コンサートに雨はいらない。雨なんか降ったら台無しだもんね。

夏子にもらったチケットを手にしながら眺める。

そこに私の部屋のドアのノック音が聞こえる。私は慌ててチケットを机の引き出しの中に入れる。

「あ、健吾君!」

「江海ちゃんに用があって…。明後日って暇か?」

「ごめん。渚と夏子と約束しちゃったよ」

「そっか。明後日、UNLUKEYのコンサートに一緒に行こうって思ってな」

健吾君、残念そうに言った。

「実は、私も行くのっ!」

「えっ?!」

健吾君、目が点になってる。

「江海ちゃんも?!」

「うん!」

「オレは磯部と行くんだ」

「そうなんだぁ」

偶然だけで嬉しいよ。

「オレ、UNLUKEY好きなんだ。曲や詞がいいからな」

「バンド名はなんだかなって感じだな」

「確かにな。UNLUKEYみたいなバンド作りて―な」

「バンド作る…?」

「うん。五人で作るか?」

「へ?」

「オレと江海ちゃんと磯部と西村と青田で…」

健吾君、窓の外を見ながら言う。

西村ってのは渚で、青田ってのは夏子のことなんだけど、健吾君はバンド作りたいんだなって思った。

「オレはギターがやりたいんだ。磯辺がドラムで、青田がキ―ボード、西村がベースで、江海ちゃんはボーカルだ」

「私が歌うの?!」

思わず、大声になっちゃう。

なんかすごいことになってきたな…。ボーカルの私とギターの健吾君とのハモリ。きっと上手く聞こえると思うんだ。勝手に決めつけちゃってるけど、実際にバンドが作れたらすごいことだと思う。バンド作るの現実的に出来なくてもいいの。想像してるだけでもいい。私、そう思っちゃってるよ。



翌日、午後1時東京都で渚と夏子を待つ。二人共まだ来てない。

「江海―っ、ごめ―ん!」

人をかき分けて大きくこだまする声。

渚と夏子が走ってくる。

「遅くなってごめんね」

「いいの。実はね、健吾君もコンサート行くって行くって言ってたよ」

「あんな奴が行くの―?!」

「健吾がコンサート行くって感じじゃないよ」

二人はげげって表情をする。

「磯部君と行くの?」

「そうみたい」

「健吾もUNLUKEY好きなんだね。さっ、行こう」

夏子が促す。


会場近くなると色んな女の子がいっぱいいたの。

電車の中でUNLUKEYの写真を夏子に見せてもらったの。四人共かっこいいんだ。私としてはギターしてる人がいいなって思った。やっぱり健吾君がギターやりたいって言ってたからかな。

コンサート会場、私達と同じ目当ての男の子と女の子がたくさんいる。

ザワザワ、ザワザワ…。

人波に押されながら前に進む私達。

確か、17時開場で、18時半開演だったよね。開場まで三時間半はある。

こんなに早くどうするんだろ? まだ中には入れないから、外で待つしかないよね。

「江海、ここで座ってよう」

「あ、うん」

私も慌てて渚と夏子の隣に座る。

それに健吾君に会わないかな。こんなに人が多かったら会うのは無理かな。

健吾君が曲も詞も良いって言ってた。早く聞きたいな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ