それから…
人魚の世界に戻って、十日が経った。今でも時々、健吾君のこと思い出すよ。
「江海!」
シ―ナ女王が私を呼ぶ。
「人間の世界はどうでした?」
「ん―、楽しかった。色んなことがあったけどね」
私は舌をペロッと出して笑った。
「そうですか。それは良かった」
シ―ナ女王は喜んでいるみたい。
「江海っ!」
背後から仲間達が近付いてくる。
「どうだった? 人間の世界は…」
「楽しかったよ!」
「いいなぁ。私も人間の世界に行ってみた〜い」
「私もっ!」
「コラコラ、ダメですよ」
「え〜っ、なんで〜?」
みんな、残念そうな声を出す。
「江海が羨ましいよ」
「そうかなぁ…?」
「そうだよ。人間の世界なんて未知の世界だもんなぁ…」
私も他の仲間が人間の世界に行ってたら、同じこと言ってた。
…健吾君、今度生まれ変わった時は、ちゃんと人間の女性として生まれてくるね。その時は好きになってね。それと、一緒になろうね…。
私が健吾君に向けた最後の言葉。ホントに生まれ変わったら、人間の女性として生まれたい。
別れ際、みんな悲しい顔してた。私ってば、人に迷惑ばかりかけてる。なんか、迷惑かけるのが仕事みたい。なぁんてね、人間の世界では色んな思い出が出来たよ。
私が辛くなった時、悲しくなった時は、みんなのことを思い出すよ。人間の世界で学んだことを、人魚の世界でもいかせるように努力するつもりだよ。三ヶ月間、大変だったけど良かったよ。
「江海、行くよっ!」
「あ、うん!」
私は仲間達の元へと泳いでいく。
いつか、生まれ変わる日が来るように、願えば将来はなんとかなる。その時まで頑張らなくちゃ、ね。
「あなたと私の物語」、長々となってしまいましたが、読んでもらえて嬉しいです。また今書いているのや次回作もよろしくお願いします。