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涙の再会

あれから少しして、私はボ〜ッとしちゃってた。

今日一日で疲れちゃったな。色々あったからね。田崎さんが健吾君に告白シ―ンは見たくなかったな。まだ告白シ―ンがぐるぐる回ってる。

どうして恋には恋のライバルがいるんだろう? 恋のライバルなんかいなければ良かったのに…。恋のライバルがいるから、誰かが傷つくんだ。

もし、一人の人を十人好きだったら、一人が結ばれて、あと残りの九人が犠牲になる。

私はそんなの嫌だ。なんで好きな人のことでこんなに悩まなくちゃいけないの? こんなに傷つかなくちゃいけないの? 私にはわからない。

その時、パァァァと目の前が光った。

え…? 一体、なんなの…?

ゆっくりと目を開けると、目の前には会いたかった人、恋しい人――シ―ナ女王だった。

「シ―ナ女王!」

思わず叫んでしまう。

「江海、健吾という男の子のことで悩んでいるのですね?」

優しい口調で聞いてくるから、私コクンとうなずいちゃった。

「江海が思い続けていれば大丈夫です。あと残り僅かだけど、きっと思いは届くはずです」

シ―ナ女王は言ってくれる。

なんだか、シ―ナ女王が神様みたいに見えるよ。

ポロ…ポロボロ…ッ…

シ―ナ女王の言葉に胸が染みてきて、涙が溢れてくる。

思い続けていれば大丈夫。そうだよね。

「江海、泣いていてはいけませんよ」

「シ―ナ女王…なんで…私が健吾君のことで悩んでるって…わかったの…?」

「私のカンですよ」

「カン…?」

「江海ならきっといい恋が出来るはずですよ」

私の顔からどうしようもないくらい涙が溢れて止まらない。

早く泣き止まなきゃ。そう思うんだけど、涙が止まってくれない。江海、いつまでも泣いてちゃダメだよ。

「私…こんな想いしたくない…。人魚に戻りたいよ…」

「いいのですか? 健吾ってコと一緒になりたいでしょ?」

「なりたい…。でも、私には…耐えられない…」

ヒック、ヒック。

しゃっくりで上手く話せない。

「そんなんじゃ、人間として失格ですよ」

「失格でもいい…」

「こんなに辛いのは今のうち。時間が絶てば楽になるわよ」

「で、でも…」

「それでは、私は戻るわね」

「イヤッ! シ―ナ女王行かないでっ!」

気付いたらそう叫んでた。

「あと二ヶ月で戻ってこれるわよ。頑張ってね」

微笑みながらシ―ナ女王は言った。

そして、シ―ナ女王は消えていった。

「いや――――――!!!」


健吾君のことでこんなに辛い想いをするのなら、私は人魚に戻ったほうがいい。

神様、私と健吾君は出逢う運命だったのでしょうか? もし、そうなら他の女の子が良かった。他の女の子と出逢っていれば、健吾君のことで好きでいなかったのに…。

どうして、田崎さんの告白OKしてくれなかったの? そうしたら、私は諦めたかもしれないのに…。健吾君のこと、一つ知る度に好きになっていく。好きなのに、出逢わなければ良かったって矛盾してる思いが私の中にある。…やっぱり、私は健吾君が好きだ。ずっとそばにいたい。これからも――




私、どれくらい泣いたんだろう。いっぱい、いっぱい、いっぱい泣いてた。健吾君のこと思うと、涙がたくさん溢れてきたの。早く山岡江海に戻らなきゃ。


夕食後、奈美ちゃんが私の部屋におしゃべりにきたの。

妹っていいよね。可愛いし同じ服着れたりするじゃない? だから、たまに健吾君が羨ましく思えちゃう。でも、健吾君は「妹じゃなくて、兄貴か弟が良かった」って言ってるんだ。そう言ってるけど、健吾君は奈美ちゃんにはとっても優しいの。妹思いのお兄ちゃんって感じなんだもんな。私も健吾君の妹だったら…って、つい思っちゃう。「江海お姉ちゃん、お兄ちゃんのことどう思ってるの?」

急に奈美ちゃんが真面目な顔して聞いてくる。

どう答えたらいいのかわからなくてうつむいてると、

「お兄ちゃんのこと好き?」

「…う、うん…」

ドキドキしながら返事しちゃう。

「やっぱり?」

奈美ちゃん意地悪っぽい顔で言った。

「江海お姉ちゃん、お兄ちゃんに向けてる視線が普通じゃないもん」

「そ、そんなことないと思うけど…」

身ぶり手振りが大きい私。

「大丈夫だって。隠さなくても秘密にしてあげるよ」

「ありがとう」

ただうなずくことしか出来ない。

秘密にしてあげるって言っても、健吾君には私の気持ちバレてるんだけどね。

でも、まぁいいか。

奈美ちゃんとしゃべってると嫌なこともフッ飛んじゃう。

健吾君、ホントにいい妹持ったね。


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